[スポンサーリンク]

一般的な話題

血液型をChemistryしてみよう!

[スポンサーリンク]

 

「あなたの血液型は何型?」

輸血でもするわけでもないのに、本邦においては平生から交わされるこの会話。何でも、「血液型で性格が分かる」と言うことになっているらしいです。ABO型の4種類の血液型で分類されるほど人間の性格分類は簡単ではないのに、兎角日本人は”血”で人間を分類したがります。

今回は、数多くある血液型のうち最も有名なABO型に注目し、それを決定する化学構造から、あえて性格を論じられるか考えてみました。

 

ケムステをご覧の皆様は、何となくABO血液型が“糖鎖”で分類されていることを知っているのではないでしょうか? ご存じではなくとも、とにかく、あの甘い”糖”に依っていることは事実です。

でも、化学で言う糖が、すべて甘いわけではありません。苦い糖もあったりしますが、ここではその話はしません。

 

どんな構造かというと、下図のようになるわけです。

blood.jpg

左のO型糖鎖はまあいいとして、右のA型糖鎖とB型糖鎖の違い、ぱっと見で分かりますか?

一番左側の部分がちょっとだけ異なるのが、よく見ると分かると思います。

ちなみに、一番左側の部分は”酵素”によって取り付けられるのです(※この酵素の名前は正確な名前ではありません)。

この構造で血液型が決まるわけですが、こんな違いだけで、性格が決まると思いますか? 思わないですよね。

でも、このちょっとの違いを生物は見分けることができるんですね。なので、違う血液型の血液は混ぜることができないんです。ちなみに、この構造が出現するのは赤血球だけではありません。腸管にも存在することも知られています。(参考:ヒト血液型を認識するプロバイオティック乳酸菌の発見

 

ならば脳内にも・・・と言いたくなりますが、この構造があったからと言って、それだけで性格が大きく変わったら一大事です。何故って?糖鎖は細胞表面に多種多様なものがあり、似たようなものがいっぱい存在するからです。

たくさんある糖鎖のうちほんの一部である、赤血球表面のごく一部が異なるだけで性格が規定されてしまったら、環境の変化に対応できないことでしょう。

この糖鎖構造を決定するのは遺伝子の役割ですから、この遺伝子が全く別の役割も発揮して、性格に関与する可能性がないわけでもありません。ただ現在のところ、そのような報告はありません。

性格は後天的要素が非常に強く、環境によって大きく変化することはあきらかです。

たとえばうちの子供は二人ともAB型ですが、一人は超慎重、一人は自己主張つよしです。これは、兄弟構成に影響されているのは明白ですね。

もちろん100%何ら関与しないと言うことは証明できないので、性格決定にごくわずかながら関与すると言う報告が将来出てくる可能性はあるでしょう。

ただ、性格って何?と今一度考えてほしいところですね。

ところで、”chemistry”という英単語には、「相性」と言う意味があるのを知っていますか? 血液型の化学=血液型の相性・・・・どうでもいいですね。失礼しました。

関連書籍

 

[amazonjs asin=”4061329383″ locale=”JP” title=”生命にとって糖とは何か―生命のカギ・糖鎖の謎をさぐる (ブルーバックス)”][amazonjs asin=”B00F05S7G4″ locale=”JP” title=”血液型の科学 (祥伝社新書)”][amazonjs asin=”478851253X” locale=”JP” title=”性格を科学する心理学のはなし―血液型性格判断に別れを告げよう”]

 

外部リンク

糖鎖について解説してある産総研の資料(PDF)

 

Avatar photo

あぽとーしす

投稿者の記事一覧

微生物から動物、遺伝子工学から有機合成化学まで広く 浅く研究してきました。論文紹介や学会報告などを通じて、研究者間の橋掛けのお手 伝いをできればと思います。一応、大学教員で、糖や酵素の研究をしております。

関連記事

  1. 有機合成化学協会誌2019年12月号:サルコフィトノライド・アミ…
  2. ケムステイブニングミキサー2019ー報告
  3. 人と人との「結合」を「活性化」する
  4. 書物から学ぶ有機化学4
  5. マテリアルズ・インフォマティクスにおける分子生成の基礎
  6. ケムステタイムトラベル2011~忘れてはならない事~
  7. 高校生・学部生必見?!大学学術ランキング!!
  8. 立体規則性および配列を制御した新しい高分子合成法

注目情報

ピックアップ記事

  1. START your chemi-storyー日産化学工業会社説明会2018
  2. 第111回―「予防・診断に有効なナノバイオセンサーと太陽電池の開発」Ted Sargent教授
  3. ケミカル・アリに死刑判決
  4. ダイセル化学、有機合成全製品を値上げ
  5. シュレンクフラスコ(Schlenk flask)
  6. 【7/21 23:59〆切】研究費総額100万円!「AI × ◯◯学」で未来をつくる若手研究者を募集します
  7. 複雑分子を生み出す脱水素型ディールス・アルダー反応
  8. 第二回 伊丹健一郎教授ー合成化学はひとつである
  9. 人工細胞膜上で機能するDNAナノデバイスの新たな精製方法を確立
  10. システインの位置選択的修飾を実現する「π-クランプ法」

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2012年4月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30  

注目情報

最新記事

アクリルアミド類のanti-Michael型付加反応の開発ーPd触媒による反応中間体の安定性が鍵―

第622回のスポットライトリサーチは、東京理科大学大学院理学研究科(松田研究室)修士2年の茂呂 諒太…

エントロピーを表す記号はなぜSなのか

Tshozoです。エントロピーの後日談が8年経っても一向に進んでないのは私が熱力学に向いてないことの…

AI解析プラットフォーム Multi-Sigmaとは?

Multi-Sigmaは少ないデータからAIによる予測、要因分析、最適化まで解析可能なプラットフォー…

【11/20~22】第41回メディシナルケミストリーシンポジウム@京都

概要メディシナルケミストリーシンポジウムは、日本の創薬力の向上或いは関連研究分野…

有機電解合成のはなし ~アンモニア常温常圧合成のキー技術~

(出典:燃料アンモニアサプライチェーンの構築 | NEDO グリーンイノベーション基金)Ts…

光触媒でエステルを多電子還元する

第621回のスポットライトリサーチは、分子科学研究所 生命・錯体分子科学研究領域(魚住グループ)にて…

ケムステSlackが開設5周年を迎えました!

日本初の化学専用オープンコミュニティとして発足した「ケムステSlack」が、めで…

人事・DX推進のご担当者の方へ〜研究開発でDXを進めるには

開催日:2024/07/24 申込みはこちら■開催概要新たな技術が生まれ続けるVUCAな…

酵素を照らす新たな光!アミノ酸の酸化的クロスカップリング

酵素と可視光レドックス触媒を協働させる、アミノ酸の酸化的クロスカップリング反応が開発された。多様な非…

二元貴金属酸化物触媒によるC–H活性化: 分子状酸素を酸化剤とするアレーンとカルボン酸の酸化的カップリング

第620回のスポットライトリサーチは、横浜国立大学大学院工学研究院(本倉研究室)の長谷川 慎吾 助教…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP