[スポンサーリンク]

一般的な話題

博士課程の夢:また私はなぜ心配するのを止めて進学を選んだか

新年度です。私も博士後期課程3年生になりました。新年度最初に書く記事は「なぜ博士課程に進んだか」をテーマにしたいと思います。博士課程進学というトピックでインターネットを検索すると、ポスドク問題や海外で闘う上での必要性、将来就職する上でのメリットデメリットなど、進学を再考させる客観的に書かれた内容が多い気がします。生の声があまりに少ないと思うので、ここでは私が考えたことをありのままに書きたいと思います。

あなたの夢は何ですか?

私の夢は立派な研究者になることでも、世の中の役に立つ発明をすることでもなく、「一度きりしかない自分の人生を過ごせてよかった」と思えることです。宗教観はないので、具体的な方策は少しずつ変わり続けています。

ではなぜ研究をしているか?世の中には私自身はもちろん、人類がまだ知らないことがたくさんあり、知れば知るほどおもしろくなるという単純な理由からです。

もともとは星空が好きだったということもあり、宇宙関係の勉強がしたいと思っていました。高校の頃得意だった科目は物理、興味があったのは航空宇宙です。しかしあえて化学を選んだ理由は、身近から遠くまであるものだからです。遠くに行くためには今いる地点からそこに到達するまでの技術が必要です。私は絵心がないので図面で機械を設計することは向いていないかもしれません。しかし、料理が好きなので化学合成は楽しい。簡略化して、いいものを考えていくのが好きです。自分が宇宙へのステップを作るならば、と考えて材料化学というカテゴリを選びました。宇宙でも使われた素材・エアロゲルを研究し続けています。

博士課程に進む理由を難しく考え出すときりがありません。大事なのは自分が何をしていきたいかだと思います。頭は誰かを幸せにするためのものでも社会に尽くすためのものではなく、まずは自分自身がいい人生を送るために鍛えられるべきだと考えています。自分がまず幸せにならなければ周りをよくすることはできません。

化学(科学)が好き!

それだけでも夢を追うのに十分な理由じゃないですか!ネガティブな情報を集めて妥協するのではなく、大切な夢を見続け輝く人生を送る人が増えて欲しいと願っています。

なぜ新しいことに挑戦するのか?

少年漫画を読んでいると、夢や冒険、たくさん出てきますよね?ONE PIECEが売れている理由は、人がそういうワクワクを求めているからだと思います。研究をするということは冒険していくことです。宝を見つけること、誰も知らない新しいことを発見すること、どちらも同じだけの価値があると思います。

挑戦するということはリスクを負うことでもあります。誰もが当然そこで躊躇します。しかし、歩いて行くだけで宝に辿り着く物語、おもしろいですか?根性論は好きではありませんが、好きなことならば何としても挑戦すべきだと思います。気持ちが滅びそうになったら何度でも蘇りましょう。辛くなったときに助けてくれる仲間がいない日本ではないでしょう。

不安はないのか?

不安はありました。博士課程に進んで多くのひとが抱えるのは将来の不安です。親や周囲の友人まで巻込みます。モラトリアムだと罵られることもたくさんあります。将来の話がきっかけで付き合っていた人と別れたこともありますし、周囲から毎年人が去って行く(見送っていく)のを寂しく感じています。

それでもなぜ博士に進学したのか?何度もいうように、初心を貫いて自分の夢を追いたいからです。論理的ではありませんが、確かな答えがないものに対してはそう考えるしかありません。デメリットや不安は何にでもあるので考えていても仕方がありません。ひとつひとつ乗り越えていくことで実績を育てることをまずは考えましょう。うまくいけば不安など忘れられていきます。とにかく前を向いておもしろい成果、つまりは結果を出そうと心がけています。

修士から博士に進んで何が変わるのか?

知識量が圧倒的に増えます。周りの世界が広がります。

私があえていう必要のないことですが、知識が増えるというのは学問をやっていく上でとても大切なことです。論文を読むにしても、学会に参加するにしても、増えれば増えるほど益々おもしろくなっていきます。世の中(とはいってもある分野の中で)の最先端がどのように動いているのかがわかります。無論、これは会社に入ってもできることでしょう。しかし博士はより自由です。たった数ヶ月の就職活動ではなく、数年間かけて自分のやりたいことを選ぶことができます。選択肢がなければ自分で新しい研究を作っていくことができるのが最大のメリット です。

(勝手にやっている場面も多くありますが、)幸い私の研究室が自由な環境であるため、新しい研究はもちろんのこと、異分野との共同研究や研究アピールまで好きにやらせていただいております。修士までは研究を考えるだけでいっぱいいっぱいでした。ですが自分の研究だけが人生ではありません。周辺分野や発表の仕方にまで視野を広げられたことで研究がずっと楽しくなりました。成果を出すことでいろんな人が集って新しいものが生まれていく過程はキモチイイですね。

博士は修士の延長と考えられがちですが、別物だと考えています。予想外のサプライズが少しずつ出てきて研究が楽しくなっていきます。

Hybrid2013-2

今後どうするのか?どうしたいのか?

学部の頃からずっと同じ研究室にいるので、自分の研究にこだわりがあります。しかし、新たな興味が出てくれば、もしくは求められればいつでも新天地に赴こうと考えています。極端だと思われるかも知れませんが、結婚して誰かの側にいるのが一番いいと思うなら、それで任地を決めるのも正しい判断ではないでしょうか(実際にそういう研究者を知っています)。せっかくユニークな道を選んだのだから、固定観念に囚われずに柔軟でいたいと考えています。

日本はたくさん大学があり、整った環境であると思います。しかしもちろんアカデミックポストだけが選択肢ではありません。条件さえあえば海外に行ったり、企業に入ったり、はたまた自分で会社を興すのも選択肢のひとつだと思います。まだ学生なので選択肢は無限にあります。「足の裏の米粒」とよく称される博士号ですが、どこであってもどんな環境でも新しいことを編み出していける、その意味を私の学位には込めたいと考えています。

以前ひょんなことから研究者マンガ「ハカセという生物(いきもの)」の出版本を作者からいただきました。その中でお気に入りの台詞を紹介しようと思います。

「縛られないのが博士だろ」

終わらないかもしれないものを、自分の手で終わらせちゃいけない

私はネガティブイメージをもたれがちな博士課程の学生の中でも、かなり変わっている存在だと思います。しかし「化学が好き」という考えは皆が共有しているものでしょう。進学と就職で悩んだなら、博士課程に進むべきだと思います。就職はそれからでも探せば見つかるかもしれませんが、若い脳は今しか使えません。

無論、進学だけを薦めたいわけではありません。私も一時期就職活動をしました。進学にしろ就職にしろ起業にしろ、悩み抜いて最良の選択肢を見つけるのが一番だと思います。まだ27歳、学位も取得していない私にとって研究の世界はわからないことだらけです。ですが、自分がやりたいことが最良の道だと考えています。

博士課程についてポジティブなことを言うと、宗教じみているだとか騙されているだとかいう人が必ず出てきます。いいえ、騙しているのも騙されているのもあなた自身でしょう。自分は将来何になりたかったのか?自分は何が好きだったのか?院試や就活をしながらでも、自分の気持ちから逃げずに考えてみてください。やりたいことがあるなら方向転換できる、学生は自由の存在です。

これからの世代、未来を作るのは私たちです。夢をもって進んでいこうじゃありませんか!化学(科学)は楽しいです。一緒に新しい発見をしてワクワクしましょう。読者の中から仲間が増えるのを期待しています。

関連書籍

The following two tabs change content below.
GEN
国立大JK。巨視的規模での多孔性作製を得意としていますが、専門分野があいまいです。バイオロボティクス他いろいろかじっています。化学をおもしろく伝えていきたいと考えています。

関連記事

  1. 高分子を”見る” その1
  2. フライパンの空焚きで有毒ガス発生!?
  3. NaHの水素原子の酸化数は?
  4. やっぱりリンが好き
  5. 異分野交流のススメ:ヨーロッパ若手研究者交流会参加体験より
  6. JEOL RESONANCE「UltraCOOL プローブ」: …
  7. 一度に沢山の医薬分子を放出できるプロドラッグ
  8. 第98回日本化学会春季年会 付設展示会ケムステキャンペーン Pa…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. ルテニウム触媒によるC-C結合活性化を介した水素移動付加環化型カップリング
  2. 超薄型、曲げられるMPU開発 セイコーエプソン
  3. 天然の日焼け止め?
  4. クリック反応の反応機構が覆される
  5. 【速報】2010年ノーベル物理学賞に英の大学教授2人
  6. みんな大好きBRAINIAC
  7. 実験室の笑える?笑えない!事故実例集
  8. アレクサンダー・リッチ Alexander Rich
  9. 沈 建仁 Jian-Ren Shen
  10. 花王、ワキガ臭の発生メカニズムを解明など研究成果を発表

関連商品

注目情報

注目情報

最新記事

分子で作る惑星、その名もナノサターン!

2018年、東工大の豊田真司先生らによって、まるで土星を型どったような分子の合成が報告された。フラー…

磯部 寛之 Hiroyuki Isobe

磯部寛之(いそべひろゆき、1970年11月9日–東京都生まれ)は日本の有機化学者である。東京大学理学…

死海付近で臭素が漏洩

イスラエル警察は死海付近の向上から臭素が漏れだしたことを明らかにし、付近住民に自宅にとどまるよう呼び…

光触媒反応用途の青色LED光源を比較してみた

巷で大流行の可視光レドックス触媒反応ですが、筆者のラボでも活用するようになりました。しかし経…

宮沢賢治の元素図鑑

概要本書は宮沢賢治の作品に登場する元素を取り上げ、作品を入り口として各元素について解説した書…

電子豊富芳香環に対する触媒的芳香族求核置換反応

2017年、ノースカロライナ大学チャペルヒル校・David Nicewiczらは、可視光レドックス触…

Chem-Station Twitter

PAGE TOP