[スポンサーリンク]

ケムステニュース

カラス不審死シアノホス検出:鳥インフルではなし

[スポンサーリンク]

横浜市中区の路上で4月30日、カラス20羽の死骸が見つかった問題で、市衛生研究所は2日、農薬検査を行った2羽の胃の内容物から害虫駆除に使われる殺虫剤「シアノホス」が検出されたと発表した。

市健康安全課によると、シアノホスは市販されている有機リン系殺虫剤で、果樹園や畑で農薬として使われている。

死骸が発見されたのはJR関内駅から北に約300メートルの繁華街。加賀町署によると、不審者や不審物の情報はないという。2日にも現場周辺で3羽の死骸が見つかった。同市泉区和泉町の公園と同区総合庁舎敷地内でも2月3~7日、カラス計8羽とハクセキレイ1羽の死骸が発見されており、農薬検査の結果、シアノホスが検出された。市健康安全課は、野鳥の死骸を見つけても手で触れないよう注意を呼びかけている。

(2013年5月3日09時32分 読売新聞)

鳥インフルエンザが疑われていましたが、どうやら原因は違うようで、まずはひと安心です。

シアノホスは、コリンエステラーゼを標的とした有機リン系農薬で、殺虫剤や殺鳥剤に使われます。神経伝達物質のひとつであるアセチルコリンのような化合物が分解できなくなるため、神経細胞と神経細胞の間にアセチルコリンが蓄積し、量によっては呼吸困難など麻痺したような症状が出ます。シアノホスの名前の「シアノ」はシアノ基(-C≡N)を、「ホス」はリン(P)化合物であることを意味しています。

シアノホスには、太陽光によって分解される性質[1]があり、農協の指導に従うなど、ルールを守って、決められた量を農作物に使う分には、何の問題もありません。今回は、カラスに対してシアノホスを誰かが故意に盛ったのか、それとも農薬の管理不行届きが露呈した結果なのか、まだ明らかにされていませんが、用量外の農薬は危険ですので、横浜近辺にお住いの場合は、しばらくの間カラスの死骸に注意し、うかつに手で触れないようにしましょう。

 

関連書籍

[amazonjs asin=”B00CL5VP56″ locale=”JP” title=”緊急出版 保存版 鳥インフルエンザのパンデミック“世界的大流行”から、あなたは生き残れるか? 健康のつくり方 (健康のつくり方シリーズ)”]

 

参考論文

[1] “Reaction Pathways for the Photodegradation of the Organophosphorus Cyanophos in Aqueous Solutions.” Menager M et al. Photochem. Photobiol. 2009 DOI: 10.1111/j.1751-1097.2009.00654.x

Avatar photo

Green

投稿者の記事一覧

静岡で化学を教えています。よろしくお願いします。

関連記事

  1. インドの農薬市場と各社の事業戦略について調査結果を発表
  2. 化学物質MOCAでがん、4人労災
  3. 平成をケムステニュースで振り返る
  4. 化粧品用シリコーン代替素材の市場について調査結果を発表
  5. サイエンス・ダイレクトがリニューアル
  6. 痛風薬「フェブキソスタット」の米国売上高が好発進
  7. 「富士フイルム和光純薬」として新たにスタート
  8. イタリアに医薬品販売会社を設立 エーザイ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 第三回ケムステVプレミアレクチャー「夢のある天然物創薬」を開催します!
  2. アルデヒドからアルキンをつくる新手法
  3. 生命が居住できる星の条件
  4. 第六回サイエンス・インカレの募集要項が発表
  5. クロスカップリング反応にかけた夢:化学者たちの発見物語
  6. 光親和性標識 photoaffinity labeling (PAL)
  7. 化学構造式描画のスタンダードを学ぼう!【応用編】
  8. 第98回―「極限環境における高分子化学」Graeme George教授
  9. BO triple bond
  10. 有機合成化学協会誌2024年10月号:炭素-水素結合変換反応・脱芳香族的官能基化・ピクロトキサン型セスキテルペン・近赤外光反応制御・Benzimidazoline

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2013年5月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

注目情報

最新記事

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

圧力に依存して還元反応が進行!~シクロファン構造を活用した新機能~

第686回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機化学第一研究室(鈴木孝…

第58回Vシンポ「天然物フィロソフィ2」を開催します!

第58回ケムステVシンポジウムの開催告知をさせて頂きます!今回のVシンポは、コロナ蔓延の年202…

第76回「目指すは生涯現役!ロマンを追い求めて」櫛田 創 助教

第76回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第75回「デジタル技術は化学研究を革新できるのか?」熊田佳菜子 主任研究員

第75回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第74回「理想的な医薬品原薬の製造法を目指して」細谷 昌弘 サブグループ長

第74回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第57回ケムステVシンポ「祝ノーベル化学賞!金属有機構造体–MOF」を開催します!

第57回ケムステVシンポは、北川 進 先生らの2025年ノーベル化学賞受賞を記念して…

櫛田 創 Soh Kushida

櫛田 創(くしだそう)は日本の化学者である。筑波大学 数理物質系 物質工学域・助教。専門は物理化学、…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP