[スポンサーリンク]

一般的な話題

PL法 ? ものづくりの担い手として知っておきたい法律

[スポンサーリンク]

2010年も半分が過ぎました。7月1日はそんな一年の後半初日ですが、1995年にPL法(製造物責任法)が施行された日でもあります。ChemStationをご覧の方の中には、市場に出回っている商品を手がけた経験のある方もおられると思いますが、その手の現場とは縁の無い方も多くおられると思います。このつぶやきに化学の話は出てきませんが、知っておいて損の無い法律のお話を、筆者なりに理解した範囲でごく簡単にご紹介させていただきます。

被害者救済を目的として作られた法律

例えば新しいテレビを買ってきて、お茶の間でサッカー観戦(ブオォォォォォ…とアレを吹いていらした方も?)。よくある家庭のひとコマです。隣近所に迷惑をかけない程度に応援に熱くなるのは問題ありませんが、テレビが熱くなりすぎて火を吹き、あろうことか家族が怪我をしてしまったら大変なことです。消火をし速やかに怪我人をお医者に見せることがまず大事ですが、事が落ち着いたら出るところへ出て補償を頂かなくては、腹の虫が治まらない、という方も少なくないでしょう。そんな時、PL法が無かったら大変な苦労をすることになります。

従来でも、民法の不法行為法という法律に則って賠償請求をすることができました。しかしそこには大きな落とし穴が…加害者(製造業者)の故意あるいは過失を立証するのは、原告である被害者の責任において為されなければならなかったのです。世の中を性善説的に考える希望は失いたくはありませんが、残念ながら会社の不利になる情報をおめおめと提供する被告というのも考え難く、一般には圧倒的に知識の劣る消費者側が泣き寝入りをすることが少なくなかったことは想像に難くありません。

PL法はそもそも、これら被害者の立証責任を軽減しようという試みで制定された法律です。これによって、被害者はただ製品の欠陥だけを証明すれば良いことになったのです。
(※ウィキペディア記載の説明には、PL法成立以前にも実際には製品の欠陥を証明することで製造者の過失の証明とし、被害者を救済していたとも書かれています。)

 

こんな法律が無くても困らない世の中を

PL法によって気軽に(?)訴訟を起こすことが可能になった現在、製造業者は以前にも増して注意深く製品を検査し、過剰なまでの警告表示をするようになりました。その背景には、時折メディアを騒がす数々の海の向こうのトンデモ判決?の影響もあるのかもしれません。(某ファストフード店にてホットコーヒーを購入した客が、そのコーヒーをこぼして火傷を負ったのは熱すぎるコーヒーを売った店のせい、…にわかには信じがたいですが、本当です。)

中には一般に理不尽と思しき訴えもあるやもしれませんが、しかし製造者側の過失によって不幸にも被害に遭ってしまう消費者は実際にいるわけです(正確には生命、身体または財産に被害を受けてしまったら適用)。世界のものづくりを支える我々化学者も、既に心して日夜ハードワークされている方がほとんどだとは思いますが、今一度この法律の存在意義を気に留めておいても悪くはないのではないかと思います。

 

外部リンク

 

関連書籍

[amazonjs asin=”4487804094″ locale=”JP” title=”感動する化学 未来を開く化学の世界”]
Avatar photo

せきとも

投稿者の記事一覧

他人のお金で海外旅行もとい留学を重ね、現在カナダの某五大湖畔で院生。かつては専ら有機化学がテーマであったが、現在は有機無機ハイブリッドのシリカ材料を扱いつつ、高分子化学に

関連記事

  1. 固体なのに動くシャトリング分子
  2. クリック反応の反応機構が覆される
  3. 超分子ランダム共重合を利用して、二つの”かたち”が調和されたよう…
  4. 高機能・高性能シリコーン材料創製の鍵となるシロキサン結合のワンポ…
  5. 反応機構を書いてみよう!~電子の矢印講座・その1~
  6. スケールアップのためのインフォマティクス活用 -ラボスケールから…
  7. 第9回慶應有機化学若手シンポジウム
  8. 第32回光学活性化合物シンポジウム

注目情報

ピックアップ記事

  1. 「細胞専用の非水溶媒」という概念を構築
  2. 経済産業省ってどんなところ? ~製造産業局・素材産業課・革新素材室における研究開発専門職について~
  3. 会社でも英語を重視?―さて詮なきことか善きことか
  4. 【悲報】HGS 分子構造模型 入手不能に
  5. ルミノール誘導体を用いるチロシン選択的タンパク質修飾法
  6. 上田 善弘 Yoshihiro Ueda
  7. 研究者の成長を予測できる?:JDream Expert Finder
  8. 文具に凝るといふことを化学者もしてみむとてするなり : ② 「ポスト・イット アドバンス」
  9. シャウ ピリミジン合成 Shaw Pyrimidine Synthesis
  10. 金属材料・セラミックス材料領域におけるマテリアルズ・インフォマティクスの活用

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2010年7月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  

注目情報

最新記事

7th Compound Challengeが開催されます!【エントリー〆切:2026年03月02日】 集え、”腕に覚えあり”の合成化学者!!

メルク株式会社より全世界の合成化学者と競い合うイベント、7th Compound Challenge…

乙卯研究所【急募】 有機合成化学分野(研究テーマは自由)の研究員募集

乙卯研究所とは乙卯研究所は、1915年の設立以来、広く薬学の研究を行うことを主要事業とし、その研…

大森 建 Ken OHMORI

大森 建(おおもり けん, 1969年 02月 12日–)は、日本の有機合成化学者。東京科学大学(I…

西川俊夫 Toshio NISHIKAWA

西川俊夫(にしかわ としお、1962年6月1日-)は、日本の有機化学者である。名古屋大学大学院生命農…

市川聡 Satoshi ICHIKAWA

市川 聡(Satoshi Ichikawa, 1971年9月28日-)は、日本の有機化学者・創薬化学…

非侵襲で使えるpH計で水溶液中のpHを測ってみた!

今回は、知っているようで知らない、なんとなく分かっているようで実は測定が難しい pH計(pHセンサー…

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

圧力に依存して還元反応が進行!~シクロファン構造を活用した新機能~

第686回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機化学第一研究室(鈴木孝…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP