[スポンサーリンク]

chemglossary

エレクトロクロミズム Electrochromism

[スポンサーリンク]

クロミズム (Chromism)の一種であるエレクトロクロミズム(Electrochromism)は、電気によって色が変わる現象を指す。ボーイング787の窓が有名な例である

原理

有機化合物、無機化合物どちらにもエレクトロクロミズムを示す物質は存在し、有機化合物の場合は、電圧を印加すると分子が酸化・還元反応や、ラジカル状態になることで色が変わる。無機化合物の場合にも、酸化・還元反応で色が変化する。多くの場合材料を薄膜にした後、電圧をかけることで色の変化を観察する。

代表的なものは酸化タングステンであり、WOの状態では無色だが、カチオンが膜中に加えられると青色に変化する。有機化合物の場合は、構造の変化により発色状態時の色を変化させることができるが、電気により分解しやすく繰り返し特性に弱いことが多い。無機化合物の場合には、色が材料によってほぼ決まっていて、実用上使いにくい色を発色する材料も多いが、繰り返し特性には強い。

図3

有機化合物のエレクトロクロミズムの例

酸化タングステンのエレクトロクロミズムの例

応用例

エレクトロクロミズムを利用した応用例として調光窓が挙げられる。この調光窓を有名にしたのが、ボーイング787 ドリームライナーの窓への採用である。ボーイング787の窓にはシェードがなく、その代わりに窓下部にボタンがある。それを押すことで窓の濃淡が透明から濃い青色の5段階に変化させることができる。

この窓を作ったのは、GENTEXというアメリカの会社である。GENTEXは自動防眩ミラーのパイオニアで、ミラーには古くからエレクトロクロミズムを応用しているため、その技術を窓に応用した考えられる。同社HPでは、航空機用電子カーテンと呼んでいて透明から青色に変化することから酸化タングステンが使われていると考えられる。

建築用の窓にも応用され始めていて京都にあるフランス国立極東学院には、フランスのガラスメーカー、サンゴバン社の日射調整ガラス”SAGE”が使われている。

窓ガラスのみで日射を遮ったり取り入れたりすることができる調光窓は、空調の省エネに貢献できると考えられ、様々な場所で使われていくと考えられる。技術としても色の変化速度や耐久性などの問題は残っているため、今後もこのエレクトロクロミズムに関する研究が盛んに行われると予測できる。

関連書籍

[amazonjs asin=”4882310945″ locale=”JP” title=”クロミック材料の開発 (CMC books)”][amazonjs asin=”4882315025″ locale=”JP” title=”新規クロミック材料の設計・機能・応用 (新材料シリーズ)”]

関連リンク

Avatar photo

Zeolinite

投稿者の記事一覧

ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

関連記事

  1. 分子糊 モレキュラーグルー (Molecular Glue)
  2. 蛍光異方性 Fluorescence Anisotropy
  3. スナップタグ SNAP-tag
  4. 酵素触媒反応の生成速度を考えるー阻害剤入りー
  5. 酵素触媒反応の生成速度を考える―ミカエリス・メンテン機構―
  6. 重水素 (Deuterium)
  7. 特殊ペプチド Specialty Peptide
  8. アゾ化合物シストランス光異性化

注目情報

ピックアップ記事

  1. ケック マクロラクトン化 Keck Macrolactonization
  2. 光で分子の結合状態を変えることに成功
  3. 薬学会一般シンポジウム『異分野融合で切り込む!膜タンパク質の世界』
  4. Igor Larrosa イゴール・ラロッサ
  5. 化学探偵Mr.キュリー7
  6. 大川原化工機株式会社のはなし
  7. マテリアルズ・インフォマティクスにおける従来の実験計画法とベイズ最適化の比較
  8. 界面活性剤 / surface-active agent, surfactant
  9. 化合物太陽電池の開発・作製プロセスと 市場展開の可能性【終了】
  10. 固有のキラリティーを生むカリックス[4]アレーン合成法の開発

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2016年12月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  

注目情報

最新記事

7th Compound Challengeが開催されます!【エントリー〆切:2026年03月02日】 集え、”腕に覚えあり”の合成化学者!!

メルク株式会社より全世界の合成化学者と競い合うイベント、7th Compound Challenge…

乙卯研究所【急募】 有機合成化学分野(研究テーマは自由)の研究員募集

乙卯研究所とは乙卯研究所は、1915年の設立以来、広く薬学の研究を行うことを主要事業とし、その研…

大森 建 Ken OHMORI

大森 建(おおもり けん, 1969年 02月 12日–)は、日本の有機合成化学者。東京科学大学(I…

西川俊夫 Toshio NISHIKAWA

西川俊夫(にしかわ としお、1962年6月1日-)は、日本の有機化学者である。名古屋大学大学院生命農…

市川聡 Satoshi ICHIKAWA

市川 聡(Satoshi Ichikawa, 1971年9月28日-)は、日本の有機化学者・創薬化学…

非侵襲で使えるpH計で水溶液中のpHを測ってみた!

今回は、知っているようで知らない、なんとなく分かっているようで実は測定が難しい pH計(pHセンサー…

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

圧力に依存して還元反応が進行!~シクロファン構造を活用した新機能~

第686回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機化学第一研究室(鈴木孝…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP