[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

ひどい論文を書く技術?

[スポンサーリンク]

優れた論文を書くためのノウハウ文は、世の中に多数存在しています。しかし「ひどい論文を書く技術」を述べた文はというと、そうそうお目にかかれはしないでしょう。

Analytical Chemistry最新号のEditorial(doi:10.1021/ac2000169)は、まさにそんな内容となっています。

その栄えあるタイトルは“Skillful writing of an awful research paper” (笑)


ここでは「退屈で、紛らわしく、誤解を招き、情報価値のない論文を書く技術」が、ご丁寧に7つの法則としてまとめられています。

かいつまんでみますと、

法則1. 研究目的を一番最初に説明しない

法則2. 実験結果をはじめに書かず、ミステリー小説のように小出しにしていく

法則3. 簡潔な論文を書くべく、図に説明文やラベルを全く書かない

法則4. 複雑な概念には短い略語を、単純な概念には長い略語を使う

法則5. 自らの主張を支持しつつも、その根拠がほとんどない論文だけ引用する

法則6. 科学論文は堅苦しくあるべきとして、オリジナルフレーズやユーモアを全く使わない

法則7. 完全なるオリジナルアイデアから生まれたものであるべく、結果の解釈、研究のインパクト、他研究との関係性を書かない

・・・勘のよい人はもうおわかりですね? これらはすべて「良い論文を書く秘訣」の裏返しなのです。つまりはこれを反面教師に、良い論文を書いて投稿しよう!ということを皮肉交じりに言ってるのです。

日本語構造に馴染んだ身としては、法則2などは往々にしてやりがちなことですし、生真面目な日本人からしてみれば、法則6などは意外性ある指摘でしょう。いやはや、なかなかタメになりますね。

ただ、こんなEditorialを書かねばならないほどに、読むに耐えない論文の投稿が最近多いのだろうか?・・・といろいろ勘ぐらざるを得ませんね(笑)

 

関連書籍

[amazonjs asin=”4320005716″ locale=”JP” title=”これから論文を書く若者のために 大改訂増補版”][amazonjs asin=”4621081357″ locale=”JP” title=”成功する科学論文 ライティング・投稿編”][amazonjs asin=”4121504801″ locale=”JP” title=”ヒラノ教授の論文必勝法 教科書が教えてくれない裏事情 (中公新書ラクレ)”]

 

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 低投資で効率的な英語学習~有用な教材は身近にある!
  2. AlphaFold3の登場!!再びブレイクスルーとなりうるのか~…
  3. 化学のちからで抗体医薬を武装する
  4. アイルランドに行ってきた②
  5. 理系で研究職以外に進んだ人に話を聞いてみた
  6. 最小のシクロデキストリンを組み上げる!
  7. エチレンを離して!
  8. 分子研「第139回分子科学フォーラム」に参加してみた

注目情報

ピックアップ記事

  1. 株式会社ユーグレナ マザーズに上場
  2. 2007年度ノーベル化学賞を予想!(5)
  3. 化学オリンピックを通して考える日本の理科教育
  4. 第14回ケムステVシンポ「スーパー超分子ワールド」を開催します!
  5. UiO-66: 堅牢なジルコニウムクラスターの面心立方格子
  6. Sim2Realマテリアルズインフォマティクス:データの乏しさを分子シミュレーションにより克服する
  7. 実験の再現性でお困りではありませんか?
  8. 光と励起子が混ざった準粒子 励起子ポラリトン
  9. 好奇心の使い方 Whitesides教授のエッセイより
  10. 光触媒ラジカル付加を鍵とするスポンギアンジテルペン型天然物の全合成

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2011年2月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28  

注目情報

最新記事

データ駆動型生成AIの限界に迫る!生成AIで信頼性の高い分子設計へ

第663回のスポットライトリサーチは、横浜市立大学大学院 生命医科学研究科(生命情報科学研究室)博士…

MDSのはなし 骨髄異形成症候群とそのお薬の開発状況 その2

Tshozoです。前回はMDSについての簡易な情報と歴史と原因を述べるだけで終わってしまったので…

水-有機溶媒の二液相間電子伝達により進行する人工光合成反応

第662回のスポットライトリサーチは、京都大学 大学院工学研究科 物質エネルギー化学専攻 阿部竜研究…

ケムステイブニングミキサー 2025 報告

3月26日から29日の日本化学会第105春季年会に参加されたみなさま、おつかれさまでした!運営に…

【テーマ別ショートウェビナー】今こそ変革の時!マイクロ波が拓く脱炭素時代のプロセス革新

■ウェビナー概要プロセスの脱炭素化及び効率化のキーテクノロジーである”マイクロ波…

予期せぬパラジウム移動を経る環化反応でベンゾヘテロールを作る

1,2-Pd移動を含む予期せぬ連続反応として進行することがわかり、高収率で生成物が得られた。 合…

【27卒】太陽HD研究開発 1day仕事体験

太陽HDでの研究開発職を体感してみませんか?私たちの研究活動についてより近くで体験していただく場…

熱がダメなら光当てれば?Lugdunomycinの全合成

光化学を駆使した、天然物Lugdunomycinの全合成が報告された。紫外光照射による異性化でイソベ…

第59回有機反応若手の会

開催概要有機反応若手の会は、全国の有機化学を研究する大学院生を中心とした若手研究…

多環式分子を一挙に合成!新たなo-キノジメタン生成法の開発

第661回のスポットライトリサーチは、早稲田大学大学院先進理工学研究科(山口潤一郎研究室)博士課程1…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP