[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

Cell Pressが化学のジャーナルを出版

[スポンサーリンク]

 

Cell(セル)をリーディングジャーナルとするCell Press (エルゼビア傘下)がなんと化学のジャーナルタイトルを出版するとのこと

その名もChem」(ケム)

名前短かっ!

 

Cell Pressとは

Cell_Press_banner

Cell Pressは1974年にCellを出版することからはじまった、学術出版社です。Cellのインパクトファクター(IF)32.242 (2014年版)と非常に高く、Nature (IF41.456)、Science (IF33.611)と併せて、CNSと呼ばれ、多くの科学者がこれらの雑誌に論文を掲載することを目標にしています。1999年にエルゼビアの買収以降、いくつかの分野別論文誌を発行し始め、Cancer Cell (2002年刊行、IF27.252)、Cell Stem Cell (2007年刊行、IF22.768)など現在では、17タイトルの論文誌を発行しています。今年にはいっても、Cell Systemsという、ライフサイエンス関連の画期的なプロトコルに関するジャーナルが発行されたばかり。

 

そもそもなぜ化学?

これまでCell Pressの化学系のジャーナルは、Chemistry & Biology(1994年刊行、IF6.645)のみ。タイトルの殆どが、医学および生命科学に中心であるのにも関わらず、いまさら化学なんでしょうか?

理由は「まったくわかりません」が答えとなりますが、最近の高インパクトファクター姉妹誌などの爆増と分野を広げる意味合いがありそうです。

例えば、アメリカ化学会はACS Central Scienceという謎の雑誌を今年発刊しました。化学こそセントラルサイエンスだ!という主張からの名前の由来であり、同意できるところですが、なかなかどうしてこの雑誌に論文を投稿しようか難しいところですね。兎にも角にも、アメリカ化学会はJ. Am. Chem. Soc.の上位タイトルであると位置付けており、高IFを狙って、かなり論文数を絞っているようです。

一方で、Science誌を有するAAASは、今年オープンアクセスジャーナルScience Advancesを発刊しています。この理由は一目瞭然であり、NatureのNature Publishing Group(NPG)やCell PressがもっているオープンアクセスジャーナルNature CommunCell Reportsに対抗したものです。いずれもCNSには届かなかった(科学的にインパクトが少し足りなかった)論文をを取りこぼさないようにしたいという出版社の試みがみられます。現に、上位のジャーナルではリジェクトされた論文でも、良い論文に関してはそれらのジャーナルに再提出することなしにそのまま審査にもっていくことが可能です。

 

2015-11-28_00-50-59

 

同時にNPGは姉妹誌発刊作戦により、科学分野別でもトップジャーナルを輩出してきました。CNSとはいいますが、すでにNatureおよび関連誌が数歩先んじていることはおわかりになるでしょう。

 

どんな人が投稿するのかな?

やはり、Cell Pressですので、化学といってもケミカルバイオロジー分野が多いのかもしれません。生物系の雑誌では構造式を書いただけで拒否反応を示されることが多いので、そういう意味でも境界領域でありながら化学をベースにもっている生物系の雑誌はまだまだ必要なのかもしれません。

しかし、このジャーナル名前が短すぎます。Chem ◯◯というジャーナルは山ほどあるので、研究業績を記載する際には、書き忘れたんじゃないかと思われそうですね。

さて、どうなりますか。

 

外部リンク

 

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 金属-金属結合をもつ二核ランタノイド錯体 -単分子磁石の記録を次…
  2. アウグスト・ホルストマン  熱力学と化学熱力学の架け橋
  3. “見た目はそっくり、中身は違う”C-グリコシド型擬糖鎖/複合糖質…
  4. E. J. Corey からの手紙
  5. 第54回天然有機化合物討論会
  6. 科学系のLINEスタンプを使おう!!
  7. アメリカ大学院留学:実験TAと成績評価の裏側
  8. 第32回光学活性化合物シンポジウム

注目情報

ピックアップ記事

  1. 表現型スクリーニング Phenotypic Screening
  2. ビス(トリメチルアルミニウム)-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン付加物 : Bis(trimethylaluminum)-1,4-diazabicyclo[2.2.2]octane Adduct
  3. 中国へ行ってきました 西安・上海・北京編①
  4. バールエンガ試薬 Barluenga’s Reagent
  5. ジャン=マリー・レーン Jean-Marie Lehn
  6. ルーブ・ゴールドバーグ反応 その1
  7. Igor Larrosa イゴール・ラロッサ
  8. ヒューマンエラーを防ぐ知恵 増補版: ミスはなくなるか
  9. ケムステイブニングミキサー 2024 報告
  10. 化学者のためのエレクトロニクス講座~フォトレジスト編

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2015年12月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  

注目情報

最新記事

MDSのはなし 骨髄異形成症候群とそのお薬の開発状況 その1

Tshozoです。今回はかなり限定した疾患とそれに対するお薬の開発の中身をまとめておこうと思いま…

第42回メディシナルケミストリーシンポジウム

テーマAI×創薬 無限能可能性!? ノーベル賞研究が拓く創薬の未来を探る…

山口 潤一郎 Junichiro Yamaguchi

山口潤一郎(やまぐちじゅんいちろう、1979年1月4日–)は日本の有機化学者である。早稲田大学教授 …

ナノグラフェンの高速水素化に成功!メカノケミカル法を用いた芳香環の水素化

第660回のスポットライトリサーチは、名古屋大学大学院理学研究科(有機化学研究室)博士後期課程3年の…

第32回光学活性化合物シンポジウム

第32回光学活性化合物シンポジウムのご案内光学活性化合物の合成および機能創出に関する研究で顕著な…

位置・立体選択的に糖を重水素化するフロー合成法を確立 ― Ru/C触媒カートリッジで150時間以上の連続運転を実証 ―

第 659回のスポットライトリサーチは、岐阜薬科大学大学院 アドバンストケミストリー…

【JAICI Science Dictionary Pro (JSD Pro)】CAS SciFinder®と一緒に活用したいサイエンス辞書サービス

ケムステ読者の皆様には、CAS が提供する科学情報検索ツール CAS SciFind…

有機合成化学協会誌2025年5月号:特集号 有機合成化学の力量を活かした構造有機化学のフロンティア

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年5月号がオンラインで公開されています!…

ジョセップ・コルネラ Josep Cornella

ジョセップ・コルネラ(Josep Cornella、1985年2月2日–)はスペイン出身の有機・無機…

電気化学と数理モデルを活用して、複雑な酵素反応の解析に成功

第658回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院 農学研究科(生体機能化学研究室)修士2年の市川…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP