[スポンサーリンク]

一般的な話題

オピオイド受容体、オレキシン受容体を標的とした創薬研究ーChemical Times 特集より

[スポンサーリンク]

関東化学が発行する化学情報誌「ケミカルタイムズ」。年4回発行のこの無料雑誌の紹介をしています。

もう4月の半ばということで、本年2号目のケミカルタイムズ…いやケミタイの発行です。ほんとコロナ禍どんどん時間ばかり過ぎていってしまいますね。

今回の特集はオピオイド受容体、オレキシン受容体を標的とした創薬研究。

あれ?これまでと違ってかなり絞ったタイトルだなと思い、著者を見てみるとオピオイドといえば間違いなくこの先生、ふむふむ…. というか全部長瀬博先生一派ではないですか。

というわけで、今回のケミタイ、長瀬メドケムが完全にケミタイジャックしています。

もちろん今号もすべて無料で閲覧可能です。それでは1つずつ簡単に紹介しましょう。(記事はそれぞれのタイトルをクリックしていただければ全文無料で閲覧可能です。PDFファイル

モルヒナン系薬物の研究開発

オピオイド研究の第一人者である筑波大学の長瀬博特命教授による寄稿。この記事の「はじめに」の部分で今回の特集について記載されていました。

オピオイド受容体(KORとDOR)選択的なモルヒナン系薬物の研究開発について述べています。

そもそもオピオイドとは、麻薬性(依存性)鎮痛薬のことで、モルヒネを代表とする窒素を含む化合物(アルカロイド)です。

モルヒネ(1)と主な合成麻薬の構造(出典:Chemical Times)

 

鎮痛作用はすばらしいが、依存性をいかになくすか、オピオイド研究の中での最も大きな課題でした。本稿ではそのオピオイド研究の歴史から、筆者が創出したナルフラフィン、また新たな医薬品候補化合物について述べています。創薬に興味がある人ならば大変おもしろく読める寄稿記事だと思います。

経口そう痒症改善剤「レミッチ®カプセル2.5 μg」(ナルフラフィン塩酸塩)(引用:Chemical Times)

モルヒナン型オレキシン受容体拮抗薬の発見

2つめは、筑波大学斉藤毅助教によるモルヒナン型オレキシン受容体拮抗薬に関する記事。5月7日に開催される慶應有機化学若手シンポジウムで講演されます。

我々の睡眠に関わるオレキシン。そこに作用する化合物(オレキシン受容体リガンド)が不眠症やナルコレプシー治療薬として期待されています。

オレキシン受容体リガンドの一例(出典:Chemical Times)

 

オレキシンには、オレキシンA,Bという2種類のイソペプチドが存在し、2つのGタンパク質共役型受容体(GPCR)のOX1RとOX2Rに作用することがわっています。

本稿では、そのなかでもOXR1に特異的に反応する拮抗薬の開発研究について述べています。前記事の続きになっている部分もあり、読みやすいです。

ナルフラフィン活性立体配座に基づく新規 κ オピオイド鎮痛薬の創出

筑波大学南雲康行助教による寄稿。1つめの記事の続きとなっております。研究グループで創出した、ナルフラフィンは薬物依存性および嫌悪性を示さない臨床で唯一のκ受容体作動薬であったが、その鎮痛作用量で鎮静作用を併発するため、鎮痛適用の承認は得られていませんでした。そのため、ナルフラフィンの改良を進めて、最終的にYNT-1612という化合物を見出したところまでのお話になっています。

YNT-1612は鎮痛作用 vs. 嫌悪・鎮静作用: > 500というκ受容体作動薬では前例のない非常に大きな治療係数をもった化合物です。なフフラフィンの推定活性立体配座の固定が重要であることを記事で述べています。詳しくは記事を御覧ください。

オピオイドδ受容体作動薬をターゲットとした新規向精神薬の創薬への可能性

最後は、東京理科大学薬学部斎藤 顕宜教授による寄稿です。DOR作動薬KNT-127を中心にした抗うつ・抗不安薬の研究について述べています。

以上、オピオイド満載の記事となっています。リアルな創薬現場の化学変換や生理活性結果など、非常に参考になるところは多いと思います。ぜひともご一読を。

過去のケミカルタイムズ解説記事

外部リンク

Avatar photo

ケムステPR

投稿者の記事一覧

ケムステのPRアカウントです。募集記事や記事体広告関連の記事を投稿します。

関連記事

  1. 有機化学者のラブコメ&ミステリー!?:「ラブ・ケミスト…
  2. DNAが絡まないためのループ
  3. 有機合成化学協会誌2017年5月号 特集:キラリティ研究の最前線…
  4. 【速報】ノーベル化学賞2013は「分子動力学シミュレーション」に…
  5. お望みの立体構造のジアミン、作ります。
  6. デカすぎる置換基が不安定なリンホウ素二重結合を優しく包み込む
  7. 化学系学生のための就活2019
  8. 世界の中心で成果を叫んだもの

注目情報

ピックアップ記事

  1. 日本ゼオンのイノベーションに関する活動
  2. エーザイ 抗がん剤「ハラヴェンR」日米欧で承認取得 
  3. 環状ペプチドの効率的な化学-酵素ハイブリッド合成法の開発
  4. ラジカルを活用した新しいケージド化法: アセチルコリン濃度の時空間制御に成功!!
  5. ポンコツ博士の海外奮闘録 〜ポスドク失職・海外オファー編〜
  6. 読むだけで身につく化学千夜一夜物語 食品、日用品から最先端技術まで75話
  7. rhodomolleins XX と XXIIの全合成
  8. ケック ラジカルアリル化反応 Keck Radicallic Allylation
  9. 炭酸ビス(ペンタフルオロフェニル) : Bis(pentafluorophenyl) Carbonate
  10. レスベラトロール /resveratrol

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2022年5月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

注目情報

最新記事

7th Compound Challengeが開催されます!【エントリー〆切:2026年03月02日】 集え、”腕に覚えあり”の合成化学者!!

メルク株式会社より全世界の合成化学者と競い合うイベント、7th Compound Challenge…

乙卯研究所【急募】 有機合成化学分野(研究テーマは自由)の研究員募集

乙卯研究所とは乙卯研究所は、1915年の設立以来、広く薬学の研究を行うことを主要事業とし、その研…

大森 建 Ken OHMORI

大森 建(おおもり けん, 1969年 02月 12日–)は、日本の有機合成化学者。東京科学大学(I…

西川俊夫 Toshio NISHIKAWA

西川俊夫(にしかわ としお、1962年6月1日-)は、日本の有機化学者である。名古屋大学大学院生命農…

市川聡 Satoshi ICHIKAWA

市川 聡(Satoshi Ichikawa, 1971年9月28日-)は、日本の有機化学者・創薬化学…

非侵襲で使えるpH計で水溶液中のpHを測ってみた!

今回は、知っているようで知らない、なんとなく分かっているようで実は測定が難しい pH計(pHセンサー…

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

圧力に依存して還元反応が進行!~シクロファン構造を活用した新機能~

第686回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機化学第一研究室(鈴木孝…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP