[スポンサーリンク]

一般的な話題

個性あるジャーナル表紙

[スポンサーリンク]

Journal of Organic Chemistry(JOC)というのはアメリカ化学会が発行するジャーナルで、世界が認める有機化学界最高峰のジャーナルの一つです。(ちまたで何かと話題のオリンピック委員会ではありません)

そんなJOCに以前、論文の内容を一枚の絵で表現した「萌え絵(?)」とおぼしき斬新なグラフィカルアブストラクト(TOC)が登場し、化学界の話題をかっさらっていきました(上図)。これは以前「つぶやき」でも紹介しました

つい先日、そのグラフィックが表紙(=より目立つ場所)にまで格上げされて登場する運びとなったようです。まずは論文発表で読者の気持ちをがっちりつかみ、その後よりスペースも大きく、多彩な表現が可能な表紙で続編を公開する・・・いやはや良くできたやり方ですね(笑)


その表紙画像はこちら。
JOC_Hires.jpg

(クリックして拡大)

・・・何か増えてる!

エンタルピー(オレンジ帽子)とエントロピー(青い帽子)を擬人化したキャラが跳ね回っています。この人達は前から居ましたが、よく見ると後ろの方に一人黒い帽子の女の子が・・・「G」というアルファベットが帽子に見えるので、おそらくこれはギブズ自由エネルギーの擬人化なのでしょう。

続編のお約束ともいえる新キャラ登場まできっちり押さえてあるとは侮れない!

報告論文総数が増え続ける反面、全部の仕事を追うのが不可能になっている情報過多の現在。ジャーナル出版の電子化が進み、一昔以上に一つの仕事が短期で消費されてしまう時代と言って良いでしょう。今後は研究自体のクオリティを保つことはもちろん、いかに論文に目を止めてもらうかということまでをも、真剣に考えなければならないのでしょうね。以前にも荒木飛呂彦の表紙が生物系の超一流ジャーナルCellの表紙をかっさらって話題となりました。トリッキーなやり方に見えますが、今回の表紙がTwitterですぐさま話題になってるという現実を見るに、漫画的アピールにはやはり無視できない効果があるように見受けられます。見た目に楽しい解説が増えてくれれば、他分野の研究者のみならず一般の方々の興味も引きやすいでしょうし、こういうの増えてくれること自体、筆者個人としては悪くないと思えます。

実際、既に超一流たる化学者達でも、そういうアピールに心を砕くことは厭わないようです。以前紹介したNicolaou教授Nocera教授のTOCなどもそうですし、日本だと相田卓三教授などが美麗なCGをプレゼンに多用している方の一人です。J.F.Stoddart教授のグラフィックス(下図)は、一目で彼の仕事とすぐ分かりますし、インパクト抜群。電子豊富な芳香環を暖色系、電子不足なそれを寒色系で記すように統一しているので、化学的意義も視認しやすくなっています。聞いた話ですがグラフィックに関するStoddart教授のこだわりは凄く、「この青は気に入らない、もっと青!この赤はもっと赤!」といった感じでもの申すようで・・・この辺り本人以外には、分からないセンスなんでしょうが(笑)

 

JFS_TOC.jpg
マンガ・アニメ・ゲーム創作に関しては、他の追随を許さないレベルを走りつづけている日本。せっかくの土壌を、現役化学者達も活かさないと勿体ないんじゃない?・・・なーんてことをたまーに思ったりしなくもない筆者ではありますね。

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 有機合成化学協会誌6月号:ポリフィリン・ブチルアニリド・ヘテロ環…
  2. チオカルバマートを用いたCOSのケミカルバイオロジー
  3. 分子を見分けるプラスチック「分子刷り込み高分子」(基礎編)
  4. 表裏二面性をもつ「ヤヌス型分子」の合成
  5. 文具に凝るといふことを化学者もしてみむとてするなり⑥:実験室でも…
  6. 第63回野依フォーラム例会「データ駆動型化学が拓く新たな世界」特…
  7. 化学コミュニケーション賞2023を受賞しました!
  8. Lectureship Award MBLA 10周年記念特別講…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 就職か進学かの分かれ道
  2. 2-トリメチルシリル-1,3-ジチアン:1,3-Dithian-2-yltrimethylsilane
  3. トムソン:2005年ノーベル賞の有力候補者を発表
  4. 触媒化学との「掛け算」によって展開される広範な研究
  5. 低分子の3次元構造が簡単にわかる!MicroEDによる結晶構造解析
  6. 高分子マテリアルズ・インフォマティクスのための分子動力学計算自動化ライブラリ「RadonPy」の概要と使い方
  7. エミリー・バルスカス Emily P. Balskus
  8. 低分子医薬に代わり抗体医薬がトップに?
  9. 世界5大化学会がChemRxivのサポーターに
  10. ジョン・ケンドリュー John C. Kendrew

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2010年2月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728

注目情報

最新記事

【十全化学】核酸医薬のGMP製造への挑戦

「核酸医薬」と聞いて、真っ先に思い起こすのは、COVID-19に対するmRNAワ…

十全化学株式会社ってどんな会社?

私たち十全化学は、医薬品の有効成分である原薬及び重要中間体の製造受託を担っている…

化学者と不妊治療

これは理系の夫視点で書いた、私たち夫婦の不妊治療の体験談です。ケムステ読者で不妊に悩まれている方の参…

リボフラビンを活用した光触媒製品の開発

ビタミン系光触媒ジェンタミン®は、リボフラビン(ビタミンB2)を活用した光触媒で…

紅麹を含むサプリメントで重篤な健康被害、原因物質の特定急ぐ

健康食品 (機能性表示食品) に関する重大ニュースが報じられました。血中コレステ…

ユシロ化学工業ってどんな会社?

1944年の創業から培った技術力と信頼で、こっそりセカイを変える化学屋さん。ユシロ化学の事業内容…

日本薬学会第144年会付設展示会ケムステキャンペーン

日本化学会の年会も終わりましたね。付設展示会キャンペーンもケムステイブニングミキ…

ペプチドのN末端でのピンポイント二重修飾反応を開発!

第 605回のスポットライトリサーチは、中央大学大学院 理工学研究科 応用化学専…

材料・製品開発組織における科学的考察の風土のつくりかた ー マテリアルズ・インフォマティクスを活用し最大限の成果を得るための筋の良いテーマとは ー

開催日:2024/03/27 申込みはこちら■開催概要材料開発を取り巻く競争や環境が激し…

石谷教授最終講義「人工光合成を目指して」を聴講してみた

bergです。この度は2024年3月9日(土)に東京工業大学 大岡山キャンパスにて開催された石谷教授…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP