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化学者のつぶやき

新しい太陽電池ーペロブスカイト太陽電池とは

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レオです。今回はここ最近太陽電池業界を賑わせている話題の太陽電池であるペロブスカイト(perovskite)太陽電池について紹介します。お時間のある方はどうぞお読みください。

ペロブスカイトと初期のペロブスカイト太陽電池の報告

 

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Perovskiteの生みの親であるロシアの科学者、Lev. Perovski[1]

まずペロブスカイトについて簡単ですが説明します。ペロブスカイトとはチタン酸カルシウム(灰チタン石, CaTiO3)の結晶構造を発見したロシアの研究者、Lev. Perovskiにちなんで命名された結晶構造のことです。ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物には強誘電体を示すチタン酸バリウム(BaTiO3)など非常に機能性の高い化合物が多く知られています。

ペロブスカイト化合物を太陽電池に用いた最初の報告例は桐蔭横浜大学宮坂教授ら研究グループです[2]。

2009年に、宮坂らは色素増感型太陽電池の色素部分にペロブスカイト結晶構造を有するCH3NH3PbI3を用いて変換効率3.9%を達成しました。しかし このとき開発された太陽電池のホール輸送材料にはヨウ素を含む電解液を用いていました。そのため電荷分離層であるペロブスカイト材料であるCH3NH3PbI3層が電解液で侵されてしまい寿命や効率がでませんでした。

そこで同グループはその課題を解決するために2012年、イギリスのオックスフォード大学と共同で研究を行い、ホール輸送層に電解液を用いない全固体型色素増感型太陽電池に、ペロブスカイト結晶構造を有する同じペロブスカイト材料のCH3NH3PbI2Clを用いた太陽電池を作製しました[3]。このとき最大変換効率10.9%という当時のハイブリッド型薄膜太陽電池の中では非常に高い変換効率を達成し、以降ペロブスカイト系太陽電池は大変注目を集めることとなりました。

 

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変換効率10.9%を達成した素子構造(左)とその断面電子顕微鏡(SEM)図(右)[4]

電極であるフッ素ドープされた酸化スズ(FTO)基板の表面上に、

  1.  電子輸送とFTOのラフネスを抑える効果及び、逆電子移動を抑制する効果のある酸化チタン緻密層
  2. perovskite層の「足場」として、色素増感型太陽電池と同様に光を吸収する表面積を広くしperovskite層に光を多く吸収させることを目的とした多孔質酸化アルミニウム層
  3. 光を吸収し電荷分離並びに電子輸送の役割をもつ鉛perovskite層 (CH3NH3PbI2Cl)
  4. ホール輸送の役割をもつ2,2-,7,7-tetrakis-(N,N-di-p-methoxyphenylamine)9,9-spirobifluorene (Spiro-OMeTAD)層
  5. FTOの対極である銀(Ag)層

によってデバイスができています。この太陽電池の特徴は電極であるFTOとAg以外すべて塗布法で製膜しているということ、また材料の処理に必要な温度は酸化チタン緻密層と多孔質酸化アルミニウム層を焼結するために必要な温度550℃であり、単結晶シリコン太陽電池を作製するときに必要な温度1000℃に比べ大幅に低温で製膜できるといった点です。しかし工業製品化するにあたり歩留まりがわるいといった問題点がありその解決が求められました。

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2012年Science誌で発表された各太陽電池特性に対するヒストグラム[3] (濃色: porousTiO2, 淡色: porousAl2O3をmesoporous層として使用)

特性のばらつきが多い原因はperovskite層に欠陥が生じ、下地の電子輸送の役割をする酸化チタン層とその上に積層するホール輸送層が直接接触してしまいその結果リークしてしまうといった点です。perovskite層の欠陥が生じない製膜法の開発が進みました。

 

新しいperovskite層成膜法の開発

最近、Grätzel教授ら研究グループはperovskite層に用いるCH3NH3PbI3を二段階に分けて成膜する「Sequential deposit法」を開発しました[4]。

これはN, N-ジメチルホルムアミド (DMF) に溶かしたPbI2溶液を基板上にスピンコートしその後CH3NH3Iを2-プロパノールに溶解させ、その溶液にPbI2を製膜した基板を20秒浸しその後基板をベークすることでCH3NH3PbI3を成膜する手法です。この製膜法の開発により緻密なCH3NH3PbI3膜が簡便に製膜できるといったことから作製した太陽電池の特性のばらつきが抑えられるといった特徴があります。

 

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スピンコート法によって製膜されたCH3NH3PbI3 (図左側CとDの図)と 「Sequential deposit法」によって製膜されたCH3NH3PbI3(図右側DとFの図)の表面電子顕微鏡(SEM)[4]

この「Sequential deposit法」が開発されたことによって、perovskite系太陽電池がNational Renewable Energy Laboratory (NREL)のBest Research –Cell efficiencyに初めてデータが掲載されました。(載せられた変換効率のデータは14.1%)もうひとつCH3NH3PbI3-xClx層をPbCl2とCH3NH3Iとの共蒸着によって製膜し最大変換効率15.4%を達成し特性のばらつきを抑えることにも成功しています[5]。

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塗布法と共蒸着法によって製膜したCH3NH3PbI3-xClxの比較表面電子顕微鏡(SEM)図[5]

この方法も「Sequential deposit法」と同様にperovskite層表面の欠陥を抑えることができる手法である。またこのとき作製した太陽電池は今まで紹介してきたペロブスカイト系太陽電池とは異なり色素増感型太陽電池のようにporousTiO2やporousAl2O3といった多孔質金属酸化物層がなくても太陽電池になり、緻密なperovskite層を製膜できることで多孔質金属酸化物層がなくても機能することが判明しました。

 

ペロブスカイト太陽電池の今後

そして今、変換効率の限界に挑戦しています。あらゆる太陽電池の効率を審査している国際再生可能エネルギー研究所(NREL)によると、ペロブスカイト太陽電池の最高効率は2015年2月17日現在20.1%です。この2、3年余りで変換効率が上がっており、将来的には単結晶Si太陽電池に並ぶ可能性も秘めています。今後、太陽電池が現在普及している単結晶Siではなく、ペロブスカイト太陽電池になる時代がくるのでしょうか。研究の進展をチェックしていきたいと思います。

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NRELが公表している各太陽電池の効率ロードマップ

参考文献

  1. 荻野 博、飛田博実、岡崎雅明 著、「基本無機化学 第二版」、東京化学同人 (2006)
  2. A. Kojima, K. Teshima, Y. Shirai, T. Miyasaka, J. Am. Chem. Soc., 131, 6050 (2009) DOI: 10.1021/ja809598r
  3. M. M. Lee, J. Teuscher, T. Miyasaka, T. N. Murakami, H. J. Snaith, Science, 338, 623, (2012)  DOI: 10.1126/science.1228604
  4. J. Burschka,N.Pellet, S. J. Moon, R. H. Baker, P. Gao, M. K. Nazzeruddin, M. Gratzel, Nature, 499, 316 (2013) DOI: 10.1038/nature12340
  5. M. Liu M. B. Johnston, H. J. Snath, Nature, 501, 305 (2013) DOI: 10.1038/nature12509

 

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レオ

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Ph.D取得を目指す大学院生。有機太陽電池の高効率を目指して日々研究中。趣味は一人で目的もなく電車に乗って旅行をすること。最近は研究以外の分野にも興味を持ち日々勉強中。

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