[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

1と2の中間のハナシ

[スポンサーリンク]

 

以前重曹のお掃除のお話を書いたみねです。

 

忙しくて大分ご無沙汰していました。その後ネットをさまよってみると、重曹掃除の上級者はセスキ炭酸ナトリウム、通称セスキを使っていることがわかりました。セスキ炭酸ナトリウム、正直に言って知りませんでした。おそらく化学者でも相当知らないのではないかと思います。今日はこの「セスキ」にまつわるお話を。

 

セスキ炭酸ナトリウムとは?

セスキ炭酸ナトリウムとは、Na3H(CO3)2 nH2Oで表される無機物で、こう書くよりもNa1.5H0.5CO3と書いた方が化学者としてはわかりやすいでしょう。組成式としては重曹と炭酸ナトリウムのちょうど間になりますが、混合物ではなく、この組成の相があるようです。他にもNa1.25H0.75CO3なんてのもあるそうです。重炭酸イオン(HCO3-)と炭酸イオン(CO32-)とが1:1で混ざった複塩です。

水溶液のpHは、重曹が8、炭酸ナトリウムが10に対してセスキはちょうど間の9であり、天然にも算出する(安い)ことなどからも掃除用に市販されています。この強すぎず弱すぎず中途半端な感じがいいのでしょう。

 

ところでセスキってなんだ?

2015-05-23_23-23-37

この耳慣れない接頭辞セスキ(Sesqui)は1と2の間、つまり1.5を表す接頭辞で、セスキと聞いて化学者が思い当たるのは、まずはセスキテルペンでしょうか。テルペン類は生物が体の中で合成する多様な化合物の基本骨格になるもので、10炭素のモノテルペンの中にはリモネンやメントール、シトロネロールや樟脳などがあります。これらはイソプレン(炭素五個)2つから生合成されるため、10個の炭素からなります。20炭素のジテルペン(タキソールなど)、30炭素のトリテルペン(スクアレンなど)もあり、長いものでは天然ゴムがテルペン(イソプレン)のポリマーであることは、高校でも習ったかもしれません。

2015-05-23_23-24-30

もちろんそれ以外にもイソプレン1個とか、3個、5炭素や15炭素化合物もあり、この15炭素化合物がテルペン(10炭素)1.5個分ということでセスキテルペンと呼ばれます。

わざわざ10個ずつ数えているんだからモノテルペンやジテルペンが多いのかと思いきや、セスキテルペン類が最も多く見つかっているようです。

 

他にもあるセスキの利用

他にもありますセスキ。

シルセスキオキサン(Silsesquioxane)はケイ素・酸素と有機側鎖からなる化合物、シロキサンの仲間です。我々がよく目にする石英などは、SiO2という分子式からなる、3次元にがっちりつながった固体ですが、Si-O-Si-O-・・・の1次元の鎖の側鎖にアルキルがつながった一次元の鎖状の化合物はシロキサン(Siloxane)と呼ばれ、[SiOR2]という組成式であらわされます。これはシリコーンオイルなどの骨格で、滑らかな液体になるものが多いです。Siでシル(Sil)、Oがオキサ(oxa)、Rが(アルカンの)アン(ane)でシロキサンですね。

シルセスキオキサンはこのいわば中間の化合物で、[SiO1.5R]という組成式になり、シル-セスキオキサ-アンとなっているわけです。

シルセスキオキサンは有名な籠型骨格のような、おもしろい骨格構造を作ることが知られており、安定性、多様な骨格と物性などから現在でも盛んに研究されています。これもシリカとシリコーンのいわば中間の化合物と言えるでしょう。

2015-05-23_23-25-08

他にもアルミや鉄の3価の金属の酸化物、例えばFe2O3はFeO1.5と書くことも出来るので、セスキオキシド(sesquioxide)と略されることもあるようです。

これなら2価の金属はFeOでモノオキシド、中途半端な3価の鉄ならFeO1.5でセスキオキシド、もしFeO2になったらジオキシド、わかりやすいですね。

 

一般的にも使います

他にセスキを使う言葉を調べてみたら150周年(Sesquicentennial、セスキ1世紀)とか75周年(Semisesquicentennail、半分のセスキ1世紀)なんて言葉もあるそうです。

2015-05-23_23-25-39

ちなみに今年はBASF創立150周年、エントロピー命名150周年だそうです。

セスキ線形なんてものもありました。数学で線形と共線形があって、偶数と奇数に対応するようなもんでその中間なので、奇数の半分、1.5に対応するようなモノ、らしいです。

 

セスキというのは、この何ともややこしいモノを表すのに使うおもしろい接頭辞ですね。

 

関連記事

  1. 光触媒で人工光合成!二酸化炭素を効率的に資源化できる新触媒の開発…
  2. 「触媒的オリゴマー化」によるポリピロロインドリン類の全合成
  3. 化学反応を自動サンプリング! EasySampler 1210
  4. 「関東化学」ってどんな会社?
  5. 薬が足りない!?ジェネリック医薬品の今
  6. ナイトレンの求電子性を利用して中員環ラクタムを合成する
  7. 海外学会出張でeSIMを使ってみました
  8. メソポーラスシリカ(1)

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 世界の中分子医薬品市場について調査結果を発表
  2. Bayer/Janssen Rivaroxaban 国内発売/FDA適応拡大申請
  3. 話題のAlphaFold2を使ってみた
  4. 新課程視覚でとらえるフォトサイエンス化学図録
  5. 富士フイルム和光純薬がケムステVプレミアレクチャーに協賛しました
  6. 量子化学計算を駆使した不斉ホスフィン配位子設計から導かれる新たな不斉ホウ素化反応
  7. メソリティック開裂 mesolytic cleavage
  8. 工程フローからみた「どんな会社が?」~OLED関連
  9. 史上最強の塩基が合成される
  10. 豚骨が高性能な有害金属吸着剤に

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2015年5月
« 4月   6月 »
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

注目情報

注目情報

最新記事

【書籍】セルプロセッシング工学 (増補) –抗体医薬から再生医療まで–

今回ご紹介する書籍「セルプロセッシング工学 (増補) –抗体医薬から再生医療まで–」は、20…

芳香環にフッ素を導入しながら変形する: 有機フッ素化合物の新規合成法の開発に成功

第361回のスポットライトリサーチは、早稲田大学大学院先進理工学研究科(山口潤一郎研究室)小松田 雅…

湘南ヘルスイノベーションパークがケムステVプレミアレクチャーに協賛しました

レジェンド化学者もしくは第一人者の長時間講演を完全無料で放映する、ケムステVプレ…

化学企業が相次いで学会や顧客から表彰される

武蔵エナジーソリューションズ株式会社に所属する研究者が、2022年度電気化学会技術賞(棚橋賞)を受賞…

第20回次世代を担う有機化学シンポジウム

第20回記念!今年は若手向けの新企画もやります!「若手研究者が口頭発表する機会や自由闊達にディス…

ビナミジニウム塩 Vinamidinium Salt

概要ビナミジニウム塩(Vinamidinium Salt)は、カルボン酸をヴィルスマイヤー・ハッ…

伝わるデザインの基本 増補改訂3版 よい資料を作るためのレイアウトのルール

(さらに…)…

生体医用イメージングを志向した第二近赤外光(NIR-II)色素:②合成蛍光色素

バイオイメージングにおけるの先端領域の一つである「第二近赤外光(NIR-II)色素」についての総説を…

高分子鎖デザインがもたらすポリマーサイエンスの再創造|オンライン・対面併設|進化する高分子材料 表面・界面制御 Advanced コース

開講期間●令和4年 2月  14日(月)、17日(木):基礎編●       21日(月)、…

ホウ素化反応の常識を覆し分岐型アルケンの製造工程を大幅短縮

第 360回のスポットライトリサーチは、広島大学大学院 先進理工系科学研究科 博士課…

Chem-Station Twitter

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP