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有機合成化学協会誌2022年8月号:二酸化炭素・アリル銅中間体・遺伝子治療・Phaeosphaeride・(−)-11-O-Debenzoyltashironin・(−)-Bilobalide

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有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2022年8月号がオンライン公開されました。

筆者はいま久しぶりに論文執筆漬けの幸せな日々を送っています。みなさまいかがお過ごしでしょうか。夏休みのあなた、有機合成化学協会誌を読んで有機化学に浸りましょう。

今月号も充実の内容です。

キーワードは、「二酸化炭素・アリル銅中間体・遺伝子治療・Phaeosphaeride・(−)-11-O-Debenzoyltashironin・(−)-Bilobalideです。

今回も、会員の方ならばそれぞれの画像をクリックすればJ-STAGEを通してすべてを閲覧することが可能です。

巻頭言:光を鍵にする新しい有機合成への期待

今月号の巻頭言は、広島大学大学院先進理工系科学研究科 安倍 学 教授による寄稿記事です。光駆動型有機合成の力強さを感じさせる巻頭言です。オープンアクセスですのでぜひ。

二酸化炭素の資源化を指向する触媒的精密有機合成反応の開発

山田 徹*、定光勇太、齊藤巧泰

*2021年度有機合成化学協会賞(学術的なもの)受賞

*慶應義塾大学理工学部化学科

二酸化炭素は熱力学的な安定性から「不活性小分子」と考えられてきた。本稿では,穏和な反応温度・反応圧力条件下でも,銀触媒で活性化されたアルキンによるカーボナート中間体のトラップにより脱炭酸工程を抑制し,二酸化炭素をC1合成ユニットとする,複素環化合物などの合成に適用できることを紹介している。

STAT3阻害活性を有するPhaeosphaeride類の全合成

小林健一1*古源 寛2田村 修3

1*北海道医療大学薬学部薬学科

2明治薬科大学大学院薬学研究科

3昭和薬科大学薬学部

Phaeosphaeride類の全合成研究では、合成経路の確立が、構造訂正や生合成を想定した変換、さらに、構造活性相関へつながっていきます。幅広く発展していく研究の物語を感じることのできる論文です。

(–)-11-O-Debenzoyltashironinおよび(–)-Bilobalideの全合成

大多和正樹 1,2 *Ryan A. Shenvi 2 *

1*北里大学薬学部

2*Department of Chemistry, Scripps Research

「高酸化度テルペンの短工程合成をいかに実現するか?」、多くの合成化学者を悩ませてきた問いの1つの正解がここにあります。短い合成経路の中にある1つ1つの反応が斬新で、味わい深く、開発の経緯も含めて、読み応え十分です!!

天然物生合成機能の発現による新しい遺伝子治療

松田真弥、渡辺賢二*

*静岡県立大学薬学部生薬・天然物化学分野

本総合論文は、天然物化学を活用した新規な治療戦略の開発を目指して、ヒト細胞に対する遺伝子導入による天然物合成について述べられております。すなわち、ウイルスベクターを利用した抗腫瘍性天然物フマギリンの合成酵素を遺伝子導入したヒトHeLa細胞に対し、外部より低毒性の基質を導入することで、ヒト細胞中で、細胞毒性を示す天然物の合成に成功しております。

銅触媒による1,3-ジエン類の変換反応:アリル銅中間体を利用する官能基化反応

藤原哲晶*

*京都大学大学院工学研究科

ボリル銅ならびにシリル銅錯体を利用した1,3-ジエンの位置選択的なホウ素ならびにケイ素官能基化についてまとめた総説です。基礎から丁寧に説明されていて読みやすいので、有機合成化学を学ぶ学生はもちろん、分野外の研究者・学生にもお勧めの論文です。

Review de Debut

今月号のReview de Debutは1件です。オープンアクセスですのでぜひ。

骨格編集:ヘテロ環縮小反応の進歩 (東京大学大学院理学系研究科)谷藤 涼

感動の瞬間:光化学事始め

今月号の感動の瞬間は、東京工業大学の穐田 宗隆 名誉教授による寄稿記事です。
巻頭言に続いて、光化学に関する記事です。紆余曲折の重要性をとても強く感じます。オープンアクセスですのでぜひご覧ください。

これまでの紹介記事は有機合成化学協会誌 紹介記事シリーズを参照してください。

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博士(理学)。大学教員。娘の育児に奮闘しつつも、分子の世界に思いを馳せる日々。

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