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ビタミンB12を触媒に用いた脱ハロゲン化反応

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ビタミンB12(図1a 別名:コバラミン)は、コリン環の中心にコバルトイオンが存在する金属錯体です。

ビタミンB12は配位子Lによって機能が異なり、生体内で10種類以上の酵素反応に関与しています。その例として、異性化反応(図1Ba)、メチル化反応(図 1Bb)、脱ハロゲン化反応(図Bc)が挙げられます[1]

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図1 (A) コバラミンの構造と誘導体 (B) 酵素反応の例

 

なかでも、テトラクロロエチレンの還元的脱ハロゲン化は、環境汚染物質の分解法の一つとして注目されています。この反応は、酵素中のビタミンB12と鉄-硫黄クラスターによって進行します(図 2A)。この反応機構の詳細は未だに解明されておらず、図2Bに示す2つの経路が提唱されています。いずれの経路においても、Co(I)が活性種となってテトラクロロエチレンを2電子還元することでトリクロロエチレンが生成し、鉄-硫黄クラスターがコバルトを2価から1価に還元することで触媒的に反応が進行します[2]

 

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図2 (A) 脱ハロゲン化酵素の構造 (B) 脱ハロゲン化反応の機構

 

本記事では九州大学の久枝良雄教授らによって報告された「ビタミンB12を触媒に用いた脱ハロゲン化反応」とその関連研究について紹介したいと思います。

 

ビタミンB12の生体外での応用

久枝らは、生物によって代謝されるため環境汚染性が低いビタミンB12を用いたグリーンケミストリーを展開しています。ビタミンB12の酵素反応を模倣するには、コバルト種を2価から1価に還元する鉄-硫黄クラスターの代わりとなるものが必要となりますが、ここで化学還元剤を用いるとグリーンケミストリーの考え方に反します。

そこで久枝らは、豊富でクリーンなエネルギーである光を用いた生体模倣触媒を開発してました。今回紹介するビタミンB12を酸化チタンに固定化させた触媒はその中の1つです。酸化チタンの励起電子の還元力は-0.5 V vs. NHEであり、コバルトイオンを2価から1価に還元するのに十分です[3]。実際に、彼らは2009年に触媒1を開発し、DDTの還元的脱ハロゲン化を達成しました(図 3A)[4]。この触媒は不均一系触媒であるので、反応後の分離が容易かつ、再利用も可能であることからクリーンな触媒と言えます。

これまで、Co(I)の自然酸化や触媒の分解を防ぐため、不活性ガス雰囲気下で反応を行ってきました。そこで最近、久枝らは、空気中でも安定な触媒2を開発し窒素雰囲気下で反応を行ったところ、ベンゾトリクロリドからジクロロスチルベンが得られました[5]。一方で空気中では脱ハロゲン化で止まらず、さらに酸素と反応し、エステルが生成することを見出しました(図 3B)。この反応は、中間体として酸クロリドが生成するため、過剰量のアミン存在下ではアミドが生成する。また、この反応は空気中、室温で進行するため、環境への負担が少ないと考えられます。

 

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図3 (A) DDTの脱ハロゲン化反応 (B) 最近開発した空気に安定な触媒による脱ハロゲン化反応

 

まとめ

DDTやベンゾトリクロリドは第1類特定化学物質に指定されており、「微量の曝露でがん等の慢性・遅発性障害を引き起こす物質」として位置づけられています。これまでにもビタミンB12を触媒に用いた脱ハロゲン化が報告されていますが、さらに反応を空気中で行うことで環境汚染物質を有用な化合物へ変換できたのが注目すべき点だと思います。

 

参考文献

  1.  Giedyk, M.; Goliszewska, K.; Gryko, D. Chem. Soc. Rev. 2015, 44, 3391. DOI: 10.1039/C5CS00165J
  2. Hisaeda, Y. Bull. Jpn. Soc. Coord. Chem. 2009, 54, 10. [PDF]
  3. Izumi, S.; Simakoshi, H.; Abe, M.; Hisaeda, Y. Dalton Trans. 2010, 39, 3302. DOI: 10.1039/B921802E
  4. Shimakoshi, H.; Abiru, M.; Izumi, S.; Hisaeda, Y. Chem. Commun. 2009, 6427. DOI: 10.1039/B913255D
  5. Simakoshi, H.; Hisaeda, Y. Angew. Chem. Int. Ed. 2015, 54, 15439. DOI:10.1002/anie.201507782

bona

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