[スポンサーリンク]

ケムステニュース

旭化成ファインケム、新規キラルリガンド「CBHA」の工業化技術を確立し試薬を販売

[スポンサーリンク]

 旭化成ケミカルズ(本社:東京都千代田区 社長:藤原 健嗣)の100%出資子会社である旭化成ファインケム株式会社(本社:大阪市西淀川区 社長:森山 直樹)は、医薬品の副作用抑制等に効果のある光学活性体の開発・製造用不斉酸化触媒に用いられる、新規キラルリガンド(触媒配位子)「キラルビスヒドロキサム酸リガンド『CBHA』」の工業化技術を世界で初めて確立し、7月9日(月)から試薬販売しますのでお知らせします。
「CBHA」は、医薬品開発・製造時に従来の不斉酸化用リガンドでは、使えなかったり、低い光学純度しか得られなかった領域に用いることで、高い光学純度が得られます。また、酸化反応を行う際の安全性の大幅な改善、製造プロセスの簡略化も期待されます。
当社は、試薬の販売を開始するとともに、さらに本技術を用いて光学活性医薬中間体の製造受託も行ってまいります(引用:日経プレスリリース)。

 

このCBHAはシカゴ大学山本尚教授らによるもので、不斉触媒酸化反応用の配位子です。不斉触媒酸化反応、特に、二重結合を光学活性なエポキシドに変換する反応(図参照)といえば、野依教授らとともに2001年のノーベル化学賞を受賞した、K.B. Sharpless教授が開発したSharpless-香月エポキシ化反応が有名です。

 

 ただし、実はこの反応、アリルアルコール(図参照)でないと、反応が進まないだけでなく高い光学純度のエポキシドが得られないのです。もちろん反応基質にもよりますが、E-アリルアルコールに関してはほぼ完璧な光学純度で目的物が得られますが、Z-アリルアルコールやホモアリルアルコール(アリルアルコールよりももうひとつ炭素が離れた反応)においてはかなりエナンチオ選択性(右手と左手の関係の化合物のどちらを選ぶかという選択性)が下がってしまいます(詳しいことはここでは述べません)。さらに、この反応水分をかなり嫌い、さらに温度管理もしっかりしなくてはいけません。いくらノーベル化学賞を受賞した触媒といってもオールマイティではないのです。

 

そのため不斉エポキシ化反応はいまだに多くの研究者によって研究がなされています。

 

山本教授もその一人で、数年前よりビスヒドロキサム酸リガンドを用いた不斉酸化反応を研究していました。非常によい結果であったものの、やはり多くはアリルアルコールを用いる点やエナンチオ選択性が若干低いなどの理由でシャープレス教授のものに若干劣っていました。

 

今回、不斉酸化反応において、新規なビスヒドロキサム酸リガンドと、バナジウム錯体により調製された不斉触媒を用いると、ホモアリルアルコールはもとより、Z-アリルアルコールにおいても高いエナンチオ選択性を実現することに成功し、さらに完全な禁水条件、高度な温度管理を必要とせず、目的の光学活性なエポキシドを合成することに成功しました[1]

 

今回の改良点は図のRの部位に今までよりもさらにかさ高い官能基を導入したこと。なぜこれまで試みなかったのかということは若干不思議ですが、それによって、汎用性の高い不斉触媒を開発することができ、工業化に成功したというわけです。また、使われているバナジウム錯体も一見変わっており、通常エポキシ化ではVO(acac)2錯体が有名ですが、この反応ではVO(OiPr)3錯体が使われています。空気に若干不安定ですが、acac錯体よりも反応性が高く、私も使ったことがありましたが、このおかげで鍵反応がブレイクスルーしました。

話はずれましたが、山本教授、シカゴに行っても本当に活躍しておりますね。すばらしい結果だと思います。

 

関連文献

[1] “Vanadium-Catalyzed Asymmetric Epoxidation of Homoallylic Alcohols”

Zhang, W.; Yamamoto, H. J. Am. Chem. Soc.2007,129, 286. DOI:10.1021/ja067495y

ja067495yn00001.gif

New chiral bishydroxamic acids were synthesized and tested as chiral ligands in the vanadium-catalyzed asymmetric epoxidation of homoallylic alcohols to provide good yields and high enantioselectivities.

外部リンク

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. トムソン・ロイター:2009年ノーベル賞の有力候補者を発表
  2. 身近な食品添加物の組み合わせが砂漠の水不足を解決するかもしれない…
  3. ナノチューブブラシ!?
  4. 凸版印刷、有機ELパネル開発
  5. シュプリンガー・ネイチャー・グループが学問の継続のために経済的な…
  6. のむ発毛薬の輸入承認 国内初、年内にも発売へ
  7. カクテルにインスパイアされた男性向け避妊法が開発される
  8. トムソン・ロイターのIP & Science事業売却へ…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 友岡 克彦 Katsuhiko Tomooka
  2. 取扱いが容易なトリフルオロアセチル化試薬
  3. パリック・デーリング酸化 Parikh-Doering Oxidation
  4. 来年は世界化学年:2011年は”化学の年”!
  5. 国際化学オリンピック2022日本代表決定/化学グランプリ2022応募始まる
  6. ゴードン会議に参加して:ボストン周辺滞在記 PartI
  7. ジンクピリチオン (zinc pyrithione)
  8. 天然階段状分子の人工合成に成功
  9. 有機化学美術館へようこそ ~分子の世界の造形とドラマ
  10. 第二回触媒科学国際シンポジウム

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2007年7月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

注目情報

最新記事

第43回メディシナルケミストリーシンポジウム@京都

テーマ「創薬化学の新たな潮流 多彩なアプローチで未来を創る」 日時2026年11月11日…

圧力は「設定値」だけで決まらない【プロセス化学者のつぶやき】

前回まで1. 設定温度と系内の実温度のお話2. 温度値をどう判断するか3. 反応操作をし…

査読に AI を使われた体験談

生成 AI の普及は加速しており、調べもの、英文校閲など研究者の皆さんも活用していることと思います。…

フィーゼルマン チオフェン合成/Fiesselmann Thiophene Synthesis

概要フィーゼルマン チオフェン合成(Fiesselmann Thiophene Synthesi…

“とび跳ねる水滴”に潜む物理 〜接触時間とエネルギー源で読む撥水・防氷のテク〜

熱したフライパンに落ちた水滴が、玉になってコロコロと走り回り、冷えた面では、結露水が合体した瞬間に跳…

AI時代に研究者がすでに持っている力・これから伸ばしたい力

論文要約や文献検索など、研究現場でもAI活用が日常化する一方、「自分の仕事の先行き」に漠然とした不安…

miHub®を活用した探索的データ解析の実践

開催概要研究開発においてデータ活用が進む中、機械学習モデルの構築や予測解析に…

“ある特効薬”のはなし ~本田宗一郎氏の回想から

Tshozoです。最近実家に戻っては色々と廃棄するなどの店じまいを少しずつ進めているのですが、中…

高分子鎖を束ねた新しい共重合体「束状共重合体」が誕生

第715回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院 工学系研究科(植村研究室)に所属されていた亀谷…

2026年「有機溶媒危機」へのアンサー。北大発・メカノクロスが挑む、溶媒に依存しない新たな合成法 = “メカノケミカル有機合成”の社会実装

株式会社メカノクロスは、メカノケミカル有機合成技術の社会実装に挑む北海道大学発の…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP