[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

PACIFICHEM2010に参加してきました!④

[スポンサーリンク]

写真はハワイの夕暮れ。きれいですねー(棒読み)

さて、大好評のどくたけによるPACIFICHEM2010に参加してきました!に続く第4弾!今回は、突撃!隣の晩ご飯…じゃなくて、研究者ということで、皆様も良くご存知のあの方にインタビューを決行しましたので、その内容をお届けします!

12/18日も、朝から”Asymmetric Organocatalysis”のセッションに顔を出していました。本セッションには林雄二郎先生、寺田眞浩先生、E.N.Jacobsen先生等、有機触媒関連分野における巨匠たちが名を連ねていました。しかし、ハワイ滞在4日目にしてさすがに体も不調を訴え始め(おそらくは暴飲暴食のせいだとは思うのですが)、あまり体調が芳しくない状況下での聴講となりました。会場で舟を漕ぐ姿は目立ちますし、講演者の方々に失礼ですよね…orzもうちょっとしっかりしないとと反省した次第です。

さて、昼食をとって休憩後、気持ちも改めて臨んだセッションは、”C-H Functionalization, Memorial Symposium for Prof. Keith Fagnou“です。2009年の11月、K.Fagnou教授の訃報には筆者もとても驚かされました。有機化学社のみならず、多くの人たちが彼の死を嘆き、悲しんだ事と思います。この場を借りて、Fagnou教授のご冥福をお祈りしたいと思います。

Keith
写真はK.Fagnou GroupのHPから拝借しました

惜しまれつつも早世した彼の業績を讃え、PACFICHEM2010では追悼セッションが行われたのでした。最も印象深かったのはM. Lautens教授のご講演でした。(Fagnou教授はLautens教授の元で学位を取られました。)カナダでトップと言われるLautens教授のご講演もそれはそれはすばらしいものでしたが、時折思い出話、貴重なスナップ写真とともに振り返られるFagnou教授の業績(なんとLautens研時代に14報もの論文を発表なさったそうです)は、彼がどれだけ希有で有能な化学者であったか、そしてこれからの世界の有機合成化学分野をリードしていくであろう人材であったかを物語るにふさわしいものでした。

 

ケムステの過去記事にもある通り、C-H結合活性化型のクロスカップリング反応は、今をときめく研究テーマの一つです。その中でも、Fagnou教授らの報告は(それが単にScienceに掲載されたからというだけでなく)、この分野を先導していくものだろうと、2007年の論文を振り返って、そして現在のこの分野の勃興と発展を鑑みて、筆者は思うのです。

 

もともと日本のお家芸とも言われることもあるカップリング反応ですが、今現在、逆にその特色を出しづらい研究分野なのではないかと感じるときがあります。基質や反応条件が似通っていたり、どこかで見た事のある感が否めない事も多々あります。独自の方針で、誰もやっていないことに挑戦する、「オレたちにできない事を平然とやってのけるッ!!そこにシビれる!!あこがれるゥ!!(AA略)」というような研究は、希有であるからこそ光り輝くのだと筆者は思います。そんな憧れの研究者の一人である我らがケムステ代表、山口潤一郎先生に、ハワイで突撃取材を敢行してきました!(実は筆者、学会等で先生をお見かけする度に、突撃取材のチャンスをうかがっていたのですが、なかなか実現できずにいたのでした…)

Unknown
山口潤一郎先生のご尊顔。写真は伊丹研のHPより拝借しました。

 

山口先生が現在取り組まれておられる研究の一つに、触媒的C-H結合変換に基づく、芳香環連結化合物の超短行程合成というものがあります。予備的な官能基化を必要としないため、真に直接的な骨格構築が行えるという直截的な戦略です。口で言うのは簡単ですが、実現するのは困難であるこれらの課題に対し、独自のアプローチで鮮やかな結果を出されておられます。特に、チオフェン類のβ選択的なアリール化反応は、筆者の知る限り(学会やセミナーなどのunpublishedな結果も含めて)ごく僅かです。

rxn110105.jpg
図は日本化学会第90春季年会(2010)の予稿集より抜粋

 

自前の反応を、標的化合物(今回はDragmacidin D)の全合成に用いておられました。天然物合成は個人的には有機化学の花形だと思って憧れています。反応開発に取り組むだけでなく、やはりそれを活かした有用化合物の合成法の確立を目指すというのは、研究の理想型の一つではないでしょうか?

さてさて、今回も色々な所に話が飛び火して、とりとめのない内容になってしまいましたが、今回の体験記はこの辺りでおしまいです。次回は最終回という事になるかと思います。それではまた!

 

どくたけ

投稿者の記事一覧

HNのどくたけはdoctor Kの略語です。 chem stationを通して、化学の素晴らしさ面白さ等を 伝えていけたらいいなと思います。 宜しくお願いいたします。

関連記事

  1. 第四回 ケムステVシンポ「持続可能社会をつくるバイオプラスチック…
  2. 有機合成化学協会誌2020年4月号:神経活性化合物・高次構造天然…
  3. 第7回HOPEミーティング 参加者募集!!
  4. 【マイクロ波化学(株)ウェビナー】 #環境 #SDGs マイクロ…
  5. 国際化学オリンピックのお手伝いをしよう!
  6. ポンコツ博士の海外奮闘録⑧〜博士,鍵反応を仕込む②〜
  7. 科学カレンダー:学会情報に関するお役立ちサイト
  8. 【追悼企画】世のためになる有機合成化学ー松井正直教授

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 【書籍】化学探偵Mr.キュリー2
  2. 特許資産規模ランキング2019、トップ3は富士フイルム、三菱ケミカル、住友化学
  3. 官能基化オレフィンのクロスカップリング
  4. ヘテロ環、光当てたら、減ってる環
  5. 位置選択的C-H酸化による1,3-ジオールの合成
  6. 研究者としてうまくやっていくには ー組織の力を研究に活かすー
  7. スマイルス転位 Smiles Rearrangement
  8. 海外で開発された強靭なソフトマテリアル
  9. テオ・グレイ Theodore Gray
  10. 高純度フッ化水素酸のあれこれまとめ その2

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2011年1月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

注目情報

最新記事

有機合成化学協会誌2023年3月号:Cynaropicri・DPAGT1阻害薬・トリフルオロメチル基・イソキサゾール・触媒的イソシアノ化反応

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2023年3月号がオンライン公開されました。早…

日本薬学会  第143年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part 1

さて、日本化学会春季年会の付設展示会ケムステキャンペーンを3回にわたり紹介しましたが、ほぼ同時期に行…

推進者・企画者のためのマテリアルズ・インフォマティクスの組織推進の進め方 -組織で利活用するための実施例を紹介-

開催日:2023/03/22 申し込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足の…

日本化学会 第103春季年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part3

Part 1・Part2に引き続き第三弾。日本化学会年会の付設展示会に出展する企業とのコラボです。…

第2回「Matlantis User Conference」

株式会社Preferred Computational Chemistryは、4月21日(金)に第2…

日本化学会 第103春季年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part2

前回のPart 1に引き続き第二弾。日本化学会年会の付設展示会に出展する企業とのコラボです。…

マテリアルズ・インフォマティクスにおける従来の実験計画法とベイズ最適化の比較

開催日:2023/03/29 申し込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足の…

日本化学会 第103春季年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part1

待ちに待った対面での日本化学会春季年会。なんと4年ぶりなんですね。今年は…

グアニジニウム/次亜ヨウ素酸塩触媒によるオキシインドール類の立体選択的な酸化的カップリング反応

第493回のスポットライトリサーチは、東京農工大学院 工学府生命工学専攻 生命有機化学講座(長澤・寺…

カーボンニュートラルへの化学工学: CO₂分離回収,資源化からエネルギーシステム構築まで

概要いま我々は,カーボンニュートラルの実現のために,最も合理的なエネルギー供給と利用の選…

Chem-Station Twitter

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP