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ケミカルバイオロジー

安藤弘宗 Hiromune Ando

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安藤弘宗(あんどう ひろむね, 1971年8月14日-)は、日本の化学者である。岐阜大学教授。

経歴

1994 岐阜大学農学部生物資源利用学科 卒業
1996岐阜大学大学院農学研究科生物資源利用学専攻 修士号取得

1999岐阜大学大学院連合農学研究科生物資源科学専攻 博士号取得(長谷川 明教授・木曽 真教授)
1999 科学技術振興事業団CREST博士研究員
2001 岐阜大学農学部 教務補佐員
2002 日本学術振興会特別研究員
2003 岐阜大学生命科学総合研究支援センター 助手
2007 同助教
2008 京都大学 物質―細胞統合システム拠点(WPI- ICeMS) 准教授
岐阜大学応用生物科学部 准教授
2017- 岐阜大学 生命の鎖統合研究センター(G-CHAIN) 教授
2020- 東海国立大学機構 糖鎖生命コア研究拠点(iGCORE) 拠点長

受賞歴

2007 第10回日本糖質学会奨励賞
2008 有機合成化学協会東海支部奨励賞
2012 農芸化学奨励賞(日本農芸化学会)

研究業績

シアル酸を含有する複雑な糖脂質(ガングリオシド)の化学合成 (1-5)

細胞表面には複雑多様な糖鎖の複合体(糖脂質、糖タンパク質など)が細胞を覆うように存在している。糖衣(glycocalyx)と呼ばれる細胞表面糖鎖は、物理的な細胞表面の保護のみならず、生体界面分子として外界因子と細胞とのコミュニケーションに不可欠な役割を担っている。中でも、シアル酸を含む糖脂質の一大ファミリーであるガングリオシドは、中心的な役割を果たす。しかし、複雑多様なガングリオシドを合成する技術が確立していないため、分子レベルの機能解明が進んでいない。安藤・木曽ら(岐阜大・生理活性物質学研究室)は、高反応性のシアル酸合成ユニット、脂質導入ユニットを開発することで、複雑な糖鎖構造を有するガングリオシドの合成法を確立した。

糖鎖の分子間相互作用を解析・観測するための分子プローブの開発 

糖鎖生物学では、細胞膜糖鎖の相互作用を細胞外の分子との相互作用(トランス相互作用)と同一細胞膜上の分子との相互作用(シス相互作用)の二つの様式に分類している。トランス相互作用では、細胞外部に存在する糖鎖の構造が特異性を担う部分であり、原子レベルでの糖鎖結合タンパク質との相互作用解析には、X線結晶構造解析やNMRが威力を発揮する。安藤・木曽らは、X線結晶構造解析における強力な位相決定法であるSAD/MAD法が適用可能であり、かつNMRの核種としても利用可能なセレン原子を糖鎖に組み込んだセレノ糖鎖プローブを開発し、糖鎖―タンパク質相互作用の解析に有用であることを示した(共同研究者:加藤龍一・高エネ研)、山口芳樹(東北医薬大)(6,7,8)。一方、シス相互作用においては、細胞膜外にある糖鎖構造と共に細胞膜中に存在する脂質部分やタンパク質部分の関与が重要である。さらに、細胞膜では膜分子が側方拡散を主とする運動を続けていることが重要な意味を持つ。特に、シグナル伝達、膜輸送、アミロイド凝集の足場として働くとされている脂質ラフト、糖脂質ドメインの形成は、膜分子と糖脂質の相互作用が複雑に絡む動的な過程であり、これらのドメインの形成過程や機能の分子基盤の解明には、生細胞膜での分子挙動を直接捉える外に有効な手段が存在していない。安藤・木曽らは、前述のガングリオシド合成法を確立したことにより、蛍光色素を導入した蛍光ガングリオシドの合成が可能となり、楠見明弘(OIST)、鈴木健一(岐阜大)グループと共同して、生細胞膜分子の1分子イメージングに適用可能な蛍光ガングリオシドプローブを開発した。これらのプローブを用いた1分子イメージングによって、細胞膜で脂質ラフトが形成される様子を世界で初めて捉えることに成功した(9)。

シアル酸グリコシド化の完全立体制御法の確立

安藤・木曽らが、確立したガングリオシド合成法の要訣は、最も難易度の高いグリコシル化であるシアル酸のαグリコシド化を合成の序盤で行う“シアリル化最優先”の戦略を最適化したところにある。しかしながら、おおよそ糖鎖の終端に位置するシアル酸を先にグリコシル化する方法論にも制約が生じる。シアル酸含有糖鎖のケミカルバイオロジーを発展させるためには、高機能化した糖鎖プローブを開発することが不可欠であり、機能研究との合目的性の高い方法論の確立が不可欠である。安藤らのグループは、シアル酸の構造の特徴であるアノマー炭素に結合するカルボキシル基と5位のアミノ基を架橋した大環状化シアル酸を糖供与体として用いることにより、完全にαグリコシドのみを得ることに成功した(10)。環状化したシアル酸のオキソカルベニウムイオンは、橋頭位カチオンとなり、求核種の攻撃面は一方に限定される。シアル酸のアノマー炭素の立体化学がαの時、カルボキシル基とアミノ基は1,4-シス配置となり架橋による立体固定が容易となる。これを利用して、安藤らは橋頭位炭素のsp2平面構造を許容する架橋部の長さを種々検討し、遊離水酸基を持つ糖受容体の構造の影響を全く受けない、シアル酸の完全なα選択的グリコシド化に初めて成功した。これは糖化学の50年来の難題解決である。この手法により、これまでは、技術的な困難を伴ったオリゴ糖や糖脂質の水酸基にシアル酸を結合することが可能となった(11, 12)。

 

関連文献

  1. Ando, H.; Koike, Y.; Ishida, H.; Kiso, M. Tetrahedron Lett. 2003, 44, 6883-6886. DOI: 10.1016/S0040-4039(03)01707-6
  2. Ando, H.; Koike, Y.; Koizumi, S.; Ishida, H.; Kiso, M. Angew. Chem. Int. Ed. 2005, 44, 6759-6763. DOI:10.1002/anie.200501608
  3. Tamai, H.; Ando, H.; Tanaka, H. N.; Hosoda-Yabe, R.; Yabe, T.; Ishida, H.; Kiso, M. Angew. Chem. Int. Ed. 2011, 50, 2330-2333. DOI:10.1002/anie.201006035
  4. Goto, K.; Sawa, M.; Tamai, H.; Imamura, A.; Ando, H.; Ishida, H.; Kiso, M. Chemi Eur. J.  2016, 22, 8323-8331. DOI:10.1002/chem.201600970
  5. Goto, K.; Tamai, H.; Takeda, Y.; Tanaka, H. N.; Mizuno, T.; Imamura, A.; Ishida, H.; Kiso, M.; Ando, H. Org. Lett. 2019, 21, 4054-4057. DOI: 10.1021/acs.orglett.9b01229
  6. Suzuki, T.; Makyio, H.; Ando, H.; Komura, N.; Menjo, M.; Yamada, Y.; Imamura, A.; Ishida, H.;  Wakatsuki, S.; Kato, R.; Kiso, M. Bioorg. Med. Chem. 2014, 22, 2090-2101. DOI:10.1016/j.bmc.2014.02.023
  7. Shimabukuro, J.; Makyio, H.; Suzuki, T.; Nishikawa, Y.; Kawasaki, M.; Imamura, A.; Ishida, H.;  Ando, H.; Kato, R.; Kiso, M. Bioorg. Med. Chem. 2017, 25, 1132-1142. DOI:10.1016/j.bmc.2016.12.021
  8. Suzuki, T.; Hayashi, C.; Komura, N.; Tamai, R.; Uzawa, J.; Ogawa, J.; Tanaka, H. N.; Imamura, A.;  Ishida, H.; Kiso, M.; Yamaguchi, Y.; Ando, H. Org. Lett. 2019, 21, 6393-6396. DOI:10.1021/acs.orglett.9b02303
  9. Komura, N.; Suzuki, K. G.; Ando, H.; Konishi, M.; Koikeda, M.; Imamura, A.; Chadda, R.; Fujiwara, T. K.; Tsuboi, H.; Sheng, R.; Cho, W.; Furukawa, K.; Furukawa, K.; Yamauchi, Y.; Ishida, H.; Kusumi, A.; Kiso, M. Nat. Chem. Biol. 2016, 12, 402-410. DOI:10.1038/nchembio.2059
  10. Komura, N.; Kato, K.; Udagawa, T.; Asano, S.; Tanaka, H. N.; Imamura A.; Ishida, H.; Kiso, M.;  Ando, H. Science 2019, 364, 677–680. DOI:10.1126/science.aaw4866
  11. Asano, S.; Pal, R.; Tanaka, H. N.; Imamura, A.; Ishida, H.; Suzuki, K. G. N.; Ando, H. Int. J. Mol. Sci. 2019, 20. DOI:10.3390/ijms20246187
  12. Takahashi, M.; Shirasaki, J.; Komura, N.; Sasaki, K.; Tanaka, H. N.; Imamura, A.; Ishida, H.;  Hanashima, S.; Murata, M.; Ando, H. Org. Biomol. Chem. 2020, 18, 2902-2913. DOI:10.1039/d0ob00437e

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有機合成を専門とする教員。将来取り組む研究分野を探し求める「なんでも屋」。若いうちに色々なケミストリーに触れようと邁進中。

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