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化学者のつぶやき

CV測定器を使ってみた

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「電気化学」と聞くと、難しい数式が出てきて何やらとっつきづらいというイメージがある人が多いと思います。しかし、最近は電気や光エネルギーを誘起化学反応に応用し、膨大な新反応が開発されています。こんな新反応を使うにも・作るにも、自分が合成した化合物や反応系の電気化学的な特性を知ることは大切です。
そこで今回は、よく聞くCV測定(cyclic voltammetry)って実際にどうやるの?チャートはどうやって読むの?と言うところを解説していこうと思います!
電気化学の基礎的な知識については過去記事(1・2)をご参照ください。

※今回の記事内容はこちらの論文を参考に作成しました。

測定器について

いや、そもそもCV測定器持ってないからできません。という方が圧倒的に多いと思いますが、まずは測定本数もそこまで多くないでしょうから、同じ研究機関内のCV測定器を持っている研究室にお借りするのが良いです。
ちなみに購入すると200万円くらいはするようです(例: BAS社 ALS600)。

サンプルの準備

まず決める必要があるのは電解質と溶媒です。有機化合物は電気の流れない有機溶媒中で測定するため、有機溶媒に電解質と化合物を溶かして測定します。
溶媒が酸化還元されない範囲(電位窓)で測定を行う必要があり、たとえばよく用いられる0.1 M [Bu4N][PF6] in MeCN系は-2.5V 〜 +2.5Vくらいの範囲で測定できます。化合物は1 mMくらいになるように調整し、1~2 mLくらい用意します。何かの定量に使うわけではないので、濃度はだいたいで大丈夫です。

電解質と溶媒ごとの電位窓

 

電極の選択

電極自体が測定範囲内で反応してしまってはいけないので、PtやCの電極を使うことが多いです。電極に迷ったら、類似の化合物の電気化学測定をしている論文を探して参考にすると良いと思います。

電極磨き

測定直前に後述するWorking Electrodeの表面を磨く必要があります。研磨剤のアルミナ粉末を研磨用パッドに乗せて水を数滴垂らしてスラリー状にします。電極棒を垂直に立て、下図のように八の字を描きながら研磨します。丸を描くように研磨すると面にムラができるので良くないとのこと。3~5分くらい丹念に磨くのが測定を綺麗にするコツだそうです。

電極の磨き方

 

実際の測定

専用のセルに1 mL程度(全ての電極が浸かるくらい)のサンプル溶液を入れます。
セルに差し込むものは以下の4つ。

  • Working Electrode (WE)
  • Counter Electrode (CE)
  • Reference Electrode (RE)
  • N2 gas bubbler

以上を対応したワニ口クリップに挟みます。
次は、溶液を脱気します。窒素ガスを1〜2分間bubblingして溶液を脱気し、その後bubblingチューブを液面から出して系内にflowしている状態にして測定準備完了です(酸素は酸化還元に関わってしまうので脱気は重要です)。
CV測定をする場合はCV測定を選択し、測定する電位幅(横軸)を入力、さらに計測する電流値の幅(縦軸)を決めて測定を開始します。

まずサンプルなしのblank溶液(電解質と溶媒のみ)を測定します。
次に電極を磨き、サンプル溶液を測定します。

左: 模式図、右: 実際のセルの様子(バブラーが差し込まれていませんが、差し込みます。)

 

【One Point Memo】

・おおかた、セルの一番下まで電極が刺さるようになっていると思うので、溶液自体はかなり少なくて大丈夫ですが、系内をInertに保つために窒素ガスを流すので少しずつですが溶液が減ります。それを加味したサンプル量にしなくてはいけません。

・軸範囲の設定を失敗し振り切れてしまった場合でも、再測定前に毎回電極表面を磨くべきです。電極表面で何かしらの反応が起き、電極表面にゴミがついてしまいます。これが次の測定の邪魔をして、綺麗なチャートが取れない場合があります。

チャートの解析

チャートは測定画面には表示されますが、持ち帰るためにはテキスト形式に変換し、Excelなどで開くことになります。
必要あれば、Excelで横軸の値を補正します。たとえば、比較したい報告値がカロメル標準電極(V vs SCE)で報告されていて、Ag+/Agの参照電極(RE)を使った場合、+0.048Vの補正をします。とにかくこれも、類似系の論文を参考にすると良いです。
次に、電位(V vs SCE)を横軸、電流(A)を縦軸にとり散布図を作成します。

(お詫びと訂正:飽和カロメル電極と銀/塩化銀電極の補正値に誤りがありました。お詫びして訂正致します。2023/04/05)

酸化還元のサイクルが成り立つ場合のチャート
酸化・還元プロセスが測定電位窓中で起きていると、以下のようなチャートになります
こちらの例はフェロセン(Fc)/フェリシニウムイオン(Fc+)電極におけるFc+/Fcの酸化還元サイクルを表したチャートです。
Aからスタートし、Fc+の還元が進行すると電子(電流)が流れるためCのピークが検出されます。続いて、Dの地点で折り返し、電位を上げていくことでFcの酸化が進行することでFのピークが検出されます。Fc+とFcの濃度が等しくなる点がB,Eであり、E = E1/2の点になります。つまり、この電位で酸化反応と還元反応が等しく進行していると言うことを表しています。

不可逆的な酸化が起きる場合のチャート
先程のように、上下にピークが出ないCV測定のチャートがこちら(青線)。電位を上げていくと一度酸化反応が進行し、折り返した後はピークがないです。不可逆的な酸化(還元)が起きる場合、そのピークトップの電位(Ep, peak potential)の半分の電流値の位置に対応する電位がEp/2(half peak potential)であるので、ピークトップが読めることが重要です。しかし、以下のチャートではピークトップが綺麗に見えないためEp/2の判断がつきません。このような場合、DPV(微分パルスボルタメトリー, Differential Pulse Voltammetry, オレンジ線)を測定すると良いとのこと。微分パルスというように、CVスペクトルの微分値を見ています。DPVのピークトップの電位はEp/2に近似することができるため、同時に測定するとより確かなデータとなります(連続測定する場合でも電極の磨きは忘れないように!)。

青: CV、オレンジ: DPV、この場合Ep/2は約1.57V

 

いかがでしたでしょうか。多少なりとも、CVって何???というクエスチョンマークが解消されればと思い書いてみました。
大抵どこの研究機関にもCV測定器を持っている研究室はあると思いますし、ちょっと測定してみたいという時にお願いするなり、やり方を教わるなりするハードルが下がったと思います。
サンプルの調整、測定、後片付けで10~20分程度あれば測定できます。測定を依頼するのであれば、このくらいの手間はある測定だということを理解した上でお願いした方が良いですよね。
難しくないのでチャレンジしてみてはどうでしょうか?

 

Macy

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有機合成を専門とする教員。将来取り組む研究分野を探し求める「なんでも屋」。若いうちに色々なケミストリーに触れようと邁進中。

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