[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

ビジネスが科学を待っている ー「バイオ」と「脱炭素」ー

[スポンサーリンク]

ケムステをご覧のみなさんは、それぞれの立場から「化学」、ひいては「科学」を楽しんでいらっしゃる方々だと思います。

単純な知的好奇心から楽しんでいらっしゃる方もおられるでしょう。「もっと世の中を便利にしたいんだ!」という社会貢献の精神や、「ワタシのアイディアで世界を変えてやる!」という野心、また、「教授になりたい!」という社会的名声を求めることも、「科学」の手続きがしっかりしていて生み出すものが「良きこと」であれば、私は決して悪い動機ではないと思っています。いずれにしても、「個人」のレベルでは各々が各々の駆動力になるものに導かれて、科学を遂行していると思います。

では一方、「社会」はなぜ「科学」を必要としているのでしょうか?

そもそも「必要としているのか?」という疑問を持たれたりするかもしれませんが、私がこのようなことを問うているのは、ユヴァル・ノア・ハラリ氏の著作「サピエンス全史」に完全に感化を受けてしまっているからです(汗)。経済素人の私が本著作から得た理解では、この問に対する答は「資本主義が継続的に運営されるためには常に新しい価値の創造が必要であり、その価値の創造は科学により成されるから」と理解しています。(したがって、この問の前提として「社会」が資本主義で運営されている、という前提が必要。)なお、本著作は巷でかなり話題になっているので読まれた方も多いかと思います。ここで紹介した資本主義云々という内容だけではなく、自然科学史を概観する意味でも面白い著作だと思っているので、未読でかつご興味がある方にはとてもおススメです。

本論に戻りますと、繰り返しになりますが、資本主義社会に住んでいる限りにおいては、社会は科学から生まれる技術に社会実装・事業化を求めている、と言うことができると思います。

そこで今回は、特に喫緊に科学技術の社会実装や事業化されることが求められていると私が思う2つのテーマについて、皆さんのご意見を伺えればと思っています。なお、誤解を避けるために一言添えますと、社会実装・事業化に至るまでの時間的スケールは科学・技術の内容に依存すると思います。ですので、社会実装・事業化に直結しないいわゆる「基礎研究」による知の創造が必要であることは、資本主義社会も理解しているものと考えています。

「バイオビジネス」

人によっては「なにを今さら。。。」感を持つ方もいらっしゃるでしょう。バイオテクノロジーを様々な分野へ応用する動きは、今に始まった話ではありません。しかし、「バイオ」には様々なフロンティアがあり、今も継続的に新しい技術が開発されていることについては、みなさんに同意いただけると思います。日本でも「技術」の面で言えば、京大・山中先生のiPS細胞技術に代表されるように世界の先頭を走っている分野も多くあるように見受けられます。しかし、これがこと「ビジネス」となった瞬間に、私の肌感覚(という曖昧な判断基準で申し訳ないのですが。。。)では、アメリカが圧倒的なプレゼンスを誇っているように感じます。

実は最近、次項でも述べるような環境問題も相まって、IT技術との連携で「バイオ」が次なるステージに向かうのでは?という機運が高まっており(経産省まとめ「バイオテクノロジーが生み出す新たな潮流」参照)、アメリカはもちろん、欧州、中国において「バイオビジネス」に関する国策が策定されていたりします。日本においても、予算規模が小さいのは残念なところですが、遅ればせながら「バイオビジネス」についての促進事業が立ち上がりつつあります。

そこでみなさんにお伺いします。「バイオ」と言ってもその研究のすそ野は広いですが、みなさんが「バイオビジネス」に期待するのはどのような分野での貢献でしょうか?今後の日本のバイオビジネスの展開を見定めるために、アンケート調査させていただければと思います。お時間は5分も掛かりません。下記リンクからご協力いただけたら嬉しいです、よろしくお願いいたします!

バイオビジネスに関するアンケートはこちら

「脱炭素」

昨年末にNHKで「脱炭素革命の衝撃ー激変する世界ビジネスー」というドキュメンタリー番組が放送され、かなりの反響があったようです。このため、「脱炭素」という言葉もある程度市民権を得てきたように思います。念のため申しますと、ここで言う「炭素」とは化石燃料の使用を指します。ですので「脱炭素」とは、化石燃料の使用をやめて大気中の二酸化炭素濃度の上昇を早期に食い止める、そして地球温暖化を極力抑止する、ということを意味します。

とは言え、現代社会の豊かさは化石燃料に大きく依存しているわけですから、この豊かさを維持しながら「脱炭素」を実現するためには、化石燃料により供給されているものを何か別の形で供給する必要があります。この「必要」を満たすのが「新たな科学技術」なわけですが、それは化石燃料を代替していくのと同時に、「新しい価値」として資本主義社会のビジネスターゲットとして成立するようになっていくわけです。先のNHKの番組名に「脱炭素」と言う言うなれば倫理的単語とともに、「ビジネス」というある意味では野卑な言葉が並ぶのにはそう言った関係があります。

この分野においては、欧州が先導的な役割を果たしている感がありますが、アメリカも連邦政府はともかく州政府によっては積極的に取り組んでいますし、中国もその政治体制の機動性を活かして現在では環境ビジネスへの積極的な投資を行なっているようです。残念ながら今のところ日本のプレゼンスは低く、COP23では不名誉な「化石賞」なるものを受賞してしまいましたが、これまでの日本の技術の底力を活かしてビジネスの上でも巻き返しを期待したいところです。
いずれにしても、「脱炭素」には新たな科学技術の開発が不可欠です。一方、化石燃料由来のモノ・サービスはあまりにも普遍的で、いざそれを新技術由来のものに代替するとなると、我々市民の理解や金銭的な負荷を要求するかもしれません。そこで、「脱炭素」についてみなさんの考え方をお伺いしたく、こちらもアンケートを作成致してみました。下記リンクからご協力頂けると幸いです。よろしくお願いいたします。

脱炭素に関するアンケートはこちら

いずれのアンケートもあえて、化学でなく科学分野の注目キーワードとしています。これらに深く関わる方の意見ではなく、他分野の研究者・学生に答えていただきたいからです。なお有効な回答数が得られた場合、この場で結果をお知らせするとともに、両者に関してもう少し深く述べたいと思いますので、ぜひともご協力をお願い致します!(記事の内容により誘導を与えないように必要最小限の情報しか書いておらず申し訳ございません)。

Arlequin

投稿者の記事一覧

化学は生物の文法である。と、勇んで始めた発酵研究。文法だけでは物語は書けないのであった。。。昔も含めてその他研究分野は、医薬化学、糖鎖化学、酵素化学、夏目漱石。良き物語を書きたいものです。

関連記事

  1. 高速エバポレーションシステムを使ってみた:バイオタージ「V-10…
  2. 今冬注目の有機化学書籍3本!
  3. 化学研究ライフハック :RSSリーダーで新着情報をチェック!20…
  4. ハウアミンAのラージスケール合成
  5. 有機合成化学協会誌2023年5月号:特集号「日本の誇るハロゲン資…
  6. ちょっとキレイにサンプル撮影
  7. アメリカで Ph.D. を取る –エッセイを書くの巻– (前編)…
  8. 林 雄二郎博士に聞く ポットエコノミーの化学

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 三菱ケミカル「レイヨン」買収へ
  2. 分子の聖杯カリックスアレーンが生命へとつながる
  3. うっかりドーピングの化学 -禁止薬物と該当医薬品-
  4. ケムステしごと企業まとめ
  5. NHC銅錯体の塩基を使わない直接的合成
  6. ロバート・ノールズ Robert R. Knowles
  7. ワインレブアミドを用いたトリフルオロメチルケトン類の合成
  8. 「アニオン–π触媒の開発」–ジュネーブ大学・Matile研より
  9. クレイグ・ヴェンター J. Craig Venter
  10. JEOL RESONANCE「UltraCOOL プローブ」: 極低温で感度MAX! ②

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2018年2月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728  

注目情報

最新記事

超塩基に匹敵する強塩基性をもつチタン酸バリウム酸窒化物の合成

第604回のスポットライトリサーチは、東京工業大学 元素戦略MDX研究センターの宮﨑 雅義(みやざぎ…

ニキビ治療薬の成分が発がん性物質に変化?検査会社が注意喚起

2024年3月7日、ブルームバーグ・ニュース及び Yahoo! ニュースに以下の…

ガラスのように透明で曲げられるエアロゲル ―高性能透明断熱材として期待―

第603回のスポットライトリサーチは、ティエムファクトリ株式会社の上岡 良太(うえおか りょうた)さ…

有機合成化学協会誌2024年3月号:遠隔位電子チューニング・含窒素芳香族化合物・ジベンゾクリセン・ロタキサン・近赤外光材料

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年3月号がオンライン公開されています。…

日本化学会 第104春季年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part3

日本化学会年会の付設展示会に出展する企業とのコラボです。第一弾・第二弾につづいて…

ペロブスカイト太陽電池の学理と技術: カーボンニュートラルを担う国産グリーンテクノロジー (CSJカレントレビュー: 48)

(さらに…)…

日本化学会 第104春季年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part2

前回の第一弾に続いて第二弾。日本化学会年会の付設展示会に出展する企業との…

CIPイノベーション共創プログラム「世界に躍進する創薬・バイオベンチャーの新たな戦略」

日本化学会第104春季年会(2024)で開催されるシンポジウムの一つに、CIPセッション「世界に躍進…

日本化学会 第104春季年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part1

今年も始まりました日本化学会春季年会。対面で復活して2年めですね。今年は…

マテリアルズ・インフォマティクスの推進成功事例 -なぜあの企業は最短でMI推進を成功させたのか?-

開催日:2024/03/21 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足の影…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP