[スポンサーリンク]

世界の化学者データベース

小林 洋一 Yoichi Kobayashi

[スポンサーリンク]

小林 洋一(こばやし よういち)は、日本の物理化学者である。専門は光化学、時間分解分光、機能物質化学、ナノ材料化学。2022年現在、立命館大学 准教授。第32回ケムステVシンポ講師。

経歴

2002 私立 滝高校 卒業
2007 関西学院大学 理工学部 化学科 卒業
2009 同大学大学院 理工学研究科 化学専攻 博士課程前期課程 修了(玉井尚登 研究室)
2011 同大学院 同学科 同専攻 博士課程後期課程 修了(早期)(玉井尚登 研究室)
2011 トロント大学 JSPS海外特別研究員(Gregory D. Scholes 研究室)
2013 青山学院大学 理工学部 化学・生命科学科 助教(阿部 二朗 研究室)
2017- 立命館大学 生命科学部 応用化学科 准教授
2022- JST さきがけ研究者「持続可能な材料設計に向けた確実な結合とやさしい分解」領域(兼任)

 

受賞歴

2009 仁田記念賞
2009 2009 Korea-Japan Symposium on Frontier Photoscience Excellent Poster Presentation Award
2010第4回分子科学討論会分子科学会 優秀ポスター賞
2012第6回分子科学討論会分子科学会 優秀講演賞
2013 リンダウノーベル賞受賞者会議への参加(化学分野)
2014 日本化学会第94回春季年会 優秀講演賞(学術)
2016 日本化学会第96回春季年会 優秀講演賞(学術)
2018 若い世代の特別講演
2021 Nanoscale Emerging Investigators
2022 ChemSocRev Emerging Investigators
2022 ChemComm Pioneering Investigators
2022 Nanoscale Horizons Award

 

研究業績

数十フェムト秒(1フェムト秒は10−15秒)から秒、分にわたる幅広い時間分解分光計測技術を駆使し、光物理過程(電子状態の変化)と光化学過程(化学構造変化)の境界領域(及び複合領域)に潜む新奇光機能の探索、およびその知見を活かした新材料創成を目指した研究を実施

1.超長寿命電荷分離状態を用いたフォトクロミック複合ナノ材料の創出

高速に応答するフォトクロミック材料は、立体動画技術や偽造防止などへの応用が期待されている。従来このような性質を示す材料は特定の有機分子に限られており、無機化合物のフォトクロミック反応は戻り反応がきわめて遅いことが知られていた。
そのような背景の中、小林らは銅イオンをドープした硫化亜鉛(ZnS)のナノ結晶を用いて、高速に応答するフォトクロミズムを初めて実現した[1]。この材料の着色の起源は価電子帯から光生成する電荷分離状態におけるCu2+の正孔への遷移であり、電荷分離状態が秒、分オーダーにわたって長寿命安定に存在できることから、着色として認識できる。さらに、この材料は室温近傍(10~50℃)の範囲で戻り反応速度がほぼ温度に依存しないという特異な性質を有することを明らかにした[2]

2.非線形分光を用いた光機能材料の開拓

光生成した過渡状態がさらに光吸収する過程は段階的二光子過程とよばれる。この現象は、光生成過渡状態が長寿命であれば比較的弱い光強度の光源でも観測されることから、低光強度閾値の非線形光機能材料において注目されている[3,4]
小林らはこの過程を分析手法として用い、半導体ナノ結晶に配位した芳香族有機分子の高励起状態から半導体ナノ結晶への電子移動が効率的に起こることを明らかにした[5]。これは半導体ナノ結晶を用いれば、従来活用できないとされていたきわめて短寿命の有機分子の高励起状態から電子を効率的に取り出せる、つまり高励起状態を高活用できることを示しており、光反応や光電変換を制限する基本原則として知られるKasha則やShockley–Queisser限界を超える光機能材料創出への重要な知見となる。

 

関連動画

関連文献

  1. Han, Y.; Hamada, M.; Chang, I.-Y.; Hyeon-Deuk, K.; Kobori, Y.; Kobayashi, Y. J. Am. Chem. Soc. 2021, 143, 2239. DOI:10.1021/jacs.0c10236
  2. Sanada, Y.; Yoshioka, D.; Kobayashi, Y. J. Phys. Chem. Lett. 2021, 12, 8129. DOI:10.1021/acs.jpclett.1c02386
  3. Kobayashi, Y.; Abe, J. Chem. Soc. Rev. 2022, 51, 2397-2415. DOI: 10.1039/d1cs01144h
  4. Kobayashi, Y.; Mutoh, K.; Abe, J. J. Photochem. Photobiol. C 2018, 34, 2-28. DOI: 10.1016/j.jphotochemrev.2017.12.006
  5. Yoshioka, D.; Fukuda, D.; Kobayashi, Y. Nanoscale 2021, 13, 1823-1831. DOI: 10.1039/D0NR08493J

関連リンク

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. クゥイリン・ディン Kui-Ling Ding
  2. ジョージ・クラフォード M. George Craford
  3. ロバート・グラブス Robert H. Grubbs
  4. 前田 和彦 Kazuhiko Maeda
  5. モウンジ・バウェンディ Moungi G Bawendi
  6. イリヤ・プリゴジン Ilya Prigogine
  7. 岡本佳男 Yoshio Okamoto
  8. チン・リン Qing Lin

注目情報

ピックアップ記事

  1. アンソニー・スペック Anthony L. Spek
  2. J-STAGE新デザイン評価版公開 ― フィードバックを送ろう
  3. 【追悼企画】水銀そして甘み、ガンへー合成化学、創薬化学への展開ー
  4. 2013年ノーベル化学賞は誰の手に?トムソンロイター版
  5. 歯のバイオフィルム除去と病原体検出を狙ったマイクロロボットの開発
  6. 第3回慶應有機合成化学若手シンポジウム
  7. 第44回「100%の効率を目指せば、誤魔化しのないサイエンスが見える」安達千波矢教授
  8. 文具に凝るといふことを化学者もしてみむとてするなり⑪:どっちもクリップの巻
  9. 浜松ホトニクス、ヘッド分離型テラヘルツ波分光分析装置を開発
  10. 電子実験ノートもクラウドの時代? Accelrys Notebook

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2022年10月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

7th Compound Challengeが開催されます!【エントリー〆切:2026年03月02日】 集え、”腕に覚えあり”の合成化学者!!

メルク株式会社より全世界の合成化学者と競い合うイベント、7th Compound Challenge…

乙卯研究所【急募】 有機合成化学分野(研究テーマは自由)の研究員募集

乙卯研究所とは乙卯研究所は、1915年の設立以来、広く薬学の研究を行うことを主要事業とし、その研…

大森 建 Ken OHMORI

大森 建(おおもり けん, 1969年 02月 12日–)は、日本の有機合成化学者。東京科学大学(I…

西川俊夫 Toshio NISHIKAWA

西川俊夫(にしかわ としお、1962年6月1日-)は、日本の有機化学者である。名古屋大学大学院生命農…

市川聡 Satoshi ICHIKAWA

市川 聡(Satoshi Ichikawa, 1971年9月28日-)は、日本の有機化学者・創薬化学…

非侵襲で使えるpH計で水溶液中のpHを測ってみた!

今回は、知っているようで知らない、なんとなく分かっているようで実は測定が難しい pH計(pHセンサー…

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

圧力に依存して還元反応が進行!~シクロファン構造を活用した新機能~

第686回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機化学第一研究室(鈴木孝…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP