[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

iPadで計算化学にチャレンジ:iSpartan

 

 

計算化学という分野は、主にPC等の計算機によって分子の構造やその性質、変化等をシミュレーションする、という研究を行なっています。

昔は、計算用のPCも計算用のソフトも非常に高価であったため、専門の研究者がいなければ大学などでも購入しない、というのが一般的でした。しかし、最近では通常のPC程度でも、高分子でなければ比較的信頼性の高い様々なデータを計算によって求めることが出来るようになりました。

ごく最近、さらにその計算化学を手元のタブレットでできちゃう!?という驚愕アプリが登場しました。

それが、iSpartanです。

iSpartanってどんなアプリ?

化学研究者によく使われている分子モデリングソフトウェアspartanの機能を一部アプリに移植したものと考えればよいでしょう。

iSpartanでは、自分で分子構造を作図し、この二次元のスケッチを三次元構造に変換します。その後、配座解析を実施でき、それぞれの状態での構造情報を計測できます。そこから、web上のデータをダウンロードし、NMRとIRのスペクトル、分子軌道、静電ポテンシャルマップ、および原子および分子の各種プロパティ情報にアクセスすることができます。

 

iSpartanのつかいかた

まずは、iSpartan Appを起動すると、こんな感じ。

IMG_0088.PNG

図:iSpartanを起動!

インストールて初めて起動したときは左上に構造作図用のメニューがありますが、移動することもできます。

試しにエタノールを描いてみると…

iSpartan-Ethanol作成.png

図:エタノールを書いてみました

10秒くらいですぐにできました。

Cのボタンをタップしてから、白いキャンバス上に線をちょっとひっぱるとすぐにCH3-CH3ができるので、片方のCからOをちょっと引っ張るだけでできます。

ここまでできたら、下のバーのなかの3Dボタンをタッチすると、そこからMM法で計算がスタート!

 

iSpartan-Ethanol3D

図:計算後すぐに3次元構造が表示される

 

上図のようにすぐに3次元構造が表示され、くるくる回転させたりして楽しめます。

画面上にいくつかボタンがあります。左側のグループは、左より3D構造表示、配座解析の結果の表示、データベースの検索ボタンとなっています。右側のボタンのグループは、左側から分子軌道、静電ポテンシャル、分子情報、IR、1H-NMR、13C-NMRが表示されるボタンになっていますが、分子情報以外はデータベースからデータを落としてこないとみられませんので、はじめはボタン表示が薄くなっています。

 

 分子を解析してみる

 

とりあえず、配座解析できたのかみると

iSpartan-Ethanol-ConformationalAnalysis

図:エタノールの配座

ちゃんと、-OHが回転する2パターンの配座が解析できていました。

ここから、データを検索させてみます。

iSPartan-Ethanol-Cloud

図:データを検索

すると、物質名が画面下の白いバーに表示され、右上のボタン表示が濃くなり、有効になったことを示しています。

本当にNMRとか見られるのか…と思い、まずはNMRを見てみることに。

 

iSPartan-Ethanol-1HNMR

図:NMR(1H)を表示させてみる

ちゃんと1H-NMRが表示されるだけでなく、ピークを選択することで、水素の帰属までできています。

ちなみに、一応13C-NMRも見てみると…

iSPartan-Ethanol-13CNMR

図:13C-NMRもバッチリ見れます

こちらもバッチリ。

他も、きっちり確認してみるといろいろとみれることがわかりました。例えば、軌道を表示してからHOMOを選択してみました。

iSpartan-Ethanol-HOMO

図:エタノールのHOMO

静電ポテンシャルはいかが?でました。

iSPartan-Ethanol-EPED

図:エタノールの静電ポテンシャル

 

続いて、IRスペクトル。iPadでは動画が撮影できないので伝えられませんが、ピークを選択すると分子が振動してなかなか面白いです。

 

iSPartan-Ethanol-IR

図:IRスペクトル。ピークを選択するとその部分が振動します

分子情報はこんな感じで、分子内の原子間距離なども詳細に表示されています。

iSPartan-Ethanol-info

 

ちなみに、どこのページでもキャンバス上の右上のボタンを押すことで、データの保存や送信ができるというすぐれもの。

iSpartan-dataout

図:表示された分子を様々な方法でアウトプット

もうちょっと触ってみます

じゃあ、次にリモネンでも作ってみようかな、と思った私ですが…

iSpartan-Limonen-int

図:リモネンを書いています。

 

途中まで構造を覚えていたのに、最後肝心なところを忘れてしまった… なんてこと、ありますよね?

そんなときのための、?ボタン!

これを使って…

iSpartan-Limonen-QConf

図:わからないところを?にしてみると

 

こんな感じに構造を作ります。ここから、画面下のボタン左から3つ目のSearchをタップ! すると…

 

iSPartan-Limonen-Search

図:リモネンがでた!

不明な部分に色々な置換基を含む化合物の一覧が表示され、その中にちゃんと目的のLimoneneが!いやー、忘れっぽい私には大助かりの機能ですね。

ここまでできて、お値段たったの1700円!! 今後リリースされるiSpartan Server(win/mac)によって、自分でデータを計算し、cloud上のデータを増やすこともできるようです。

 

複雑な分子も問題なし

ちなみに、もう少し複雑な分子ストリキニーネも作ってみました。構造も数分でささっと。

 

iSpartan-Strychnine

図:ストリキニーネを書いてみました

さすがに、3Dモデル表示には10秒くらいかかりました。

 

iSpartan-Strychnine-3D

図:分子モデルを表示

配座解析には、1分半ほど。

iSpartan-Strychnine-ConformationAnalysis

図:計算後

ストリキニーネのデータがクラウド上になかったのが残念!ですが、分子情報の一部はちゃんと表示できました。

 

iSpartan-Strychnine-info

 

というわけで教育的にも使えそうな予感満載のiSpartan。購入は、こちらから。

iSpartanIconiSpartan Apps

The following two tabs change content below.
chemaholic

chemaholic

修士(化学教育)取得後、公立高校に勤務している高校教師です。わかりやすく!をモットーに、身近なところに潜むトピックに迫りたいと思っています。
chemaholic

最新記事 by chemaholic (全て見る)

関連記事

  1. (+)-sieboldineの全合成
  2. 斬新な官能基変換を可能にするパラジウム触媒
  3. 和製マスコミの科学報道へ不平不満が絶えないのはなぜか
  4. えれめんトランプをやってみた
  5. 2007年ノーベル化学賞『固体表面上の化学反応の研究』
  6. ReadCubeを使い倒す(1)~論文閲覧プロセスを全て完結させ…
  7. Anti-Markovnikov Hydration~一級アルコ…
  8. YMC研究奨励金当選者の声

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 健康食品 高まる開発熱 新素材も続々
  2. 製薬会社5年後の行方
  3. 米ファイザー、感染予防薬のバイキュロンを買収
  4. ギンコライド ginkgolide
  5. 光で分子の結合状態を変えることに成功
  6. 浜地 格 Itaru Hamachi
  7. 質量分析で使うRMS errorって?
  8. ブレデレック ピリミジン合成 Bredereck Pyrimidine Synthesis
  9. マイケル・クリシェー Michael J. Krische
  10. 日本化学会、論文無料公開へ新方式

関連商品

注目情報

注目情報

最新記事

2017年の注目分子はどれ?

今年も残りあとわずかとなり、毎年おなじみのアメリカ化学会(ACS)によるMolecules of t…

アルデヒドのC-Hクロスカップリングによるケトン合成

プリンストン大学・David W. C. MacMillanらは、可視光レドックス触媒、ニッケル触媒…

“かぼちゃ分子”内で分子内Diels–Alder反応

環状水溶性ホスト分子であるククルビットウリルを用いて生体内酵素Diels–Alderaseの活性を模…

トーマス・レクタ Thomas Lectka

トーマス・レクタ (Thomas Lectka、19xx年xx月x日(デトロイト生)-)は、米国の有…

有機合成化学協会誌2017年12月号:四ヨウ化チタン・高機能金属ナノクラスター・ジシリルベンゼン・超分子タンパク質・マンノペプチマイシンアグリコン

2017年も残すところあとわずかですね。みなさまにとって2017年はどのような年でしたでしょうか。…

イミデートラジカルを経由するアルコールのβ位選択的C-Hアミノ化反応

オハイオ州立大学・David A. Nagibらは、脂肪族アルコールのラジカル関与型β位選択的C(s…

Chem-Station Twitter

PAGE TOP