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有機合成化学協会誌2022年4月号:硫黄置換基・デヒドロアミノ酸・立体発散的スキップジエン合成法・C-H活性化・sp3原子含有ベンゾアザ/オキササイクル

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有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2022年4月号がオンライン公開されました。

新年度が始まりましたね。新人の研究者研修にも、有機合成化学協会誌を使いましょう!

今月号も充実の内容です。

キーワードは、硫黄置換基・デヒドロアミノ酸・立体発散的スキップジエン合成法・C-H活性化・sp3原子含有ベンゾアザ/オキササイクルです。

今回も、会員の方ならばそれぞれの画像をクリックすればJ-STAGEを通してすべてを閲覧することが可能です。

巻頭言:新型コロナとニューモダリティー時代の有機合成化学

今月号の巻頭言は、東北大学大学院薬学研究科 徳山 英利 教授の寄稿記事です。有機合成化学者のモチベーションを大きく上げる内容だと思います。必読です。 

金属触媒を用いた不飽和炭素-炭素結合への硫黄置換基の導入

 

谷口暢一1*、北山健司2

*大阪府立大学高等教育推進機構化学分野

株式会社ダイセルバイオマスイノベーションセンター

金属触媒単独、もしくはBrønsted acidとの組み合わせによって、チオールからの反応活性種(チオラートアニオンやチイルラジカル)の発生を制御することができます。これにより、不飽和炭化水素へ硫黄置換基を位置選択的に導入することができます。ぜひ、ご一読ください。

デヒドロアミノ酸を基盤とする含窒素生物活性化合物の合成

保野陽子、岡村仁則、品田哲郎*

*大阪市立大学大学院理学研究科物質分子系専

本論文は、デヒドロアミノ酸の立体選択的合成の開発を軸として、その不斉還元を基盤とした生物活性化合物の合成をまとめたものである。筆者独自の反応剤を開発することで、これまで困難とされていたE-またb,b-二置換デヒドロアミノ酸の高立体選択的な合成に成功している。また、デヒドロアミノ酸の不斉還元条件を巧みに利用することで、様々な非天然型アミノ酸を含む生物活性化合物の合成を達成しており、反応開発から繋がる合成研究の醍醐味を味わうことのできる秀逸な総合論文である。ぜひ、ご一読ください。

立体発散的スキップジエン合成法の開発とマダンガミン類の網羅的全合成

佐藤隆章*

*慶應義塾大学理工学部応用化学科

スキップジエン構造は、2つのオレフィンの間にsp3炭素が存在するため、共役ジエン構造に比べ格段に合成が難しい。本総合論文では、立体発散的なスキップジエン構築法の開発と、最も複雑なスキップジエン天然物の1つであるマダンガミン類の網羅的全合成をいかに達成したか、詳しく紹介している。

C-H活性化反応の新規触媒系の開発と医薬品合成への応用

関 雅彦*

*株式会社トクヤマ・マーケティンググループ

本総合論文では、医薬品合成を志向した芳香環のC-H官能基化反応の新規触媒系の開発についてまとめられております。従来問題であった再現性の改善や、反応性の低い基質への適応範囲の拡大、メカニズムについても述べられており、医薬品、及びその中間体への応用についても紹介されています。

骨格多様性指向型合成戦略に基づくsp3原子含有ベンゾアザ/オキササイクルおよびペプチドミメティクスの効率的合成手法の開発

増井 悠*、高橋孝志

*名古屋大学大学院創薬科学研究科基盤創薬学専攻プロセス化学分野

低分子化合物を対象とした創薬研究において、ヘテロ環は古くから重要な骨格として利用されており、その効率的合成法の開発は非常に重要である。本稿は、非平面性を重視した、含窒素または含酸素ヘテロ環骨格の効率的合成法について述べられたものである。創薬研究で多用されるヘテロ環のワンポット合成や自動合成への応用など、探索とプロセスを意識した合成研究が十分に述べられています。ぜひ、ご一読ください。

Review de Debut

今月号のReview de Debutは1件です。オープンアクセスです。

Late-stage functionalizationを志向した芳香族C-H結合の直接的酸素化 (東北大学大学院薬学研究科)長澤翔太

MyPR:好きこそものの上手なれ 

石川 勇人 教授 (千葉大学)

今月号のMy PRは、千葉大学大学院薬学研究院の 石川 勇人 教授の寄稿記事です。石川先生の話は、筆者も学生時に代表からたくさん聞いており、勝手にとても憧れていました。
好きこそものの上手なれということももちろんとても大事ですが、個人的には石川先生がどれほどに努力され、手を動かし頭を使い、情熱を燃やし続けて来られたかということにも注目しながら本記事を読んでほしいと思います。

感動の瞬間:再現性がなければサイエンスではない

今月号の感動の瞬間は、大阪大学産業科学研究所の笹井 宏明 名誉教授による寄稿記事です。
実験を「謎解き」と捉え、楽しんで苦境を乗り越える姿勢から学ぶことがたくさんあります。研究を始めたばかりのひと、必見です。

これまでの紹介記事は有機合成化学協会誌 紹介記事シリーズを参照してください。

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博士(理学)。大学教員。娘の育児に奮闘しつつも、分子の世界に思いを馳せる日々。

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