[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第111回―「予防・診断に有効なナノバイオセンサーと太陽電池の開発」Ted Sargent教授

[スポンサーリンク]

第111回の海外化学者インタビューは、Ted Sargent教授です。トロント大学電気・計算機工学科に在籍し、コロイド量子ドット光検出器や光起電力、多重化核酸バイオセンサーなどの研究を行っています。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

幼い頃から応用物理学が大好きでした。特に、数学的なツールや物理的なアイデアをコンパクトにまとめたものを使って、応用目的の多様な問題を解決する機会に恵まれました。そして、III-V族化合物の半導体量子光エレクトロニクス(量子井戸レーザーなど)がホットでエキサイティングだった街で育ちました。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

犬の散歩のお供をします。屋外に出て犬と遊ぶのが楽しいです。

Q. 現在取り組んでいることは何ですか?そしてそれをどう展開させたいですか?

(1) 現在の太陽電池は、高効率か低コストかのいずれかで、それらは両立されていません。それを打破しようとしています。分光的に調節可能な溶液処理を施したコロイド量子ドットを太陽電池に組み込むことで、赤外線を含む太陽の全スペクトルを利用できるようにして、これを打破しようとしています。

(2) 化学者のShana Kelley教授と共同で、病気の前兆となる核酸バイオマーカーパネルを検出可能なチップづくりに取り組んでいます。我々のグループでは、分子餌配列を提示するために多様なナノ構造を活用しています。シグナルを得るためにKelleyチームの電気触媒レポーターシステムを使用し、チップ上のナノ構造を統合するためにトップダウンリソグラフィーとボトムアップ材料化学を融合的に活用しています。我々は、低コストで高感度、広ダイナミックレンジの分子検出システムを共同で構築しています。

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

ジョージ・ワシントンです。彼の話を読めば読むほど、実際的な聡明さと虚飾のなさを併せ持つ人間だったことが明らかになってきます。彼はあまりにも多くのことを心配し、絶望さえしており、それでも勝利を収めています。私にとっても大好きな話です。成功を当然のものとすることなしに、自らに自信を持っていたのです。

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

大学院生だった頃の話です。最後の実験のいくつかは、水平電流注入レーザー電流-電圧-光特性の低温(30-250K)測定に関係していました。この新たなクラスのデバイス内部の仕組みを解明するのに、温度は力を発揮する実験自由度たることがわかりました。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

本:ニューヨーク・タイムズ表紙の全集(1851-2008)です。
音楽:グレン・グールドとバッハの『The Partitas, Preludes Fughettas & Fugues 』にします。

[amazonjs asin=”B00000DS81″ locale=”JP” title=”Complete Partitas, Preludes, Fugues & , Fughettas”]

Q.「Reactions」でインタビューしてほしい化学者と、その理由を教えてください。

ハリー・アトウォーターデビッド・ジンジャーです。どちらも驚くほど有能で多才な {物質科学者 – 応用物理学者 – 化学者 – エンジニアの} 学際的融合を成し遂げました。地球上で彼らがどのようにして磨かれ、どのようにして非常に多くの顕著な才能と、非常に多くの知識を融合させたのかを、どちらのケースも知りたく思います。

 

原文:Reactions –  Ted Sargent

※このインタビューは2009年4月10日に公開されました。

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 第12回 金属錯体から始まる化学ー伊藤肇教授
  2. 第50回―「糖やキラル分子の超分子化学センサーを創り出す」Ton…
  3. 第61回「セラミックス粉体の合成から評価解析に至るまでのハイスル…
  4. 第10回 太陽光エネルギーの効率的変換に挑むー若宮淳志准教授
  5. 第46回―「分子レベルの情報操作を目指す」Howard Colq…
  6. 第124回―「生物・医療応用を見据えたマイクロ流体システムの開発…
  7. 第42回「激動の時代を研究者として生きる」荘司長三教授
  8. 第34回 生物学と合成化学のハイブリッド高分子材料を開発する―J…

注目情報

ピックアップ記事

  1. アミンの新合成法2
  2. ホウ素から糖に手渡される宅配便
  3. かさ高い非天然α-アミノ酸の新規合成方法の開発とペプチドへの導入~中分子ペプチド医薬品開発に向けて~
  4. 鍛冶屋はなぜ「鉄を熱いうちに」打つのか?
  5. ケムステ版・ノーベル化学賞候補者リスト【2019年版】
  6. 複雑な生化学反応の条件検討に最適! マイクロ流体技術を使った新手法
  7. 有機合成化学協会誌2018年12月号:シアリダーゼ・Brook転位・末端選択的酸化・キサンテン・ヨウ素反応剤・ニッケル触媒・Edoxaban中間体・逆電子要請型[4+2]環化付加
  8. クルチウス転位 Curtius Rearrangement
  9. 2021年化学企業トップの年頭所感を読み解く
  10. 最近の有機化学注目論文1

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2020年8月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

Pdナノ粒子触媒による1,3-ジエン化合物の酸化的アミノ化反応の開発

第629回のスポットライトリサーチは、関西大学大学院 理工学研究科(触媒有機化学研究室)博士課程後期…

第4回鈴木章賞授賞式&第8回ICReDD国際シンポジウム開催のお知らせ

計算科学,情報科学,実験科学の3分野融合による新たな化学反応開発に興味のある方はぜひご参加ください!…

光と励起子が混ざった準粒子 ”励起子ポラリトン”

励起子とは半導体を励起すると、電子が価電子帯から伝導帯に移動する。価電子帯には電子が抜けた後の欠…

三員環内外に三連続不斉中心を構築 –NHCによる亜鉛エノール化ホモエノラートの精密制御–

第 628 回のスポットライトリサーチは、東北大学大学院薬学研究科 分子薬科学専…

丸岡 啓二 Keiji Maruoka

丸岡啓二 (まるおか けいじ)は日本の有機化学者である。京都大学大学院薬学研究科 特任教授。専門は有…

電子一つで結合!炭素の新たな結合を実現

第627回のスポットライトリサーチは、北海道大有機化学第一研究室(鈴木孝紀教授、石垣侑祐准教授)で行…

柔軟な姿勢が成功を引き寄せた50代技術者の初転職。現職と同等の待遇を維持した確かなサポート

50代での転職に不安を感じる方も多いかもしれません。しかし、長年にわたり築き上げてきた専門性は大きな…

SNS予想で盛り上がれ!2024年ノーベル化学賞は誰の手に?

さてことしもいよいよ、ノーベル賞シーズンが到来します!化学賞は日本時間 2024…

「理研シンポジウム 第三回冷却分子・精密分光シンポジウム」を聴講してみた

bergです。この度は2024年8月30日(金)~31日(土)に電気通信大学とオンラインにて開催され…

【書籍】Pythonで動かして始める量子化学計算

概要PythonとPsi4を用いて量子化学計算の基本を学べる,初学者向けの入門書。(引用:コ…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP