[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

【書籍】液晶の歴史

[スポンサーリンク]

書籍の紹介です。

液晶の歴史 (朝日選書)

液晶の歴史

ディヴィッド・ダンマー、ティム・スラッキン著

鳥山和久訳 朝日新聞出版

ISBN978-4-02-259982-7

 

10年ほど前はノートパソコンやパソコンモニター程度のサイズから、数年前には大型テレビ、最近は通勤の電車では、多数の人が携帯電話やスマートフォンを手に持ち、駅では大型広告(デジタルサイネージ)、i-Padを開いている人もいたりと、生活を革新してきた製品が続々とでている液晶ディスプレイ。経済産業省によると関連部材のみで2兆円規模(2009年)という、一大産業 です。

今回紹介する書籍は、液晶ディスプレイの中心部材である、液晶の発見から、黎明期、光学素子への応用、そしてディスプレイ開発の歴史を題材としています。途中にある解説は、コンパクトにまとまっており、ちょっとした知識や用語の確認にも便利な良書です。

とりわけ、初期の、液晶という物質の確認手段がない時代の、液晶という相状態の学会の論争や、実験結果・観察結果を蓄積してきた先人のドラマは非常に面白かったです。

また、訳者の鳥山博士は日立製作所にて、液晶の研究開発・製品化に携われた方で、あとがきにかえた「日本における液晶技術の開発」は、 日本企業の液晶技術の革新というドラマがいきいきと描かれています。これだけ読み応えの有る訳者の解説がついているにもかかわらず、お値段は2300円+税と、amazonで調べたら原著よりも安くなっていました。

液晶の化学に興味のない方にも、液晶状態は、ソフトマター、分子配列の制御、生態機能の模倣と非常に注目を集めています。紹介者(記事作成者)もディスプレイ部材の研究開発に携わっていますが、本書を読み、こんな分野にも液晶状態が見られるんだと、目から鱗の部分も多数ありました。テーマ探索という観点からも、かなり面白い書籍だと思います。

 

  • 関連書籍

 

トコトンやさしい液晶の本 (B&Tブックス―今日からモノ知りシリーズ) トコトンやさしい液晶の本 (B&Tブックス―今日からモノ知りシリーズ)
鈴木 八十二日刊工業新聞社
売り上げランキング : 190678

Amazonで詳しく見る

 

 

 

カラー図解でわかる 大画面・薄型ディスプレイの疑問100 液晶・プラズマ・有機EL・電子ペーパーはなにが違うのか? (サイエンス・アイ新書) カラー図解でわかる 大画面・薄型ディスプレイの疑問100 液晶・プラズマ・有機EL・電子ペーパーはなにが違うのか? (サイエンス・アイ新書)
西久保 靖彦ソフトバンククリエイティブ
売り上げランキング : 117276

Amazonで詳しく見る

 

 

図解入門 よくわかる最新ディスプレイ技術の基本と仕組み―薄型ディスプレイの原理が一気に読める! (How‐nual Visual Guide Book) 図解入門 よくわかる最新ディスプレイ技術の基本と仕組み―薄型ディスプレイの原理が一気に読める! (How‐nual Visual Guide Book)
西久保 靖彦秀和システム
売り上げランキング : 18891

Amazonで詳しく見る

 

lcd-aniso

投稿者の記事一覧

企業にてディスプレイ関連材料の開発をしております。学生時代はヘテロ原子化学を専攻していました。私のできる範囲で皆様に興味を持っていただける 話題を提供できればと思います。

関連記事

  1. オンライン会議に最適なオーディオ機器比較~最も聞き取りやすい機器…
  2. ルーブ・ゴールドバーグ反応 その1
  3. マテリアルズ・インフォマティクスの普及に取り組む事業開発ポジショ…
  4. 元素記号に例えるなら何タイプ? 高校生向け「起業家タイプ診断」
  5. 鉄触媒によるオレフィンメタセシス
  6. 嗚呼、美しい高分子の世界
  7. みんな大好きBRAINIAC
  8. “研究者”人生ゲーム

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 伊藤嘉彦京都大名誉教授死去
  2. 「ニコチンパッチ」6月1日から保険適用
  3. 4-メルカプト安息香酸:4-Mercaptobenzoic Acid
  4. 韮山反射炉
  5. 2016年JACS Most Read Articles Top10を眺める
  6. 新海征治 Seiji Shinkai
  7. 簡単に扱えるボロン酸誘導体の開発 ~小さな構造変化が大きな違いを生んだ~
  8. 生きた細胞内でケイ素と炭素がはじめて結合!
  9. マイクロ波を用いた革新的製造プロセスとヘルスケア領域への事業展開 (凍結乾燥/乾燥、ペプチド/核酸合成、晶析、その他有機合成など)
  10. 層状複水酸化物のナノ粒子化と触媒応用

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2011年10月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

塩基が肝!シクロヘキセンのcis-1,3-カルボホウ素化反応

ニッケル触媒を用いたシクロヘキセンの位置および立体選択的なカルボホウ素化反応が開発された。用いる塩基…

中国へ行ってきました 西安・上海・北京編①

2015年(もう8年前ですね)、中国に講演旅行に行った際に記事を書きました(実は途中で断念し最後まで…

アゾ重合開始剤の特徴と選び方

ラジカル重合はビニルモノマーなどの重合に用いられる方法で、開始反応、成長反応、停止反応を素反応とする…

先端事例から深掘りする、マテリアルズ・インフォマティクスと計算科学の融合

開催日:2023/12/20 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足の影…

最新の電子顕微鏡法によりポリエチレン分子鎖の向きを可視化することに成功

第583回のスポットライトリサーチは、東北大学大学院 工学研究科 応用化学専攻 陣内研究室の狩野見 …

\脱炭素・サーキュラーエコノミーの実現/  マイクロ波を用いたケミカルリサイクル・金属製錬プロセスのご紹介

※本セミナーは、技術者および事業担当者向けです。脱炭素化と省エネに貢献するモノづくり技術の一つと…

【書籍】女性が科学の扉を開くとき:偏見と差別に対峙した六〇年 NSF(米国国立科学財団)長官を務めた科学者が語る

概要米国の女性科学者たちは科学界のジェンダーギャップにどのように向き合い,変えてきたのか ……

【太陽ホールディングス】新卒採用情報(2025卒)

■■求める人物像■■「大きな志と好奇心を持ちまだ見ぬ価値造像のために前進できる人…

細胞代謝学術セミナー全3回 主催:同仁化学研究所

細胞代謝研究をテーマに第一線でご活躍されている先生方をお招きし、同仁化学研究所主催の学術セミナーを全…

マテリアルズ・インフォマティクスにおける回帰手法の基礎

開催日:2023/12/06 申込みはこちら■開催概要マテリアルズ・インフォマティクスを…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP