[スポンサーリンク]

ケムステしごと

ダイセルが開発した新しいカラム: DCpak PTZ

[スポンサーリンク]

ダイセルといえば「キラルカラムの雄」として知られており、光学活性化合物を分離するキラルカラム「CHIRALPAK」の販売は世界でトップシェアを誇っています。有機合成化学の研究室でキラル化合物を選択的に得る、「不斉合成反応開発」を行っていれば、まず間違いなく1本はこのキラルカラムをお持ちでしょう。昔は溶媒耐性がなくiPrOH/Hexane系でしか使えなかったカラム。いまでは多溶媒系で利用する耐溶剤型キラルカラムが主流です。さらに、粒子径を細かくすることによりスループットの向上に成功、つまり光学活性化合物の分離技術は格段に向上しています。

キラルカラム「CHIRALPAK」

さて最近そんなダイセルが昨年9月より新しいカラムを発売したのです。どんなキラルカラムなのか?といいたいところですが、実は、今回はキラルカラムではないんです。

その名もDCpak PTZ

親水性をもつ化合物に対して高い保持能力を誇るアキラルカラムです。今回はこの新カラムをみなさんに紹介しましょう。

ダイセルがアキラルカラム?

上述したようにダイセル=キラルカラムのイメージが強く、光学活性でない化合物(アキラル化合物)を分離するアキラルカラムを発売しているとは知りませんでした。しかし、充填剤(固定相)やカラム作成技術に関しては世界トップレベルですので、キラルカラムに特化している理由はないのかもしれません。現在、今回紹介する「DCpak PTZ」に加え3種類のアキラルカラムを発売しています。

しかし、ホームページのアキラルカラムの紹介をみると、「*本製品はキラルカラムではございません」の赤文字が(苦笑)。構造をみればあきらかですが、みなさんやっぱり同じイメージをもっているらしいです。

ダイセルアキラルカラム一例(出典:ダイセルCPIカンパニーHPより)

 

主にSFC(超臨界流体を移動層とするカラム)としても使えるアキラルカラムを販売しているしているようです。では今回の新製品もSFC用アキラルカラムなのでしょうか。答えは☓で、今回はHILIC(ヒリック)カラムです。

HILICカラムとは

HILICは親水性相互作用クロマトグラフィー(Hydrophilic Interaction Chromatography)の略称で、順相モードの一つ。とはいえどいわゆるiPrOH/Hexaneなど低極性の有機溶媒に適したものではなく、高極性の有機溶媒と水をあわせた高極性化合物に適したクロマトグラフィーです。通常の順送条件では溶解せず、逆相条件では極性が高すぎてすぐに排出されてしまう(保持時間が短い)化合物に使われます。

化合物の例をいえば、無保護の糖や核酸誘導体、アミノ酸、ペプチドなどですね。このへんの化合物の取扱が近年増えていることから、HILICカラムの活用を目指した新規カラムの開発が進んでいます。

古典的には、固定相として酸性の未修飾シリカが知られています。また中性の固定相として、スルホベタイン、ジオール、アミド、そして塩基性のものとしてトリアゾール部位など極性の高い親水性基をもつものが開発されています。

HILICカラムの固定相(資料提供:ダイセルCPIカンパニー

 

「DCpak PTZ」カラムの特徴

さて、今回の「DCpak PTZ」はこの固定相の中身に「テトラゾール」という有機基を使っています。テトラゾールのNHはカルボン酸と同じ程度の酸性度をもち、カルボン酸の生物学的等価体として知られているものです。これが、既存製品と比較して、親水性化合物に対して大きな保持・選択性を示すというわけです。

PTZカラムの構造と特徴

 

ではどのくらい違うのでしょうか?親水性相互作用標準保持係数k’[1]という評価方法で、化合物の保持力を定量化しています。今回は親水性が高い化合物ウリジン(Uridine)を使って評価しているので、k'(U)という値になります。

以下のグラフをみてとおり、k'(U)に関しては、他社のHILICカラムに比べてk'(U)が大変大きく、親水性相互作用による保持が高いことがわかります。今回示していませんが、その他化合物のk’も比較的高く、保持だけでなく分子認識にも優れているようです。

特性評価結果(資料提供:ダイセルCPIカンパニー

実際に高極性化合物を分離してみる

では、実際の分離例を一部示します。まず、6つの単糖の分離をみてみました条件は下の図のとおりです。高い水溶性組成の移動条件においてもPTZカラムでは単糖類を強く保持できていることがわかります。

単糖類の分離(資料提供:ダイセルCPIカンパニー

 

もうひとつは、核酸塩基・ヌクレオチド。抗ウィルス活性や抗癌活性をもつことで知られるウリジン誘導体の分析でもPTカラムではよい分離を得ることができています。

核酸塩基・ヌクレオチドの分離(資料提供:ダイセルCPIカンパニー

 

アミノ酸等でも、塩基性のアミノ酸以外は、きれいに分離されて溶出されるそうです。一方で、塩基性を示す、arginineやlysine, Histidineは酸性のテトラゾールとのイオン性相互作用によって、溶出しないとのこと。

まとめ

以上簡単にダイセルから新発売されたPTZカラムについて紹介しました。高極性化合物の分離に困っているところは利用してみてはいかがでしょうか。そういう我が研究室もかなり困っていたので、デモカラムを借りて試しまして、まずまずの結果をうけています。ただし、いまのところ分取用は発売されていないようなので、化合物の分取は少量になってしまいます。需要があれば、分取用も発売されるようなので期待したいところです。詳しいお問い合わせやデモの依頼は以下を参照。

株式会社ダイセル CPIカンパニー 開発営業部

お問い合わせフォームはこちら

・キラルヘルプデスク(受付時間 平日 9:30~ 17:00) 0120-780-104
・東日本(受付時間 平日 9:30~ 17:00) 03-6711-8222
・西日本(受付時間 平日 9:30~ 17:00) 06-6342-6161

謝辞:デモカラムおよび資料を提供いただいたダイセルCPIカンパニーにこの場を借りて御礼申し上げます。

参考文献

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. シアノヒドリンをカルボン酸アミドで触媒的に水和する
  2. 高分子材料におけるマテリアルズ・インフォマティクスの活用とは?
  3. 第12回慶應有機化学若手シンポジウム
  4. 公募開始!2020 CAS Future Leaders プログ…
  5. 革新的なオンライン会場!「第53回若手ペプチド夏の勉強会」参加体…
  6. 複雑化合物合成にも適用可能なC-H酸化反応
  7. 複雑にインターロックした自己集合体の形成機構の解明
  8. ゲノム編集CRISPRに新たな進歩!トランスポゾンを用いた遺伝子…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 支局長からの手紙:科学と感受性 /京都
  2. ライマー・チーマン反応 Reimer-Tiemann Reaction
  3. 気になるあの会社~東京エレクトロン~
  4. 第3のエネルギー伝達手段(MTT)により化学プラントのデザインを革新する
  5. ポヴァロフ反応 Povarov Reaction
  6. 野依記念物質科学研究館
  7. 第36回「光で羽ばたく分子を活かした新技術の創出」齊藤尚平 准教授
  8. 二元貴金属酸化物触媒によるC–H活性化: 分子状酸素を酸化剤とするアレーンとカルボン酸の酸化的カップリング
  9. 第31回光学活性化合物シンポジウム
  10. 武田オレフィン合成 Takeda Olefination

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2019年1月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  

注目情報

最新記事

フィーゼルマン チオフェン合成/Fiesselmann Thiophene Synthesis

概要フィーゼルマン チオフェン合成(Fiesselmann Thiophene Synthesi…

“とび跳ねる水滴”に潜む物理 〜接触時間とエネルギー源で読む撥水・防氷のテク〜

熱したフライパンに落ちた水滴が、玉になってコロコロと走り回り、冷えた面では、結露水が合体した瞬間に跳…

AI時代に研究者がすでに持っている力・これから伸ばしたい力

論文要約や文献検索など、研究現場でもAI活用が日常化する一方、「自分の仕事の先行き」に漠然とした不安…

miHub®を活用した探索的データ解析の実践

開催概要研究開発においてデータ活用が進む中、機械学習モデルの構築や予測解析に…

“ある特効薬”のはなし ~本田宗一郎氏の回想から

Tshozoです。最近実家に戻っては色々と廃棄するなどの店じまいを少しずつ進めているのですが、中…

高分子鎖を束ねた新しい共重合体「束状共重合体」が誕生

第715回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院 工学系研究科(植村研究室)に所属されていた亀谷…

2026年「有機溶媒危機」へのアンサー。北大発・メカノクロスが挑む、溶媒に依存しない新たな合成法 = “メカノケミカル有機合成”の社会実装

株式会社メカノクロスは、メカノケミカル有機合成技術の社会実装に挑む北海道大学発の…

“壊れないよう” に作ってきた半導体ポリマーを、あえて “壊れるよう” に作る化学

半導体ポリマーは長いあいだ、「いかに壊れにくく、長持ちさせるか」といったような安定性を競って進歩して…

有機合成化学協会誌2026年7月号:固体高分子電解質・電子ドナー・アクセプター錯体・機械学習法・trichodermamide類・エナンチオ選択的スキップジエン合成法

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2026年7月号がオンラインで公開されています。…

第62回Vシンポ「見えない空気を科学する~センサによる室内環境・臭気の見える化と快適空間デザインの最前線~」を開催します!

こんにちは、Macyです。第62回Vシンポのご案内をさせていただきます。今回は、前回同様…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP