[スポンサーリンク]

一般的な話題

産業界のニーズをいかにして感じとるか

[スポンサーリンク]

はじめに

産学連携が叫ばれ月日は経ちますが、最新の産業界のニーズをどこから取得すればいいのでしょうか。

産学連携に関して、日本と欧米ではシステムや社会構造、文化的背景の違いなどあり一概に論じることはできません。しかし現実として欧米では研究室と産業界がタッグを組み多くの成果を生み出しています[1]。ひと昔前と比べて、雑誌が乱立し論文が量産される昨今では、主要な雑誌に掲載された論文タイトルに目を通すだけでも気の遠くなくような作業です。こういう場合の解決策としてアラートを掛けるのが一般的ですが、自分で選択した領域・分野・ワードというフィルターを通すと一見不要に見えて大きなヒントになる論文を見落とす可能性があります。

一方、専門外から有用そうな情報を得るには、分野に応じて信頼できる情報源を持つことができれば便利ではないでしょうか。勿論、利用する場合、情報発信側が色眼鏡をかけて編集していることは常に頭の片隅においておく必要がありますが。今回は、それらの一端を感じ取ることができる、お勧めの論文誌を紹介します。

 

お勧め論文誌

読者の皆さんは既にご存知の方が多いかもしれませんが、「OPR&D(Organic Process Research & Development)」という論文誌があります。プロセス化学関係者以外でもお気に入りの方がいると存じます。以前、他のスタッフによりこの論文誌についての記事が書かれていますが、再度紹介させていただければと思います(関連記事:Org. Proc. Res. Devのススメ)。

私はこの論文誌で、

  1. 「Some Items of Interest to Process R&D Chemists and Engineers」
  2. 「A Review of U.S. Patent Literature」

の2つのhighlights記事だけは忙しくても読むようにしています。記事に目を通すことで、少なくとも欧米で期待される産業界のニーズを感じることができます。

2016-04-19_02-10-15

図1参考文献2より導入部抜粋

 

Some Items of Interest to Process R&D Chemists and Engineers

1.に関しては、JACSやACIEなどの一級の雑誌以外からも、有機化学をする実務者が有用と判断するであろう反応が並んでいます。よく紹介されている反応としては、これまで産業界で期待されていたが合成法がみつかっていなかった反応開発やスケールアップ可能になった反応開発、基質一般性の高い反応の開発、有用な保護基の開発、反応剤の開発、などです。

ちなみに2016年4月現在の最新号で引用された雑誌の内訳は、AICE. 7, JACS. 6, Eur.J.Chem.3, JOC. 4, OL.1, CC.1, Org.Chem.Front.1, となっていました。記事により偏りがでますが、一年通すと産業に偏りがなく参考になります。無料で誰でもダウンロード可能なこともありがたいところです。この記事に反応が紹介されれば産業界の実務者に認められた証の一つになるのではないでしょうか。

 

A Review of U.S. Patent Literature

2.に関しては、無数に公開されるpatentから、本当に実務者が有用と考える反応をeditorが選んで報告しています。今月号は特別でbiocatalyst特集です。通常は1と同様幅広い有機化学の範囲に関して、反応開発にとどまらず、注目の化合物を効率的に合成するまでの合成手法の改良、精製手法の改良・開発、最新の産業技術・反応技術など、プロセス合成関係者のみならず有機屋さんなら誰でも有用となる知見が広い裾野で収集できるのが特徴です。

ちなみに前回の記事は2月号でした[3]。内容は、summay, 1 enzymatic transamination as a key step in the preparation of the antimalarial, cipargamin, 2 solid state polymorph transformation using a heated screw extruder, 3 resolution/racemization process for (R)-Lacosamide でした。毎号summaryを読むと概要が掴めるので助かります。

この雑誌は月刊誌ですので、休暇前の大掃除後、ちょっとした時間にまとめて半年分ほど見ても疲れないのも魅力の一つです。有機化学の信頼できる情報源としてぜひお勧めしたいと思います。

 

参考文献

  1. Michaudel, Q.; Ishihara, Y.; Baran, P. S. Acc. Chem. Res. 2015, 48, 712-21. DOI: 10.1021/ar500424a
  2. Zhao, W.; Zhao, D.; Guizzetti, S.; Schwindeman, J. A.; Bigot, A.; Knight, J. Org. Process Res. Dev. 2016, 20, 693−699 DOI: 10.1021/acs.oprd.6b00102
  3. Hughes, D. L. Org. Process Res. Dev. 2016, 20, 123–128. DOI: 10.1021/acs.oprd.6b00004

 

関連書籍

[amazonjs asin=”0123865379″ locale=”JP” title=”Practical Process Research and Development – A guide for Organic Chemists, Second Edition”][amazonjs asin=”4759814922″ locale=”JP” title=”アート オブ プロセスケミストリー: メルク社プロセス研究所での実例”][amazonjs asin=”3527310215″ locale=”JP” title=”Side Reactions in Organic Synthesis: A Guide to Successful Synthesis Design”]
Avatar photo

MasaN.

投稿者の記事一覧

博士(工)。できる範囲で。

関連記事

  1. 文具に凝るといふことを化学者もしてみむとてするなり⑪:どっちもク…
  2. −(マイナス)と協力して+(プラス)を強くする触媒
  3. 水が決め手!構造が変わる超分子ケージ
  4. アメリカで Ph.D. を取る –エッセイを書くの巻– (後編)…
  5. アルツハイマー病の大型新薬「レカネマブ」のはなし
  6. サーモサイエンティフィック「Exactive Plus」: 誰で…
  7. 理研の研究者が考える未来のバイオ技術とは?
  8. 第54回天然有機化合物討論会

注目情報

ピックアップ記事

  1. 臭素系難燃剤など8種を禁止 有害化学物質の規制条約
  2. 計算化学:基底関数って何?
  3. 水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム Red-Al
  4. アスタチンを薬に使う!?
  5. BTQBT : BTQBT
  6. マイゼンハイマー転位 Meisenheimer Rearrangement
  7. ダンハイザー環形成反応 Danheiser Annulation
  8. ビリジカタムトキシン Viridicatumtoxin
  9. 「田中さん惜しかった」--分解酵素「プロテアソーム」を精製
  10. 分子標的の化学1「2012年ノーベル化学賞GPCRを導いた親和クロマトグラフィー技術」

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2016年4月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  

注目情報

最新記事

「MI×データ科学」コース 〜LLM・自動実験・計算・画像とベイズ最適化ハンズオン〜

1 開講期間2026年5月26日(火)、29日(金) 計2日間2 コースのねらい、特色近…

材料の数理モデリング – マルチスケール材料シミュレーション –

材料の数理モデリング概要材料科学分野におけるシミュレーションを「マルチスケール」で理解するた…

第59回天然物化学談話会@宮崎(7/8~10)

ごあいさつ天然物化学談話会は、全国の天然物化学および有機合成化学を研究する大学生…

トッド・ハイスター Todd K. Hyster

トッド・カート・ハイスター(Todd Kurt Hyster、1985年10月10日–)はアメリカ出…

“最難関アリル化”を劇的に加速する固定化触媒の開発

第 703回のスポットライトリサーチは、横浜国立大学大学院 理工学府 博士課程前期で…

「ニューモダリティと有機合成化学」 第5回公開講演会

従来の低分子、抗体だけでなく、核酸、ペプチド、あるいはその複合体(例えばADC(抗体薬物複合体))、…

溶融する半導体配位高分子の開発に成功!~MOFの成形加工性の向上に期待~

第702回のスポットライトリサーチは、関西学院大学理学部(田中研究室)にて助教をされていた秋吉亮平 …

ミン・ユー・ガイ Ming-Yu Ngai

魏明宇(Ming-Yu Ngai、1981年X月XX日–)は米国の有機化学者である。米国パデュー大学…

第55回複素環化学討論会

複素環化学討論会は、「複素環の合成、反応、構造および物性」をテーマとして、化学・薬学・農芸化学など幅…

逐次的脱芳香族化と光環化付加で挑む!Annotinolide B初の全合成

Annotinolide Bの初の全合成が報告された。キノリンの逐次的な脱芳香族化と分子内光環化付加…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP