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学振申請書を磨き上げる11のポイント [文章編・前編]

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GWも終わりました。院生の皆さんは、そろそろ学振(DC1/DC2/PD)の応募書類作成に焦り始めるころでしょうか。

筆者は大学に勤務しはじめて数年経ちますが、所属ラボのメンバーは、とてもアクティブに学振申請をしています。毎回多くの添削も依頼され、そのたび直してコメントを付けて返しています。

この作業、相当に時間を食うのです(一回3時間以上かかることも)が、繰り返すことで自分にも様々なノウハウがたまってきました。まさに「learnig by teaching」です。

そんな添削経験からいえることですが、「書き方(文章作成のコツ)」を知っているか否かは実に重要です。内容が同じでも、申請書としての完成度に明らかな差が出てきます。さらに沢山見ているうちに、「多くの学生が押さえられていない基本」もあると思えてきました。それを知らないままに取り組むのはもったいない!

そこで今回は情報共有も兼ね、「申請書を論理的に、分かりやすく仕上げるための文章校正ポイント」を解説してみたいと思います。

0.何はともあれ読んでもらおう!

そもそも読者である「審査員」とはどういう人たちでしょうか?たいていはJSPSから依頼を受けたボランティアの教員・研究員です。

匿名審査システムにつき詳細は明らかではありませんが、一つだけ確実にいえることがあります。それは「審査員=貴方の研究内容について不明な人」だということです。

もちろん専門分野は似ているかもしれません。しかし心から興味の持てる話題ばかりとは限らないでしょうし、少しでも違う分野になると、途端に詳細は分からなくなるものです。

そもそも学振審査というのは、化学の未来を託す人材を選ぶこと。責任の伴う、面倒な作業でもあります。

そんな人たちが、一人あたま何十人分もの申請書を評価しなくてはならない現実です。審査に割いてくれる時間は、(もちろん人に依るでしょうが)長くても20分程度と見ておくべきでしょう。これほど短い時間の間に、研究意義を余さず伝えなくてはなりません。審査員が負担に感じないような「サービス精神あふれる書面作り」は、採用の大前提たることがおわかりでしょう。審査員だって人間です。読みやすい構成になっていない申請書、狭い知り合い間でしか通じない専門用語の乱用、背景提示を欠いた説明、論理が破綻している文章などは一目見ただけでうんざりするはずです。

「申請書はプレゼンテーションの一種である」――言うまでもないことのようですが、意識して徹底出来ている人は意外なほど少ない、というのが偽らざる筆者の実感です。

1.図表重視のアピールを!

[文章編]と銘打ちつついきなり逆説的なことを述べてしまいますが、文章に頼りすぎないようにしましょう。図のほうが情報量が多いですし、読む方もラクです。「図だけ追えば内容が分かる」に超したことはありません(そこまでのレベルに仕上げるのはなかなか難しいですが・・・)。

DC1/2ではカラー図が使用可です。人によってセンスの差がかなり出るところですが、以下の3点に気をつける限り、そこまでひどくはならないはずです。

① 字(フォントサイズ)を大きくする
② 色数を使いすぎない
③ 情報を詰め込みすぎない

ごてごてした図は見づらいばかりか、何が重要なのか一目で分かりません。アピールとしてはマイナスです。

要するにこれらはスライド作りで気をつける点と全く同じです。研究デザインの鉄板サイト・「伝わるデザイン」や、デザイン原則を学べる書籍『ノンデザイナーズ・デザインブック』も参考になると思います。

2.冒頭にまとめを書いてしまおう!

各欄の冒頭数行を割いて、内容の要約から書き出してしまうテクニックです。ここでの万能ワードは『以下に詳細を述べる』

例えば研究提案欄なら

申請者は本提案にて~~の背景から(1)~~(2)~~の解決を目指す。~~~の発想に基づき、~~の実現に取り組む。以下に詳細を述べる。

と真っ先に書いてしまうのです。細かい内容は続けて書けばOK。

これ、個人的にはかなり効果的だと思っています。審査員に優しい構成だからです。何せ、冒頭だけ読んでつまらなければ、あとは読み飛ばせるわけですから!つまらない申請書で時間を無駄に取らせることがありません(笑)。

まぁそれは自虐的なお話としても、冒頭数行で引き込めないような申請書は、あとあとまで興味を持って読んで貰うことが難しいわけです。とにもかくにも最初の書き出しが肝心です。

理想をいうなら、「冒頭要約と図表を眺めるだけで全体の内容がほぼ追える!」という構成にまで磨き上げたいところです。

 

3.パラグラフライティングを徹底する!

これは日本の教育システムで教える機会がほとんどなく、大半の人が身についていません。論理的文章を書くための黄金律なのですがね・・・。

難しそうに見えますが、意識して取り組めば意外と簡単です。押さえておくべきは以下の2点。

①一つのパラグラフに一つのトピックを書く
②パラグラフ冒頭に主張(結論)を書く

論理的な文章、とくに英語論文を眺めてみてください。ほとんど全てこういった構成で組み上がっているはずです。

何はともあれ、「まずは結論から書き始めよう!」ということ。これは2.の冒頭要約にも通じる話です。ここでの万能ワードは『すなわち』『具体的には』

例えばこんな感じです。

研究の第一段階として~~~を解決すべく~~~に取り組む。すなわち(具体的には)、~~~~を用いて~~~という実験を計画している。

結論を最後に持って行くスタイルが日本語には多いのですが、研究者は論理的な文章を書くのが仕事です。 学振応募レベルにある学生さんは、この際パラグラフライティングを徹底的に身につけてしまいましょう。レトリックにこだわるのはその後でも遅くありません。

より突っ込んで知りたい人は、関連書籍『論理が伝わる 世界標準の「書く技術」』を参照してみてください。

 

4.説明は「大きな枠」から「小さな枠」へ!

たとえば外国人に、日本の自宅の場所を説明することを考えてみてください。どうやって説明しますか?まずは世界地図を出し、次に日本地図、最後にローカル地図を出して説明しますよね。

研究の説明もこれと同じです。審査員は貴方の研究分野をよく知りません。どういう分野でどんな位置づけの研究をしているのか伝わらなければ、最も知って欲しいはずの未知の内容(=研究提案)について理解が進まず、路頭に迷わせてしまいます。

広大な科学研究における「自分の立ち位置」を説明するための黄金律が、「大きな枠(普遍概念)」から「小さな枠(特殊概念)」へと順番に話をつなげていくスタイルです。

例えば特定分野における化学反応開発をテーマに書くなら、「(審査領域枠)」→「(枠)の中での有機/無機/材料化学etc」→「反応開発」という順番で説明しないといけません。いきなり反応開発の話をされても、化学のなかでどういう重要性があるのか見えてこないわけです。一番大きな枠組みとしては、審査領域で共有されうるだろう内容に設定すればいいと思います。

筆者個人はこの説明順序を崩しても良いことは無いと思っています。ほとんどの場合、非論理的でわかりにくい文章が出来上がるだけのようです。

論理的文章を書き慣れない人は、頻繁にこの説明順序を前後させてしまいがちです。使い慣れない専門用語での説明ともなれば尚更です。用語の定義・有効範囲についての理解が曖昧であることも一因のようです。逆に、この構成を意識して科学文章を書くように務めれば、科学についての理解も深まって来る傾向があるようです。

 

5.一文は意識的に短く!

いろんな形容詞や接続詞を多用して、金魚のフンのごとく繋がった長い一文を書きたがる――そういう人も沢山います。

書きたいことが多い自体は良いことですが、読まされる方は大変です。「適当に句読点を入れ込んで一文をこま切れに!」 それだけでずいぶん読みやすくなるものです。

また、筆者が以前感銘を受けた池上彰氏の文章指南があります。「論理的に完全な文章とは、接続詞を元来必要としないものだ」という内容です。接続詞はあくまで論理構成の補助であり、一文一文のつながりこそが本質というわけです。あってもなくても良さそうな接続詞なら、ばっさり削っても良いでしょう。

 

6.意味重複・既出・繰り返しは徹底的に削る!

同じ内容を言葉を変えて繰り返し、スペースを埋めているだけの文章も実に沢山見てきました。「大事なことなので何回も言いたくなりました」か?

穿った見方をするなら、「他に書くべきことや、大事なことが無くなったのかな?」とも思えてしまいます。・・・それはすなわち、申請内容についての掘り下げが足りないということ。そんなレベルの申請書しか書けないなら、そりゃー通りませんよね!

意味重複は徹底的に削り、 出来た余分なスペースは別視点からの多角的内容で埋めてしまいましょう。多様な論拠に基づいて議論を行っていれば、分野の違う審査員に当たっても説得力が失われにくくなります。また多角的な検討を経ている、よく練られた申請書だという印象を与えます。

ロジカルシンキングの考え方の一つに「MECE」というものがあります。「もれなく、重複無く」という意味で、ロジカルシンキングの基本とされています。申請書も、これを心がけた構成とするのが基本です。
長くなりましたので続きは後編で・・・。

関連書籍

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cosine

cosine

博士(薬学)。Chem-Station副代表。現在国立大学教員として勤務中。専門は有機合成化学、主に触媒開発研究。 関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。 素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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