[スポンサーリンク]

ケムステニュース

ドミノ遊びのように炭素結合をつくる!?

[スポンサーリンク]

enders
有機合成化学とは炭素炭素結合を順番につなげて目的の化合物を作る学問です。それをひとつひとつつなげていってもよいのですが、2つ、3つの炭素結合を一挙につなげることができれば、効率がよいですね。そういう2つ以上の反応を組み合わせた反応を、ドミノ反応(Domino reaction)とかタンデム反応(Tandem reaction)といいます。ドミノ倒しのように、前のドミノが次のドミノを倒して・・・連鎖的にドミノが倒れていくというところから由来しています。別に全く新しい概念ではなくて、既存の反応を組み合わせていけばよいのです。

 一方、近年、反応を進行させる触媒として、高価・有毒・廃棄困難である(全部ではありませんよ。)金属を用いず、有機化合物そのものを用いるという「有機触媒」というものが話題になっています。アミノ酸である安価なプロリンを用いる不斉合成反応が特に有名です。

 さて、今回ドイツアーヘン大学のEnders教授らは、その有機触媒を利用して、3つの化合物の炭素炭素結合をDomino反応によって結合させ、有用な1つの化合物にすることに成功し、ネイチャーに報告しました。(Nature, 2006, 441, 861

もう少し有機化学的に言えば(ここから下はちょっとだけ専門的です。)、不斉触媒としてプロリン由来のジフェニルプロリノール誘導体をもちいて、2つのアルデヒドとニトロスチレン誘導体とのドミノ反応により(2つのMichael反応と1つのアルドール反応)、光学的に純粋な付加体を高収率、高いジアステレオ選択性で得ました。ということです。

ジフェニルプロリノール

 ドミノ反応の性質上、前に述べたように、既存の反応の組み合わせというイメージがあります。MIchael反応、アルドール反応はよく使われる反応です。この触媒を用いたMichael反応も、Aldol反応も報告されており、さらには合成した化合物が実際、そんなに有用なものではないと思うので、個人的にはそこまですごい反応という感覚はないのですが(ごめんなさい。)、先週のストルツ教授に続いて、2週連続で純粋な有機合成反応でネイチャーはすごいです。

 Enders教授は昔から、プロリン由来の不斉補助基を用いて、様々な不斉合成反応を報告してきた第一人者です。これ以外にも最近多くの有機触媒を用いた反応が報告されているので、この分野に注目してみてください。(写真:真ん中がEnders。Chemical & Engineering Newsより)

関連リンク

もっとも単純な触媒「プロリン」

有機分子触媒

関連書籍



Asymmetric Organocatalysis: From Biomimetic Concepts To Applications In Asymmetric Synthesis

最新の不斉有機分子触媒関連の研究について述べた書籍。


Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 旭化成ファーマ、北海道に「コエンザイムQ10」の生産拠点を新設
  2. アラスカのカブトムシは「分子の防寒コート」で身を守る
  3. ラスカー賞に遠藤章・東京農工大特別栄誉教授
  4. ダイセル化学、筑波研をアステラス製薬に売却
  5. 同仁化学研、ビオチン標識用キットを発売
  6. 調光機能付きコンタクトレンズが登場!光に合わせてレンズの色が変化…
  7. 積水化学、高容量電池の火炎防ぐ樹脂繊維複合材を開発
  8. バイエルワークショップ Bayer Synthetic Orga…

注目情報

ピックアップ記事

  1. γ-チューブリン特異的阻害剤の創製
  2. F. S. Kipping賞―受賞者一覧
  3. 期待度⭘!サンドイッチ化合物の新顔「シクロセン」
  4. DNAを人工的につくる-生体内での転写・翻訳に成功!
  5. ジャクリン・バートン Jacqueline K. Barton
  6. 室温で液状のフラーレン
  7. IKCOC-15 ー今年の秋は京都で国際会議に参加しよう
  8. 実験のお供に!【富士フイルム和光純薬】の遷移金属触媒カタログ
  9. 硫黄と別れてもリンカーが束縛する!曲がったπ共役分子の構築
  10. 炭酸ビス(ペンタフルオロフェニル) : Bis(pentafluorophenyl) Carbonate

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2006年6月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
2627282930  

注目情報

最新記事

化学つれづれ草【ある研究者の回想】

概要物理化学者で量子機能材料を専門とする著者によるエッセイ集.化学者としての研究,教育,人生…

第60回有機反応若手の会

開催概要有機反応若手の会は、有機化学分野で研究を行う全国の大学院生を中心とした若手研究者が集い、…

ノーベル賞受賞者と語り合う5日間!「第18回HOPEミーティング」参加者募集!

申し込みはこちら概要主催:独立行政法人 日本学術振興会(JSPS)開催地:神奈川…

光触媒による高効率なCO2還元の実現―まさかの光を弱く当てることが重要だった―

第709回のスポットライトリサーチは、東京科学大学 理学院(前田研究室)博士後期課程2年の仲田竜一 …

「π-πスタッキング」という言葉が生む誤解【芳香環の相互作用を見直す: 前編】

芳香環が平行に並んで近接しているとき、その構造を「π–π スタッキング」と表されることがよくあります…

一重項酸素によるC(sp2)−P結合切断を用いた長波長光によるリン化合物のアンケージング

第 708 回のスポットライトリサーチは、同志社女子大学 薬学部 医療薬学科 5…

マテリアルズ・インフォマティクスにおける画像解析の活用ガイド

開催概要材料開発において、電子顕微鏡やX線トモグラフィーを用いて材料の微細構造を観察するために画…

世界初のPROTAC医薬、ついに承認 ―「タンパク質を阻害する」から「分解する」時代へ

2026年5月、創薬化学の歴史に残る大きな出来事が起きました。米国 FDA は、…

有機蛍光とは異なる新しい有機りん光の分子設計指針の発見

第707回のスポットライトリサーチは、電気通信大学 情報理工学研究科(牧昌次郎研究室)の林希久也 助…

NEDO懸賞金活用型プログラム/量子コンピュータを用いた社会問題ソリューション開発2

「NEDO懸賞金活用型プログラム/量子コンピュータを用いた社会問題ソリューション開発…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP