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化学者のつぶやき

MSI.TOKYO「MULTUM-FAB」:TLC感覚でFAB-MS測定を!(2)

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前回のPart IではMSの基礎知識とFAB-MSの現在の状況について、お話しました。今回はFAB-MSの危機的状況を救うことのできる技術であるMULTUM技術とその機器について紹介したいと思います。

前回述べたように、そのFAB-MSの大きさなんと、デスクトップパソコンサイズ!ラボに楽々置けるんです。場所替えだって楽々!理想的な使い方としては、TLC用サンプルの一部をFABでも分析、でしょうか。

 

MULTUM-FABの仕組み

図1 MULTUM-FABの構造

図1 MULTUM-FABの構造

 1. 試料導入部

サンプルプローブの先端にくぼみがあるので、そこに試料とマトリックスを2 microLほど塗布します。小型なので片手で扱いやすく、プローブ出し入れに必要な時間が短いのがメリットです。

 

2. イオン源部

FABガンは、

(1)EI法でキセノンイオンを生成し、そのキセノンイオンを高速に加速してキセノン原子に衝突させることで、高速キセノン原子を生成させます。

(2)その高速キセノン原子を試料に照射し、サンプルをイオン化させます。

(3)そのイオンを分析部へ送り込むために、5keVで加速させます(なお磁場型は10keVなのでより感度が高い)。

 

図2 イオン源の構造

図2 イオン源の構造

3. 分析部

像サイズの磁場型をパソコンサイズに小型化できたのは、ここ分析部構造のおかげと言っても過言ではありません。

この小型化技術は、大阪大学の豊田先生が開発されたTOF-MSを採用しています。TOFといえば、MALDI-TOFのような1.5 mのフライトチューブを想像しますが、そんなに長くては装置が大型になります。豊田先生はフライトチューブ中にてイオンを直線で飛ばすのではなく、同一軌道を多重周回できる光学系を開発しました。この多重周回型飛行時間型質量分析計(マルチターンTOF-MS; MULTUM)はイオンを任意に周回させることができ、イオンの飛行距離を大幅に伸ばすことができるため、小型でありながら高分解能を達成することが可能となったのです。

しかしながらこのマルチターンTOFにも問題があります。複数のイオンを同時に測定する際、イオンの周回数に追い越しが生じることです。そこで、追い越しが生じない質量範囲を測定するように装置が自動的に質量範囲を設定してくれます。

図3 MULTUM技術

図3 MULTUM技術

 

このマルチターンTOFのFABの名称は、MULTUM-FABですが、こちらでは親しみを込めてFAB-TUMと呼んでおります。可愛らしい大きさのマシンに「FABたん」という名前、ぴったりですね。

 

ここがすごい、FABたん

そのように可愛らしいFAB-TUMですが、マルチターンTOF-MSならではの高分解能MSです。精度に関してはオービトラップのようにキャリブレーションしなくてもミリマスが取れるような装置ではありませんが、PEGなどのキャリブラントで補正を行えば精密質量測定ができます(内部標準法)。そして従来の磁場型FABよりも揮発性化合物の測定がしやすいです。磁場型FABの場合、装置が大型なのでサンプルを入れてから測定するまでに時間がかかります。そうすると、測定しても揮発性サンプルを検出できないです。この点小型FAB-TUMは真空引きの時間が短いので、サンプルが揮発する前に測定することができるのです。また、磁場型FABの場合、広質量範囲での測定を低分解能で測定(いわゆるローマス測定)したのち、分解能変更スリットを回して高分解能で測定(いわゆるハイマス測定)が必要ですが、FAB-TUMではそのような操作は不要です。

 

メンテナンスおよび故障時での対応

MSは破壊分析なのでメンテナンスは必要です。特にFABは他のイオン化法と比べて高濃度サンプルを測定するのでイオン源を汚しやすいです。FAB-TUMも磁場型FABと同様メンテナンスは必要ですが、小型なので真空引きにかかる時間も短く、お手軽にメンテナンスができます。そして故障時の対応ですが、MSI.TOKYO社宛てに宅配便で送る!です。いままでのMSでは考えられない便利さですね。

 

装置まとめ

 

  • デスクトップパソコンサイズ(40キロ)なので、置き場所に困らずラボで気軽に使えます。場所替えも楽々。
  • 故障した時には宅配便で送れば修理してもらえます(斬新!!)。
  • サンプル調製時に濃度を気にする必要はありません。
  • FABビームパルス化により、サンプル消費量を削減。
  • 揮発性サンプルを測定できるのでEIで測定していたサンプルも測定可能。
  • 高分解能MSなので内部標準法で精密質量測定ができます。磁場型のような分解能調整は不要!

 

欠点はないの?

このように書きますと、夢のような装置に見えますが残念ながら今後の課題はあります。

MSI.TOKYO社長は、著者のFAB-TUM開発への一途な熱望を実現してくれたエンジニアであり、筆者が管理しているFAB-TUMはさしずめ「ITbM零号機」といったところでしょうか。開発されて間もない装置ですから、大手MS会社のような至れり尽くせりな設計にはなっておりません。

 

このように生まれて間もないFAB-TUMですが、述べましたように手軽で便利な装置です。各ラボにFAB-TUM1台!が筆者の夢です。

 

ご興味がある方、MSI.TOKYOにお問い合わせしてみてはいかがでしょうか?

お問い合わせ先:MSI.TOKYO株式会社

〒182-0036 東京都調布市飛田給1-3-10

Tel:042-426-4581

Fax:042-426-4585

info@msi-tokyo.com

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Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

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