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有機合成化学協会誌2023年4月号:ビニルボロン酸・動的キラル高分子触媒・ホスホニウムイリド・マイクロ波特異効果・モレキュラーシーブ

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有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2023年4月号がオンライン公開されています。(すいません筆者の落ち度で遅くなりました)

新年度が始まりましたね!研究室も非常に賑やかで、嬉しい限りです。5月の連休前に、有機合成化学協会誌の輪読はいかがでしょうか。

有機合成化学協会誌は今月号も充実の内容です。

キーワードは、ビニルボロン酸・動的キラル高分子触媒・ホスホニウムイリド・マイクロ波特異効果・モレキュラーシーブです。

今回も、会員の方ならばそれぞれの画像をクリックすればJ-STAGEを通してすべてを閲覧することが可能です。

巻頭言:「道」に縛られない自由を 

今月号の巻頭言は、大阪大学大学院工学研究科 櫻井英博 教授による寄稿記事です。
深く刺さる内容であり、何度も首肯しながら読んでしまいました。自分の研究を見つめ直す良いきっかけになりました。みなさん必読です。

追悼:岸義人先生を偲んで 

今月号は追悼記事があります。2023年1月9日にご逝去された、岸 義人 先生の追悼記事です。理化学研究所名誉研究員の中田 忠先生による寄稿記事です。
岸先生は誰もが知るレジェンド化学者ですが、多くのお弟子の先生方に尊敬され、愛される先生であったことが非常によく伝わります。
ご冥福をお祈りいたします。

ビニルボロン酸誘導体の連鎖重合化学:ホウ素を活かすモノマー設計と側鎖置換による重合後変換

西川 剛*大内 誠*

*京都大学大学院工学研究科高分子化学専攻

ホウ素」を活かす高分子化学:高分子の合成だけでなく、高分子の変換にも焦点が当てられており有機合成化学協会誌の読者が興味をもつ内容です。「着想の経緯」などが記された分かりやすいイントロダクションは学生読者の興味をひくだけでなく、理解を大いに助けると思われます。

ボロニル基での重合後修飾に基づいた動的キラル高分子触媒の創製

山本武司*、良永裕佳子、杉野目道紀

*2021年度有機合成化学奨励賞

*京都大学大学院工学研究科

本総合論文では動的立体化学挙動を示すキラルらせん高分子の特性を活用した不斉触媒の開発と応用に関する研究成果が報告されています.その最大の魅力は「一つの触媒で目的物の両エナンチオマーをどちらも高エナンチオ選択的に合成できる」ことにあります.動的キラリティーの潜在的な有用性が具現化された好例であり,不斉合成化学,高分子化学,超分子化学の融合研究としても興味深い内容です.

多機能な分子性触媒を志向したホスホニウムイリドの創製

戸田泰徳、菅 博幸

*信州大学工学部物質化学科

本論文では、ホスホニウムイリドやその誘導体を合成中間体としてではなく、分子性触媒として利用した興味深い研究について紹介されている。 

マイクロ波特異効果はあるのか?有機合成反応における実験的検証

山田 徹*

*慶應義塾大学理工学部化学科

マイクロ波照射による反応の加速効果は、反応系内部の迅速加熱による熱的効果であるという解釈が一般的であり、それ以外の「マイクロ波特異効果」は否定されてきた。しかし、近年、「マイクロ波特異効果」の存在を示す実験結果が合成化学分野において再び脚光を浴びている。本論文は、緻密な実験条件と速度論的解釈に基づいて「マイクロ波特異効果」を実証しており、一読をお薦めする。

モレキュラーシーブの新たな使用法

安川知宏、久田智也、中島華子、増田隆介、北之園 拓、山下恭弘、小林 修*

*東京大学大学院理学系研究科化学専攻

あなたの知っているようで知らないモレキュラーシーブス(MS)の世界― 酸なのか、塩基なのか。MS3A、MS4A、MS5Aとは何か?それすらあやふやな人は多いはず。東京大学 小林 修 先生らによる、有機合成素人も玄人も必読のご一稿です。

Review de Debut

今月号のReview de Debutは1件です。オープンアクセスですのでぜひ。

有機合成におけるホスホラニルラジカルの利用 (神戸大学大学教育推進機構教養教育院)薮田達志

Messege from Young Principal Reseacher(MyPR):有機金属化学に魅せられて 

今月号のMyPRは、京都工芸繊維大学分子化学系 大村智通 教授による寄稿記事です。
村上先生のエピソードや謝辞の件など、感動で泣けました。みなさん、オープンアクセスですので必読です!!

ラウンジ:計画的偶発性マインドがもたらした研究キャリア

今月号のラウンジは、産業技術総合研究所 生長幸之助 研究チーム長による寄稿記事です。
全て読ませていただきましたが、これは歴史的大作と感じました。内容が示唆に富むのはもちろんですが、計画的偶発性理論とはなんぞやということに関しても詳しく解説されており、一冊の本を読んだ気分です。みなさまぜひ。

感動の瞬間:ポルフィセンに魅せられて:有機化学からタンパク質機能改変へ 

今月号の感動の瞬間は、大阪大学大学院工学研究科 林 高史 教授による寄稿記事です。
「良い分子 を見つけることとその分子の良さを信じて徹底的に付き合うことで,いくつかの感動の瞬間を研究仲間と享受することができた」
この文章に深く感銘を受けました。私も分子と徹底的に付き合いたいと思います。

これまでの紹介記事は有機合成化学協会誌 紹介記事シリーズを参照してください。

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博士(理学)。大学教員。娘の育児に奮闘しつつも、分子の世界に思いを馳せる日々。

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