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森本 正和 Masakazu Morimoto

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森本 正和(もりもと まさかず、MORIMOTO Masakazu)は、日本の化学者である。専門は有機光化学、フォトクロミズム。2021年現在、立教大学教授。第17回ケムステVシンポ講師。

経歴

2001年3月 九州大学工学部 卒業
2003年3月 九州大学大学院工学府 修士課程 修了
2004年4月 日本学術振興会 特別研究員(DC2、~2006年3月)
2006年3月 九州大学大学院工学府 博士課程 修了
2006年4月 東北大学 博士研究員
2007年4月 立教大学理学部化学科 助教
2007年10月 科学技術振興機構さきがけ「物質と光作用」研究領域 研究者(兼任、~2011年3月)
2010年4月 立教大学理学部化学科 准教授
2017年4月 立教大学理学部化学科 教授

受賞歴

2017年9月 第17回光化学協会奨励賞

研究業績

光の照射により異性化反応を起こして色を変化させるフォトクロミック分子、特にジアリールエテンを中心として、その化学構造や結晶構造を精緻に制御することで、これまでにない新現象や様々な分野で応用可能な新機能を生み出すことを目指している。これまでに、様々な色に変化するマルチカラー分子結晶や光により変形する分子結晶、光によりスイッチする蛍光分子などに関する研究を行ってきた。

多成分フォトクロミック分子結晶のマルチカラーフォトクロミズム

幾何構造が類似した異種分子が結晶中において混和することを利用して、黄・赤・青に発色する3種のジアリールエテンを含む混晶を作製した。この3成分混晶に対して照射する光の波長を精密に制御することで黄・赤・青の3色を独立に発色させ、また3色の組み合わせにより様々な色に変化するマルチカラーフォトクロミズムを実現した。フォトクロミック分子結晶がフルカラーディスプレイや波長多重光メモリとして機能する可能性を示した。

フォトクロミック分子結晶のフォトメカニカル機能

いくつかの光反応性分子結晶が光照射によりその形状を変化させることが報告されていたが、それらはいずれもマイクロメートル程度の大きさの微小結晶であった。これに対して、森本らは、ジアリールエテンとオクタフルオロナフタレンとのπ-π相互作用を含む2成分共結晶、および2種のジアリールエテン分子を含む混晶などについて、数ミリメートルの長さの板状あるいは棒状結晶が光照射により可逆的な形状変化を示すことを見いだした。これらの結晶の光力学応答特性を詳細に観測・解析することで、①1000回以上の繰り返し変形が可能である、②4~370 Kの幅広い温度範囲で駆動する、③光照射後5マイクロ秒以内に高速変形する、④光反応により約50 MPaの応力を発生する、⑤屈曲変形により自重の900倍の重さの物体を持ち上げる・歯車を回転させるなど、光駆動アクチュエーターとして優れた性能をもつことを明らかにした。

フォトクロミック分子のturn-on型蛍光スイッチング

ベンゾチオフェンジオキシドを有するジアリールエテンが、紫外光照射による異性化反応に伴い蛍光強度が増大するturn-on型蛍光スイッチングを示し、また0.8~0.9程度の高い蛍光量子収率で発光することを見いだした。この誘導体について光反応性と蛍光特性に対する置換基効果を明らかにすることで、超解像蛍光イメージングにおける蛍光プローブとして応用する上で重要な基本性能を制御するための分子設計指針を確立した。

関連記事

関連文献 

  • Morimoto, M.; Kobatake, S.; Irie, M. J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 11080-11087. DOI: 10.1021/ja035277o
  • Morimoto, M.; Irie, M. J. Am. Chem. Soc. 2010, 132, 14172-14178. DOI: 10.1021/ja105356w
  • Uno, K.; Niikura, H.; Morimoto, M.; Ishibashi, Y.; Miyasaka, H.; Irie, M. J. Am. Chem. Soc. 2011, 133, 13558-13564. DOI: 10.1021/ja204583e
  • Terao, F.; Morimoto, M.; Irie, M. Angew. Chem. Int. Ed. 2012, 51, 901-904. DOI: 10.1002/anie.201105585
  • Irie, M.; Morimoto, M. Bull. Chem. Soc. Jpn. 2018, 91, 237-250. DOI: 10.1246/bcsj.20170365
  • Iwai, R.; Morimoto, M.; Irie, M. Photochem. Photobiol. Sci. 2020, 19, 783-789. DOI: 10.1039/D0PP00064G

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投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

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