[スポンサーリンク]

一般的な話題

笑う化学には福来たる

[スポンサーリンク]

 

化学フリークの皆様明けましておめでとうございます!

本年もよろしくお願いいたします。皆様はどんな初夢をみましたか?

筆者は論文がNatureScienceに受理されて科研費で3億円配分される夢・・・でもみられたらよかったのですが・・・

 

Bryn Mawr CollegeMichelle Francl教授には学部生の頃からの夢があるそうです。それはある論文誌に論文を出すこと。そしてある嵐の金曜日の夜、ミーティングの後に、最近の成果がついにその時を迎えたことを確信します。さてその論文誌とは、Nature?いやScience?

まあ大概の研究者だったらそれらに出したいと思っていることでしょうが、Francl教授は違いました。はたしてその論文誌とは・・・

なんとThe Journal of Irreproducible Results、通称JIRでした!

Irreproducibleというのはあまり馴染みがない単語ですが、再現できないという意味です。タイトルからしてすでに冗談だと判るわけですが、JIRはScience Humorを掲載している1955年から続く由緒正しき(?)雑誌なのです。JIRに掲載されていた核兵器に関するジョークのような論文をかのアルカイーダがファイルしていたという壮大な釣りエピソードがあるくらいですので、論文の形式はいたって真面目なんです。

humour_1.jpg図は論文より

まあ新年ということで笑う門には福来たるとも言いますし、たまにはユーモアについて考えてみてもいいのではないかと思います。

今回のポストは Nature Chemistry誌から、Bryn Mawr CollegeMichelle Francl教授による、Science humourに関するthesisを紹介します。前回のはこちら

 

Laughing matter

Francl, M. Nature Chem. 6, 1-2 (2014). doi: 10.1038/nchem.1827

 

科学者にとってユーモアというのは重要な特性であると、ある人類学者は指摘します。はたしてユーモアとは科学者にとっておまけみたいなものなのか、それとも不可欠なものなのか、どちらでしょうか?

humour_2.jpg図は論文より

ユーモアというのは時に聴衆に対して絶大な威力を発揮します。聴衆が話しの全てを理解できなかったとしても、ユーモアによって“なんだか面白そう”という印象を与えます。ノースカロライナ自然科学博物館 (The North Carolina Museum of Natural Science)は一般の方とのコミュニケーターとして、なんと専属のコメディアンを雇っているそうです。しかもれっきとした科学者というのだから驚きです。

ユーモアのセンスがあれば、奇妙なことに対して敏感にもなれるのではないでしょうか?なんだか面白そうだと思えば、その謎について注意深く考えるようにもなるでしょう。

講義の内容にジョークでもまぶしておけば学生の興味を惹くことがあるなんてことは経験があるのではないでしょうか。ちょっと気むずかしそうな教授でもなんだか親近感が湧くこと請け合いです。

humour_3.jpg図は論文より

一方で論文など真面目であることが求められる場では注意も必要です。光合成におけるカルヴィン回路の発見により1961年にノーベル化学賞を受賞しているメルヴィン・カルヴィンの1955年の論文[1]の図1にはイースターエッグがありましたが、そんなおふざけは本来なら許されないでしょうね。humour_1.png

図は論文[1]より抜粋

どこにイースターエッグが隠れているかわかりますか?答えは下の方にあります。

最近では雑誌の表紙とかTable of Contentsの図とかでユーモアを発揮することは大分許容されてきていると思いますが。

 

本人は大まじめにやっている研究自体が結果的にはユーモアにあふれたものになるというのもたまにありますね。我が国は結構お得意で、イグノーベル賞を数多く受賞しております。イグノーベル賞はねらってとれるものではないと思いますし、もっと評価されていいと個人的には思っています。

humour_4.jpg図は論文より

まあ2014年も始まったばかりですが、化学なんてしょせんはお笑いみたいなもん、化学者はしょせん大自然にからかわれてるだけとでも思って、今年も化学を目一杯楽しみましょう!

 

関連文献

  1.  The Photosynthetic Cycle. CO2 Dependent Transients. Wilson, A. T.; Calvin, M. J. Am. Chem. Soc., 1955, 77, 5948-5957. doi: 10.1021/ja01627a050

 

関連書籍

[amazonjs asin=”4311602170″ locale=”JP” title=”科学者とユーモア”][amazonjs asin=”4860442431″ locale=”JP” title=”科学大好き-ユーモア川柳乱魚選集 (科学編) (新葉館ブックス)”][amazonjs asin=”4484082225″ locale=”JP” title=”めざせイグ・ノーベル賞 傾向と対策 「世間を笑わせ、考えさせた」人に与えられる、それがイグ・ノーベル賞。”][amazonjs asin=”4569774407″ locale=”JP” title=”笑う科学 イグ・ノーベル賞 (PHPサイエンス・ワールド新書)”]

 

humour_1_answer.png答え)解像度が悪くて分かりづらかったと思いますが水槽で魚釣りをしております

Avatar photo

ペリプラノン

投稿者の記事一覧

有機合成化学が専門。主に天然物化学、ケミカルバイオロジーについて書いていきたいと思います。

関連記事

  1. 置き去りのアルドール、launch!
  2. 遷移金属の不斉触媒作用を強化するキラルカウンターイオン法
  3. ESIPTを2回起こすESDPT分子
  4. Wileyより2つのキャンペーン!ジャーナル無料進呈と書籍10%…
  5. 室温固相反応で青色発光物質Cs₃Cu₂I₅の良質薄膜が生成とその…
  6. 便秘薬の話
  7. 元素周期 萌えて覚える化学の基本
  8. 核酸医薬の物語3「核酸アプタマーとデコイ核酸」

注目情報

ピックアップ記事

  1. 交互に配列制御された高分子合成法の開発と機能開拓
  2. メチレン炭素での触媒的不斉C(sp3)-H活性化反応
  3. ポリマーを進化させる!機能性モノマーの力
  4. 第11回 野依フォーラム若手育成塾
  5. 第三級アミン酸化の従来型選択性を打破~Auナノ粒子触媒上での協奏的二電子一プロトン移動~
  6. 化学者の卵、就職サイトを使い始める
  7. 犬の「肥満治療薬」を認可=米食品医薬品局
  8. Excelでできる材料開発のためのデータ解析[超入門]-統計の基礎や機械学習との違いを解説-
  9. 有機合成化学協会の公式ページがリニューアル!!
  10. 相次ぐ”業務用洗剤”による事故

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2014年1月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

注目情報

最新記事

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

圧力に依存して還元反応が進行!~シクロファン構造を活用した新機能~

第686回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機化学第一研究室(鈴木孝…

第58回Vシンポ「天然物フィロソフィ2」を開催します!

第58回ケムステVシンポジウムの開催告知をさせて頂きます!今回のVシンポは、コロナ蔓延の年202…

第76回「目指すは生涯現役!ロマンを追い求めて」櫛田 創 助教

第76回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第75回「デジタル技術は化学研究を革新できるのか?」熊田佳菜子 主任研究員

第75回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第74回「理想的な医薬品原薬の製造法を目指して」細谷 昌弘 サブグループ長

第74回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第57回ケムステVシンポ「祝ノーベル化学賞!金属有機構造体–MOF」を開催します!

第57回ケムステVシンポは、北川 進 先生らの2025年ノーベル化学賞受賞を記念して…

櫛田 創 Soh Kushida

櫛田 創(くしだそう)は日本の化学者である。筑波大学 数理物質系 物質工学域・助教。専門は物理化学、…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP