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一般的な話題

プレプリントサーバー:ジャーナルごとの対応差にご注意を

先日のケムステニュースで、化学系プレプリントサーバーChemRxiv(ケムアーカイブ)が投稿を受け付け始めたことをお伝えしました。

新しもの好きの筆者としては、とにかく試してみたい衝動に駆られています(笑)。とはいえ成果発表には何一つ手が抜けないので、特徴を理解して進めないと、思わぬ落とし穴にハマりかねないのも事実。

今回はその一つ、ジャーナル毎にプレプリントの取扱いが違うノダ!をご紹介したいと思います。

プレプリント投稿の益を最大化したいなら、各ジャーナルの投稿規定は読み込んでおくべきです。なぜならプレプリントを「既出扱い」と見なすジャーナルがいくつもあるからです。化学分野におけるフラグシップジャーナルは、それぞれどのようなスタンスなのでしょうか?投稿規定から抜粋して見ましょう。

プレプリント投稿へ制限を課さないジャーナル

Nature

The Nature journals support the posting of submitted manuscripts on community preprint servers such as arxiv and biorxiv. We do, however, ask you to respect the following summaries of our policies:
– The original submitted version may be posted at any time.
– The accepted version may be posted 6 months after publication.
– The published version—copyedited and in Nature journal format—may not be posted on a preprint server or other website.

Nature誌への投稿は、プレプリント投稿後でも問題ありません。しかしながら、アクセプト版は出版後6ヶ月はアップロードを待ってくれなど、いくつかAuthor側で留意しておくべき点はあるようです。

Nature Chemistry

Submission to Nature Chemistry is taken to imply that there is no significant overlap between the submitted manuscript and any other papers from the same authors under consideration or in press elsewhere. (Abstracts or unrefereed web preprints do not compromise novelty).

Nature Chemistry誌への投稿も、プレプリント投稿後で全く問題ありません。他の化学関連Nature姉妹誌(Nat. Chem. Biol.; Nat. Commun.; Nat. Mater.; Nat. Energy; Nat. Catal.; Nat. Nanotech.)も、全て同じスタンスでした。

Science

Distribution on the Internet may be considered prior publication and may compromise the originality of the paper as a submission to Science, although we do allow posting of research papers on not-for-profit preprint servers such as arxiv.org and bioRxiv.

Science誌への投稿も、プレプリント投稿後でOKです。

RSC系列ジャーナル(Chem. Sci., Chem. Commun.など)

Authors publishing in our journals may present their research ahead of publication in the following ways.
Through the deposition of a preprint version of the article in non-commercial repositories (eg ArXiv), institutional repositories or authors’ individual websites…

こちらは事前公開そのものに寛容なスタンスです。

プレプリント投稿に制限があるジャーナル

J. Am. Chem. Soc.(JACS)

Submission of a manuscript to JACS is contingent upon the agreement by all the authors that the reported work has not received prior publication and that no portion of this or any other closely related work is under consideration for publication elsewhere in any medium, including electronic journals, computer databases, and publicly accessible preprint Web sites.

プレプリントサーバに投稿したものは何であれ受付けないとするスタンスです。要注意!ChemRxivを運営するACSの最高峰誌なのですから、プレプリントには寛容になって欲しい・・・と感じるのは筆者だけでしょうか?とはいえJACS誌はもともと査読が速い(約1ヶ月)ので、配慮する必要が無いのかも知れませんが・・・。

Angew. Chem. Int. Ed.(ACIE)

The essential findings presented in a Communication or significant parts of them may not already have appeared in print or in electronic online systems (for example, in online resources, in reviews, proceedings, or preprints).

肝心なところがウェブに載っているとダメ=プレプリント投稿したものは不可とするスタンス。こちらも要注意です。

Chem

We will consider papers previously posted on a preprint server such as arXiv, bioRxiv, or BioRN. This policy only applies to the original submitted version of the paper; we do not support posting of revisions that respond to editorial input and peer review or the final published version to preprint servers.

プレプリント投稿した原稿は受け付けてくれるようですが、最初のバージョンのみという指定あり。編集部の指摘やリバイズが入ったもの、プレプリント最終版はダメだそうです。

他のACS系列ジャーナル:ACS Catalysisの例

Posting of submitted manuscripts to preprint servers or databases (e.g. ChemRxiv, ArXiv) does not conflict with ACS Catalysis’ prior publication policies, but should be disclosed to the Editor at time of submission.

プレプリント投稿後でもOKですが、Cover LetterなどでEditorには知らせてねというパタンです。同じACS系列でも、JACSとは明確にスタンスが異なることが分かります。これ以外にも、多くの下部ジャーナルで同様のポリシーが採用されています。Supporting Infoとしてプレプリント情報を提供するようにとのジャーナル(Inorg. Chem.など)、そもそも取り扱いが明記されていないジャーナルなどもいくつかあります。

このように、出版社単位ではなく、ジャーナル単位でプレプリントの取扱いが異なっていることがわかります。

プレプリント投稿時のあるある?

こうしてみると、たとえば以下のケースなんかが「あるある」として想定できるのではないでしょうか。

Nature Chemに出すと決めた!

早く成果共有したいからプレプリント投稿

Nature Chemに投稿した・・・が不幸にもリジェクト

じゃあ次はJACSACIEに投稿・・・できないじゃん!!

考え無しにプレプリント投稿してしまうと痛い目を見かねない事例として、ゆめゆめご注意を・・・。

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cosine

cosine

博士(薬学)。Chem-Station副代表。現在国立大学教員として勤務中。専門は有機合成化学、主に触媒開発研究。 関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。 素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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