[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第125回―「非線形光伝播の基礎特性と応用」Kalai Saravanamuttu教授

[スポンサーリンク]

第125回の海外化学者インタビューはKalai Saravanamuttu教授です。マクマスター大学化学科に在籍し、光化学媒体における非線形光伝搬の基礎特性と応用について研究しています。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

ポートモレスビーにある高校の先生のおかげで、化学は私にとって大きな魅力となりました。先生方は、物質の性質と変容を支配する分子世界への扉を開いてくれました。化学を仕事にしようと決意したのは、おそらくマギル大学学部生の最終学年の時だったと思います。卒業論文では、光学化学ベンチ、つまり表面増強ラマン分光法に基づいた感度の高いバイオセンサー導波路に取り組んでいました。最初はこのプロジェクトという狭い範囲の中で、その後はより広い文脈の中で、化学を異なる分野をつなぐもの―つまり自然科学の間に位置する解釈法として捉え、研究に対する刺激的かつ創造的なアプローチを切り開いていきました。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

子どもたちの権利、医療、教育を積極的に推進する組織で働くでしょう。人権における科学者の役割と責任は、アメリカ科学振興協会と人権プログラムのようなイニシアチブによって実証されています。この分野でフルタイム労働することで、こういった重要な問題に微力ながらも意味のある持続的な貢献をしたいと考えています。また、このような仕事は、豊かな多様性を持つ人々の生活から学ぶ素晴らしい機会を提供してくれると感じています。

Q. 現在取り組んでいることは何ですか?そしてそれをどう展開させたいですか?

私の研究グループでは、コヒーレント光とインコヒーレント光が光化学反応を受ける媒体を伝搬する際にどのように振る舞うかを研究しています。このようなシステムでは、自己トラップされたビームや光格子、自発的なパターン形成など、様々な非線形な光の伝搬が引き起こされることを発見しています。このような現象は、光信号の伝搬を精密に制御するアクティブフォトニクスデバイスの開発に繋がると期待されています。

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

チャンドラセカール・ヴェンカタ・ラマン卿と食事をしたいです。繊細でありながら強力なラマン効果を解明した一連の出来事の個人的な説明を聞くことができ、また、実験が行われた20世紀初頭という興味深い時代についての彼の視点を知ることができたら、素晴らしいことだと思います。

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

約3週間前、娘が生まれる直前で、すべてが希望に満ち溢れているように見えていた時でした。学部生と一緒に、複数の自己トラップされたレーザービームが重合性ゲルを伝搬する際にどのように振る舞うかを調べました。そこでビームが光重合体を伝搬する際に、ビームが合体したり、周期的に分離したりすることを発見しました。現在、この挙動の根底にあるメカニズムを解明しようとしています。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

すぐさま救出されないと仮定するなら、ニーチェの『道徳の系譜』を選びます。音楽アルバムについては(iPodは禁止されているとして)、ヴェルディのコレクションと、Viswanathan、IlaiyaraajaRahmanといった作曲家たちによる過去60年に渡るタミルポピュラーソングのミックスとで、コイントスをするでしょうか。

Q.「Reactions」でインタビューしてほしい化学者と、その理由を教えてください。

イースト・アングリア大学のDavid L. Andrews教授のを見てみたいです。彼のグループは、量子電気力学に基づいた強力なアプローチを用いて、自分自身と光との分子間相互作用を理解しようとしています。

 

原文:Reactions – Kalai Saravanamuttu

※このインタビューは2009年7月24日に公開されました。

 

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 第103回―「機能性分子をつくる有機金属合成化学」Nichola…
  2. 第14回「らせん」分子の建築家ー八島栄次教授
  3. 第105回―「低配位有機金属錯体を用いる触媒化学」Andrew …
  4. 第35回 生物への応用を志向した新しいナノマテリアル合成― Ma…
  5. 第152回―「PETイメージングに活用可能な高速標識法」Phil…
  6. 第126回―「分子アセンブリによって複雑化合物へとアプローチする…
  7. 第13回 化学を楽しみ、創薬に挑み続ける ―Derek Lowe…
  8. 第119回―「腸内細菌叢の研究と化学プロテオミクス」Aaron …

注目情報

ピックアップ記事

  1. ピナコール転位 Pinacol Rearrangement
  2. 多成分連結反応 Multicomponent Reaction (MCR)
  3. 「サガミオリジナル001」、今月から販売再開 相模ゴム
  4. スタチンのふるさとを訪ねて
  5. アレーン三兄弟をキラルな軸でつなぐ
  6. 東レ工場炎上2人重傷 名古屋
  7. 小松紘一 Koichi Komatsu
  8. 堀場雅夫 Masao Horiba  
  9. アルカロイドの大量生産
  10. サリドマイドが骨髄腫治療薬として米国で承認

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2020年10月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  

注目情報

最新記事

アクリルアミド類のanti-Michael型付加反応の開発ーPd触媒による反応中間体の安定性が鍵―

第622回のスポットライトリサーチは、東京理科大学大学院理学研究科(松田研究室)修士2年の茂呂 諒太…

エントロピーを表す記号はなぜSなのか

Tshozoです。エントロピーの後日談が8年経っても一向に進んでないのは私が熱力学に向いてないことの…

AI解析プラットフォーム Multi-Sigmaとは?

Multi-Sigmaは少ないデータからAIによる予測、要因分析、最適化まで解析可能なプラットフォー…

【11/20~22】第41回メディシナルケミストリーシンポジウム@京都

概要メディシナルケミストリーシンポジウムは、日本の創薬力の向上或いは関連研究分野…

有機電解合成のはなし ~アンモニア常温常圧合成のキー技術~

(出典:燃料アンモニアサプライチェーンの構築 | NEDO グリーンイノベーション基金)Ts…

光触媒でエステルを多電子還元する

第621回のスポットライトリサーチは、分子科学研究所 生命・錯体分子科学研究領域(魚住グループ)にて…

ケムステSlackが開設5周年を迎えました!

日本初の化学専用オープンコミュニティとして発足した「ケムステSlack」が、めで…

人事・DX推進のご担当者の方へ〜研究開発でDXを進めるには

開催日:2024/07/24 申込みはこちら■開催概要新たな技術が生まれ続けるVUCAな…

酵素を照らす新たな光!アミノ酸の酸化的クロスカップリング

酵素と可視光レドックス触媒を協働させる、アミノ酸の酸化的クロスカップリング反応が開発された。多様な非…

二元貴金属酸化物触媒によるC–H活性化: 分子状酸素を酸化剤とするアレーンとカルボン酸の酸化的カップリング

第620回のスポットライトリサーチは、横浜国立大学大学院工学研究院(本倉研究室)の長谷川 慎吾 助教…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP