[スポンサーリンク]

世界の化学者データベース

スチュアート・シュライバー Stuart L. Schreiber

[スポンサーリンク]

スチュアート・L・シュライバー (Stuart L. Schreiber, 1956年2月6日-)は、アメリカの有機化学者である。ハーバード大学教授(写真:HHMI)。

「ケミカルバイオロジー」 という一大分野を築きあげた功績によってノーベル賞候補の呼び声も高い、世界を代表する化学者の一人。

経歴

ハーバード大学の学生としてR.B.Woodwardおよび岸義人に師事する。1980年にイェール大学にポストを得る。現在ハーバード大学教授。

1977 バージニア大学 卒業 (R. J. Sundberg教授)
1981 ハーバード大学 博士号取得 (R.B.Woodwardおよび岸義人教授)
1981 イェール大学 助教
1984 イェール大学 准教授
1986 イェール大学 教授
1988 ハーバード大学 教授
1994 Howard Hughes Medical Institute研究員

 

 受賞歴

1981 Dreyfus Newly Appointed Faculty Award
1982 Searle Scholar
1985 Dreyfus Teacher-Scholar Award
1985 Fellow of the Alfred P. Sloan Foundation,
1985 NSF Presidential Young Investigator Award
1986 ICI Pharmaceuticals Award for Excellence in Chemistry
1986 Arthur C. Cope Scholar Award
1989 ACS Award in Pure Chemistry
1990 Arun Guthikonda Memorial Award
1992 Thieme-IUPAC Award in Synthetic Organic Chemistry
1992 NIH Merit Award
1992 RSC Rhone-Poulenc Silver Medal
1994 ACS Award for Creative Work in Synthetic Chemistry
1996 Elected to the National Academy of Sciences and the American Academy of Arts & Sciences
1997 Tetrahedron Prize for Creativity in Organic Chemistry
1998 Thomas T. Hoopes Prize
1999 Derek Barton Medal
1999 National Cancer Institute Director’s Service Award, 1999;
2000 Alfred Bader Award in Bioorganic and Bioinorganic Chemistry, ACS
2000 Emmanuel Merck Award
2000 Donald T. Reynolds Foundation Cardiology Scholar
2001 William H. Nichols Medal
2001 Chiron Corporation Biotechnology Research Award, American Academy of Microbiology
2002 Holiday Lectures on Science
2003 NIH Director’s recognition of ChemBank
2004 Society for Biomolecular Screening Achievement Award
2004 Association of American Cancer Institutes (AACI) Distinguished Scientist Award
2005 Academic Scientist of the Year, Finalist for the 2005 Pharmaceutical Achievement Awards
2006 Thomson Laureate Award: Chemistry,(with Gerald R. Crabtree)
2007 U.S. Cancer Foundation Award of Distinguished Scientist
2007 Charles Butcher Award in Genomics and Biotechnology
2010 Wheland Medal, University of Chicago
2010 AACR Award for Outstanding Achievement in Chemistry in Cancer Research
2016 Nagoya Medal
2016 Wolf Prize

 

 研究

光環化反応を用いる立体選択的合成法開発が初期の研究テーマである。

その後、免疫抑制剤FK506(タクロリムス)の化学合成を達成した。シュライバーが同時代の合成研究者と一線を画していたのは、合成品を生体分子のプローブとして利用できると考えた点にあった。すなわち、FK506合成品を担持させたアフィニティカラムクロマトグラフィを作成、これを用いてFK506結合タンパクの単離に成功している。また、単離したタンパク質とラベル化FK506を結合させて結合様式を観測するなど、単なる化学合成研究にとどまらない展開が当時からの特徴である。

Tacrolimus.gif

さらにシュライバーはスタンフォード大・クラブトリーらと共同で「Small-Molecule Dimerizer」を開発し、 有機小分子が特定のシグナル過程を活性化できることを証明した。有機小分子がタンパク質など巨大分子のプローブ(probe:標識化合物)となり、それらの振る舞いをもコントロールしうることを実験的に証明した点は高く評価されており、ノーベル賞候補としての呼び声も高い。

 

シュライバーはこれら一連の研究に基づき、有機化学的手法と分子生物学的手法を組み合わせ、生命現象を分子レベルで理解しようとする、ケミカルバイオロジー(Chemical Biology)という研究領域を提唱する。現在では世界各国の研究者が参加する一大学際的研究領域となっている。

 

また近年では、コンビナトリアル的手法の探索領域を合理的に拡大しうるストラテジー、多様性指向型合成法(Diversity-Oriented Synthesis:DOS)を提唱[2]し、本戦略に基づくライブラリ構築を進めている。DOSは共通中間体から基本骨格ベースの多様性を生み出す戦略であり、官能基ベースの多様性導入ではアプローチの難しい、革新性の高い医薬リード・バイオプローブ化合物も探索可能にしうる方法論として大きな注目を集めている。

 

コメント&その他

  1. 400以上の論文を発表。ハーシュ指数は109.
  2. 世界で活躍する有機合成化学者を多数輩出している。たとえばTim Jamison(MIT)、Amir Hoveyda (Boston College)、Glenn Micalizio (Scripps Florida)、James Morken (Boston College)、Marc Snapper (Boston College)、John A. Porco Jr.(Boston)などなど。

 

名言集

 

関連動画

 

関連論文

  1. a) J. Liu; J. D. Farmer; W. S. Lane; J. Friedman; I. Weissman; Stuart L. Schreiber, Cell 1991, 66, 807. b) S. L. Schreiber; G. Crabtree Harvey Society Lectures 1997, 89, 373.
  2.  S. L. Schreiber et al. Science 2000, 287, 1964. DOI:10.1126/science.287.5460.1964

 

関連書籍

[amazonjs asin=”3527311505″ locale=”JP” title=”Chemical Biology”]

 

関連リンク

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. テッド・ベグリーTadhg P. Begley
  2. 橘 熊野 Yuya Tachibana
  3. 城戸 淳二 Junji Kido
  4. アレクサンダー・リッチ Alexander Rich
  5. 和田 猛 Takeshi Wada
  6. ステファン・ヘル Stefan W. Hell
  7. 八島栄次 Eiji Yashima
  8. 槌田龍太郎 Ryutaro Tsuchida

注目情報

ピックアップ記事

  1. ガ求愛行動:性フェロモンを解明 東大など
  2. 米で処方せん不要の「やせ薬」発売、売り切れ続出
  3. 青色LEDで駆動する銅触媒クロスカップリング反応
  4. 結晶構造データは論文か?CSD Communicationsの公開
  5. 内部アルコキシ効果 Inside Alkoxy Effect
  6. マイクロ波に少しでもご興味のある方へ まるっとマイクロ波セミナー 〜マイクロ波技術の基本からできることまで〜
  7. アジドインドリンを利用した深海細菌産生インドールアルカロイド骨格のワンポット構築
  8. ウルフ賞化学部門―受賞者一覧
  9. ピエトロ・ビギネリ Pietro Biginelli
  10. 三菱ウェルと田辺合併 後発薬に新規参入

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2007年9月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930

注目情報

最新記事

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

圧力に依存して還元反応が進行!~シクロファン構造を活用した新機能~

第686回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機化学第一研究室(鈴木孝…

第58回Vシンポ「天然物フィロソフィ2」を開催します!

第58回ケムステVシンポジウムの開催告知をさせて頂きます!今回のVシンポは、コロナ蔓延の年202…

第76回「目指すは生涯現役!ロマンを追い求めて」櫛田 創 助教

第76回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第75回「デジタル技術は化学研究を革新できるのか?」熊田佳菜子 主任研究員

第75回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第74回「理想的な医薬品原薬の製造法を目指して」細谷 昌弘 サブグループ長

第74回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第57回ケムステVシンポ「祝ノーベル化学賞!金属有機構造体–MOF」を開催します!

第57回ケムステVシンポは、北川 進 先生らの2025年ノーベル化学賞受賞を記念して…

櫛田 創 Soh Kushida

櫛田 創(くしだそう)は日本の化学者である。筑波大学 数理物質系 物質工学域・助教。専門は物理化学、…

細谷 昌弘 Masahiro HOSOYA

細谷 昌弘(ほそや まさひろ, 19xx年xx月xx日-)は、日本の創薬科学者である。塩野義製薬株式…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP