[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

日本にあってアメリカにないガラス器具

[スポンサーリンク]

アメリカはやはり日本とは違う環境です。有機合成をやろうとしても、いろいろ勝手が違うこともなくありません。

ガラス器具も日本製とは微妙に形が違います。まぁそれはそれで慣れてしまえば、使うにそれほど問題ないのですが。

でも日本で慣れ親しんだガラス器具のうち、ぜひこれはあって欲しいなぁ、と思ったモノがひとつあります。それは・・・?


桐山ロートです!

grassware_3.jpg
ガラス器具の”匠”が集う桐山製作所が発明したこのロート、中央の穴に繋がる形で絶妙に網目状の溝が彫られています。この特殊な形状の溝は、極少量のサンプルを減圧ろ過する時に、大変有効に機能してくれます。

glassware_2.jpg

(画像はWikipediaより)

アメリカでは当然ながら(?)ポピュラーではないようです。筆者のいたラボでは少量ろ過するときも普通のグラスフィルターを使っていたため、一工夫が必要でした。

それにどいつもこいつも凄い大雑把なので、毎回の反応スケールも日本より大きめ。桐山ロートなんて必要ないのかも知れんなぁとか思ったり・・・これほど精密なガラス器具があったところで、猫に小判かも?(失礼)

では、逆にアメリカにあって日本にないガラス器具は・・・?

さて、これは難しい。筆者のラボは純粋有機合成はメインでなかったということもあり、そもそもあんまり合成用のガラス器具が充実していませんでした。

なので見たことない器具でも、なんとか工夫して組み合わせて使ってたり。変なトコでのクリエイティビティは上がったかもしれません(笑)

パスツールピペット・試験管・バイアルが完全使い捨てだった、というのはだいぶ違う点でしょうか。

アメリカのラボでは、たいてい人件費が一番高くつきます。院生にもポスドクにも給料を払わなければなりませんので。

こうなると「貴重な労働時間を器具洗いに浪費するぐらいなら、(安い物なら)捨てて新しく買うほうがいつも綺麗で利口だろ」という考えに行き着きます。そして必然、特殊用途器具の充実度も後回しになるという・・・全くもって合理的ですね。

一方で「もったいない文化」が根強い日本時代のラボでは、一度使ったパスツールピペットを捨てるのもしのびなく、100本ほどたまったらまとめてアセトンで洗いする、なんてことを皆してたものです。「もったいない」という考え方自体は全く悪くないのですが、考えてみるとアセトンの無駄・時間の無駄かも知れませんね。もっと穿った見方をするなら、「学生=タダで使える労働力」って考え方が根強いために、こんなことが横行してしまうのかも・・・。

よくも悪くも、文化はちがうもんですね。

関連商品

[amazonjs asin=”B00JVKI6DS” locale=”JP” title=”摺合桐山ロート SB-40″]

関連リンク

桐山ロート – Wikipedia

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. ピーナッツ型分子の合成に成功!
  2. リガンドによりCO2を選択的に導入する
  3. Carl Boschの人生 その8
  4. 天然イミンにインスパイアされたペプチド大環状化反応
  5. iPhoneやiPadで化学!「デジタル化学辞典」
  6. 研究者のためのCG作成術④(レンダリング編)
  7. 特許の基礎知識(3) 方法特許に注意! カリクレイン事件の紹介…
  8. 【9月開催】第十一回 マツモトファインケミカル技術セミナー   …

注目情報

ピックアップ記事

  1. JSRとはどんな会社?-1
  2. デヴィッド・クレネマン David Klenerman
  3. 陰イオン認識化学センサーの静水圧制御に成功~高選択的な分子検出法を確立~
  4. ヒドロホルミル化反応 Hydroformylation
  5. 【書籍】「メタノールエコノミー」~CO2をエネルギーに変える逆転の発想~
  6. 松田 豊 Yutaka Matsuda
  7. 第97回 触媒化学融合研究センター講演会に参加してみた
  8. 有機反応機構の書き方
  9. 出張増の強い味方!「エクスプレス予約」
  10. リチャード・シュロック Richard R. Schrock

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2010年5月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

アクリルアミド類のanti-Michael型付加反応の開発ーPd触媒による反応中間体の安定性が鍵―

第622回のスポットライトリサーチは、東京理科大学大学院理学研究科(松田研究室)修士2年の茂呂 諒太…

エントロピーを表す記号はなぜSなのか

Tshozoです。エントロピーの後日談が8年経っても一向に進んでないのは私が熱力学に向いてないことの…

AI解析プラットフォーム Multi-Sigmaとは?

Multi-Sigmaは少ないデータからAIによる予測、要因分析、最適化まで解析可能なプラットフォー…

【11/20~22】第41回メディシナルケミストリーシンポジウム@京都

概要メディシナルケミストリーシンポジウムは、日本の創薬力の向上或いは関連研究分野…

有機電解合成のはなし ~アンモニア常温常圧合成のキー技術~

(出典:燃料アンモニアサプライチェーンの構築 | NEDO グリーンイノベーション基金)Ts…

光触媒でエステルを多電子還元する

第621回のスポットライトリサーチは、分子科学研究所 生命・錯体分子科学研究領域(魚住グループ)にて…

ケムステSlackが開設5周年を迎えました!

日本初の化学専用オープンコミュニティとして発足した「ケムステSlack」が、めで…

人事・DX推進のご担当者の方へ〜研究開発でDXを進めるには

開催日:2024/07/24 申込みはこちら■開催概要新たな技術が生まれ続けるVUCAな…

酵素を照らす新たな光!アミノ酸の酸化的クロスカップリング

酵素と可視光レドックス触媒を協働させる、アミノ酸の酸化的クロスカップリング反応が開発された。多様な非…

二元貴金属酸化物触媒によるC–H活性化: 分子状酸素を酸化剤とするアレーンとカルボン酸の酸化的カップリング

第620回のスポットライトリサーチは、横浜国立大学大学院工学研究院(本倉研究室)の長谷川 慎吾 助教…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP