[スポンサーリンク]

世界の化学者データベース

水口 賢司 Kenji Mizuguchi

[スポンサーリンク]

水口賢司は、日本の生化学者・計算生物学者である。医薬基盤・健康・栄養研究所 AI健康・医薬研究センター長、大阪大学 蛋白質研究所 教授。

 

経歴

1990 京都大学 理学部 卒業
1995 京都大学大学院 理学研究科 化学専攻博士号取得(郷信広教授)
1995 ロンドン大学バークベック校 結晶学科 客員研究員
1996 ケンブリッジ大学 生化学科 客員研究員(HFSP長期フェロー)
1998 ケンブリッジ大学 生化学科 博士研究員
2000 ケンブリッジ大学 生化学科 グループリーダー
2004 ケンブリッジ大学 理論物理学及び応用数学科 講師
2006 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 バイオインフォマティクスプロジェクト プロジェクトリーダー(現職)
2019 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 AI健康・医薬研究センター センター長(現職)
2019 大阪大学 蛋白質研究所 教授(現職)

受賞歴

1996 HFSP(ヒューマンフロンティア・サイエンス・プログラム) 長期フェローシップ
2000 ウェルカムトラスト リサーチキャリアデベロップメントフェローシップ
2020 内閣府 第2回日本イノベーション大賞 厚生労働大臣賞(ライフインテリジェンスコンソーシアム, 副代表として)

 

研究業績

タンパク質の構造、機能の予測

進化の過程におけるアミノ酸置換が、タンパク質の局所的な構造環境に依存するというアイデアに基づき、配列全体の類似度は低くても、構造上重要な残基の保存を的確に評価して遠い類縁関係を同定できるアルゴリズムFUGUE (Shi et al. 2001)を構築した。この方法は、CASP (Critical Assessment of Techniques for Protein Structure Prediction) など国際的な立体構造予測のブラインドテストで好成績を収め、以後の立体構造予測のスタンダードなソフトウェアの一つになった。(論文引用数>1400)。Tripos社(現Certara社)から製品化され、製薬企業などでも利用されている。

タンパク質の類縁関係を予測するアルゴリズム FUGUE

タンパク質の相互作用予測と創薬応用

タンパク質構造データベースから抽出したデータを訓練データセットとし、アミノ酸配列のみから他のタンパク質と相互作用する可能性が高い残基を予測する方法PSIVERを開発した(Murakami & Mizuguchi, 2010)。訓練データセットの質を高め、機械学習のアルゴリムに単純ベイズ分類器を用いることで、従来法よりも高い精度を出すことに成功した。この手法を用いて、乳がん細胞で亢発現する特定のタンパク質中で、がん細胞の増殖に密接に関わる部位を予測し、その結合を阻害する新規の治療薬候補の設計に成功した(Chen et al. 2014, Yoshimaru et al. 2013)。

タンパク質-タンパク質相互作用の予測ソフトウェア

 

また、タンパク質と低分子との相互作用予測において、既存のインシリコスクリーニングの2つの主要アプローチである、リガンドベースと構造ベースのアプローチを組み合わせたハイブリッドアプローチを構築した(Prathipati et al., 2016, Prathipati & Mizuguchi 2016)。これをNPO法人の並列生物情報処理イニシアチブが開催したコンテストにおける標的のヒトc-Yesキナーゼに適用し、参加10グループ中で唯一、新規骨格を持ち実験的にリン酸化阻害活性が認められる化合物を2つ同定し、グランプリ賞を受賞した(Chiba et al., 2015)。またアメリカで行われたD3R Grand Challengeコンテストでも、参加者中最上位の成績を収めた(Prathipati et al., 2016)。

データ統合とデータベース開発

遺伝子、タンパク質、化合物から疾患に至る多様な生物学データを統合して解析が可能なシステムTargetMineを開発した(Chen et al., 2011)。TargetMineは、統合的な知識発見、特に候補遺伝子・タンパク質の絞り込みを行うために、高度な意思決定を対話的に支援する枠組みを備えている。遺伝子絞り込み手法については特許化され(特開2012-069104、patent US 9,141,755)、TargetMineシステムそのものは、三菱スペース・ソフトウエア社によって商用版が販売されている。

TargetMine Web版

 

また、遺伝子発現データから毒性メカニズムを予測するトキシコゲノミクス統合解析プラットフォームToxygatesの開発においては、セマンティックウェブ技術を活用したデータ統合を実行した(Nystrom-Persson et al., 2013, 2017)。他にも、薬物動態統合解析プラットフォームDruMAPや、腸内細菌と食事・身体活動の統合解析プラットフォームMANTA(Chen et al., in press)の開発にも取り組んでいる。

 

関連動画

 

関連文献

関連リンク

Macy

投稿者の記事一覧

有機合成を専門とする教員。将来取り組む研究分野を探し求める「なんでも屋」。若いうちに色々なケミストリーに触れようと邁進中。

関連記事

  1. Qi-Lin Zhou 周其林
  2. 黒田 玲子 Reiko Kuroda
  3. 菅裕明 Hiroaki Suga
  4. ロバート・フィップス Robert J. Phipps
  5. スティーブン・ヴァン・スライク Steven Van Slyke…
  6. 黒田チカ Chika Kuroda
  7. ナタリー カロリーナ ロゼロ ナバロ Nataly Caroli…
  8. F. S. Kipping賞―受賞者一覧

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. メーカーで反応性が違う?パラジウムカーボンの反応活性
  2. 鉄とヒ素から広がる夢の世界
  3. 第10回ケムステVシンポ「天然物フィロソフィ」を開催します
  4. 印象に残った天然物合成 2
  5. 海外学会出張でeSIMを使ってみました
  6. 648個の誘導体を合成!ペプチド創薬の新手法を開発
  7. 「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律施行令の一部を改正する政令」が閣議決定されました
  8. ノッド因子 (Nod factor)
  9. シュガフ脱離 Chugaev Elimination
  10. 海外のインターンに参加してみよう

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2020年12月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  

注目情報

最新記事

【十全化学】核酸医薬のGMP製造への挑戦

「核酸医薬」と聞いて、真っ先に思い起こすのは、COVID-19に対するmRNAワ…

十全化学株式会社ってどんな会社?

私たち十全化学は、医薬品の有効成分である原薬及び重要中間体の製造受託を担っている…

化学者と不妊治療

これは理系の夫視点で書いた、私たち夫婦の不妊治療の体験談です。ケムステ読者で不妊に悩まれている方の参…

リボフラビンを活用した光触媒製品の開発

ビタミン系光触媒ジェンタミン®は、リボフラビン(ビタミンB2)を活用した光触媒で…

紅麹を含むサプリメントで重篤な健康被害、原因物質の特定急ぐ

健康食品 (機能性表示食品) に関する重大ニュースが報じられました。血中コレステ…

ユシロ化学工業ってどんな会社?

1944年の創業から培った技術力と信頼で、こっそりセカイを変える化学屋さん。ユシロ化学の事業内容…

日本薬学会第144年会付設展示会ケムステキャンペーン

日本化学会の年会も終わりましたね。付設展示会キャンペーンもケムステイブニングミキ…

ペプチドのN末端でのピンポイント二重修飾反応を開発!

第 605回のスポットライトリサーチは、中央大学大学院 理工学研究科 応用化学専…

材料・製品開発組織における科学的考察の風土のつくりかた ー マテリアルズ・インフォマティクスを活用し最大限の成果を得るための筋の良いテーマとは ー

開催日:2024/03/27 申込みはこちら■開催概要材料開発を取り巻く競争や環境が激し…

石谷教授最終講義「人工光合成を目指して」を聴講してみた

bergです。この度は2024年3月9日(土)に東京工業大学 大岡山キャンパスにて開催された石谷教授…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP