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スポットライトリサーチ

多彩な蛍光を発する単一分子有機化合物をつくる

第55回のスポットライトリサーチは、岐阜大学 工学部化学・生命工学科(村井研究室) 博士課程3年の山口きららさんにお願いしました。

村井研究室は、典型元素の個性を大事にしながら、新しい物質をつくる反応を開発しています。主宰教授である村井利昭先生は、化学を教授独特のダジャレで紹介する「村井君のブログ」の管理者としても有名です。

今回の山口さんの研究は、最近村井研究室で合成研究に注力している、アミノチアゾールという化合物群から生まれています。研究結果が岐阜大学およびJSTからプレスリリースされたことにより、本スポットライトリサーチを依頼させていただました。論文はこちら。

 

“Acid-Responsive Absorption and Emission of 5-N-Arylaminothiazoles: Emission of White Light from a Single Fluorescent Dye and a Lewis Acid”

Yamaguchi, K.; Murai, T.; Guo, J. D.; Sasamori, T.; Tokitoh, N. Chemistry Open 2016. DOI:10.1002/open.201600059

村井先生は、山口さんのことを次のように評しています。

村井研究室は合成を主とする研究室でした。その基盤を一変させたのが山口きららさんです。自分が合成した分子の特性を知りたくて、紫外可視・蛍光発光・粉末X線からDSCやDTAさらにはESRまで様々な性状を測定し解析を行っています。そのつど研究室外の先生や学外の先輩や先生にも自ら教えを乞いつつ、知らぬ間にハイクオリティな研究者に育っています。今回の成果も彼女のダイナミックな展開と完成に邁進する強さが生み出したものです。

では、研究内容から山口さんの結果を御覧ください!

Q1. 今回のプレス対象となったのはどんな研究ですか?簡単にご説明ください。

本研究では、多様な置換基を有する5-アミノチアゾールを合成し、その光物性を研究しています。

今回はそれらのうち、2位に塩基性官能基であるピリジル基を有する5-アミノチアゾールに対して、ブレンステッド酸またはルイス酸の添加という外部刺激を与えることで、吸収および発光波長の長波長シフト、さらには、単一の発光色素による白色発光を達成しました

ここでは、添加する酸の種類や添加量、またチアゾールに導入する置換基により光物性を変化させることができます。例えば、ルイス酸であるB(C6F5)3を添加した場合は、中性条件での青色発光から、酸性での橙色発光まで酸の添加量の微調整により白色発光(CIE:0.33, 0.35)を示すことを明らかにしました。

 

2016-08-09_23-00-17

 

 

 

Q2. 本研究テーマについて、自分なりに工夫したところ、思い入れがあるところを教えてください。

以前、ソルバトクロミズムを観測するために、極性の異なる溶媒を用いて光物性を測定していたことがありました。そのとき、ピリジル基を有する誘導体のみプロトン性溶媒に容易に溶け、発光波長も他の誘導体や溶媒と比べて変化が大きいことに気が付きました。

また、5-アミノチアゾール誘導体は2位のアクセプター性が高いものほど長波長発光することがわかっていたため、光物性が大きく変わるのではと考えられました。そこで、試しに塩酸を添加したところ、ピリジル窒素のプロトン化により発光波長が100 nm以上長波長シフトしてくれました。化合物のちょっとした物性の違いから次の研究に繋ぐことができ、嬉しかったです。

 

2016-08-09_23-01-03

 

Q3. 研究テーマの難しかったところはどこですか?またそれをどのように乗り越えましたか?

 

橙色発光および白色発光の実現が難しかったです。

今回検討できる点としては、チアゾールに導入する置換基と添加する酸の種類でした。まずブレンステッド酸の検討では、最も光物性が変化し橙色発光を示したのはTfOHでしたが、蛍光量子収率が8%と低く、添加後に消光してしまう化合物もありました。そこで次に、ルイス酸を色々添加した結果、B(C6F5)3を加えた際に50%近い蛍光量子収率を示しました。さらにB(C6F5)3の添加途中、白色に近い発光色が観測できたのですが、平衡定数が大きかったため色度調整が困難でした。

再度置換基を検討し、最終的にはピリジルの窒素まわりを嵩高くして酸との反応を遅くすることで、緩やかな色度調整を実現しました

 

Q4. 将来は化学とどう関わっていきたいですか?

昔から化学実験が好きだったのですが、年々化学と関わりが深くなるほど、より一層その面白さに惹かれています。将来にわたって真摯に化学と向き合い、広く深い知識を身に付けることで、わずかでも化学の発展に貢献できればと思います。

そして5年後、10年後、100年後でも、いつか自分の携わった研究が誰かの役に立つことができれば幸いです。

 

Q5. 最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

とにかく実験を楽しみ、いかにおもしろい研究ができるかが、充実した研究生活を過ごせるかの鍵だと思います。私自身は「おもしろい!」と思った方向にばかり進んでしまいますが、今後は多くの方々に、この研究おもしろいな、と思って頂けるような研究に発展させていきたいです。

また、本研究を展開するにあたり、村井先生をはじめ共著者の先生方、学会等でご助言頂いた先生方のお力添えなくしては、論文を発表することはできませんでした。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

 

関連リンク

 

研究者の略歴

2016-08-09_23-03-33山口きらら(やまぐちきらら)

所属:岐阜大学大学院工学研究科物質工学専攻 村井研究室 博士後期課程3年

研究テーマ:5-アミノカルコゲナゾールの系統的合成と物性評価

略歴:1989年岐阜県岐阜市生まれ。2012年3月に岐阜大学工学部応用化学科卒業、2012年4月に同大学修士課程に進学、2014年4月に同大学博士課程に進学。2013年第40回有機典型元素化学討論会で優秀講演賞、2014年修士論文発表会で日本化学会東海支部長賞、2015年国際ソロプチミスト岐阜賞、第50回有機反応若手の会ポスター賞受賞。

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Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院准教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

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