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スポットライトリサーチ

γ-チューブリン特異的阻害剤の創製

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第11回目となるスポットライトリサーチは、理化学研究所生命システム研究センター特別研究員・知念拓実 博士にお願いしました。

知念さんは筑波大学大学院生命環境科学研究科(臼井研究室)所属時から継続されてきた研究で成果を上げ、昨年プレスリリースをされました。

その内容は、細胞骨格要素の一つ「γ-チューブリン」の働きを止める有機化合物を世界で初めて発見したというもの。それを使ったオンリーワンのケミカルバイオロジー研究までをしっかり積み上げて報告されています。ゆくゆくは新たな抗がん剤へ繋がりうる成果の一つです。また論文著者リストからもおわかりの通り、ドイツと日本をまたいだスケールの大きな国際共同研究であるのも特徴です。

“The γ-tubulin-specific inhibitor gatastatin reveals temporal requirements of microtubule nucleation during the cell cycle”
Chinen, T.; Liu, P.; Shioda, S.; Pagel, J.; Cerikan, B.; Lin, T.-c.; Gruss, O.; Hayashi, Y.; Takeno, H.; Shima, T.; Okada, Y.; Hayakawa, I.; Hayashi, Y.; Kigoshi, H.; Usui, T.; Shiebel, E. Nat. Commun. 2015, 6, 8722. doi:10.1038/ncomms9722

この架け橋となった知念さんは、つい最近、理研に移って新たなスタートを切られています。今後ますますの発展が期待される知念さんに寄稿いただいた今回のインタビュー、是非ご覧ください!

 

Q1. 今回のプレス対象となったのはどんな研究ですか?簡単にご説明ください。

微小管(microtubule)はα/βチューブリンが中心体に局在するγチューブリン複合体から重合が開始(microtubule nucleation)して形成される中空の細胞内小器官です(下図)。微小管は紡錘体形成をはじめとする様々な生命現象に関わっており、α/βチューブリンの阻害剤は抗がん剤や研究試薬として使われてきました。しかしながら微小管形成の足場となるγチューブリン複合体に対する阻害剤はこれまで報告されておりませんでした。そこで本研究ではβチューブリンとγチューブリンの構造類似性に着目し、βチューブリン結合物質とその類縁体の中からγチューブリン特異的阻害剤gatastatinを見出しました(下図)。さらに本化合物を用いてこれまで明らかとなっていなかった細胞分裂期中期から細胞分裂期後期におけるγチューブリン機能の寄与を示唆することに成功しました。

sr_T_Chinen_1

 

Q2. 本研究テーマについて、自分なりに工夫したところ、思い入れがあるところを教えてください。

本研究は博士課程在籍時からポスドク一年目にかけて筑波大学臼井研究室やドイツ・ハイデルベルグ大学Schiebel研究室において行ったプロジェクトです。異なる二か所、特に国外において研究に取り組めたことは非常に良い経験になり、各分野においてクリティカルに考える点の違いなど多くのことを学べました。このような機会を与えてくださった臼井准教授やSchiebel教授、日本学術振興会、また上原記念生命科学財団に非常に感謝しております。

 

Q3. 研究テーマの難しかったところはどこですか?またそれをどのように乗り越えましたか?

本研究ではα/βチューブリン作用薬とその類縁体の中から薬剤スクリーニングを行っているため、ヒット化合物がα/βチューブリンと比較して、γチューブリンに対して特異的に作用すると示すことが重要です。そこでin vitroXenopus egg extractを用いたγチューブリン依存的・非依存的なα/βチューブリン重合反応(計6種類の独立の評価系)それぞれに対するgatastatinの作用を検討し、本化合物のγチューブリン特異的な阻害作用を示しました。

 

Q4. 将来は化学とどう関わっていきたいですか?

私は生理活性物質を用いて細胞内機能を制御する研究を通して、研究試薬や医薬として広く用いられる化合物を世に出したいと考えています。このため細胞生物学、生化学、遺伝学、構造生物学、生物物理学的な手法を同時に取り入れてより詳細に薬剤の作用機構を解析したいと考えています。これらのアプローチを同時に扱うことは困難だとは思いますが、現在その知識や技術を身に着けようと努力しています。

 

Q5. 最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

私の分野が例になってしまいますが、優れた阻害剤を世に出すには合成のみ、また生物活性評価のみでは難しい部分が多くあると思います。共同研究者の化学者の方々の協力により飛躍的に進む場面が何度もありました。異なる分野の方とディスカッションを重ね、それぞれの良いところを自分の研究に取り入れることで研究の推進力が生まれると思います。積極的に共同研究者の方々とディスカッションをしましょう(特に手を動かしている学生同士)!

 

関連リンク

 

研究者の略歴

sr_T_Chinen_2知念拓実

所属:理化学研究所生命システム研究センター細胞動態計測コア細胞極性統御研究チーム特別研究員

経歴:1987年長野県生まれ。筑波大学卒業後、2010年より同大学院生命環境科学研究科へ進学(臼井 健郎研究室)。2012年-2015年日本学術振興会特別研究員(DC1・PD)。2013年5月-2014年1月ドイツハイデルベルグ大学分子生物学研究所Elmar Schiebel研究室へ短期留学。2014年11月博士(農学)取得。2015年5月-2015年11月ドイツハイデルベルグ大学分子生物学研究所Elmar Schiebel研究室博士研究員(上原記念生命科学財団海外留学助成ポストドクトラルフェローシップ、日本学術振興会海外特別研究員)。2015年12月より現職。

 

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cosine

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博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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