[スポンサーリンク]

一般的な話題

ご注文は海外大学院ですか?〜選考編〜

[スポンサーリンク]

去年の9月から大学院へ入学し,半年ほどが過ぎました.本海外大学院シリーズは以下参照。

先日”visitation weekend“なる,来年度入学候補生の施設見学&二次面接がありました.このことについては渡航編でも書きましたが,今度は学生を迎える側に立ったので実際の選考過程を目の当たりにすることができました.それに際して改めて分かったことを書こうと思います.これからvisitationに行く方は参考にしてください.

*あくまで聞いた話と自分の所属機関の情報を統合した上で書いている話なので,状況は大学によって異なるということを念頭において読んでください.

 

visitation weekendとは?

合格者を対象として大学が主催し,大学や研究室に足を運んで様子を知ることのできるイベントです.大学によってはこれが二次面接を兼ねている場合があります.とはいえ,試験を兼ねていたとしても大体の場合は非常にリラックスした雰囲気で,visitationの2-3日間は毎晩パーティーです.大学側も優秀な学生が欲しいのでホテル代,食事代などはほぼ全て出してくれます.渡航費に関しては$300までというところが多いようです(そもそも国内の学生向けにデザインされたイベントなので).

 

選考基準

visitatin weekendの話の前に一次の書類選考がどうなっていたか書いていきます.GPAが重要なのか,推薦状が大事なのか.エッセイが大事なのか,出願時はどれに重きを置いているのかいまいち不明でしたが,中から見ていると大分はっきりしてきました.

一番大事なのはやはり推薦状のようです.合格者を見ていると必ずしも大御所の研究室出身というわけではないですが,アメリカのトップスクールに合格している人たちを見ているとビッグネームから最低1通は推薦状をもらっているようです.また自分のPIからの推薦状はPIが有名かどうかにかかわらず,かなり重きを置かれます.自分のPIが英語で推薦状を書くことに慣れていない場合は書き方のわかる人に添削をお願いすることを強くお勧めします.

GPAに関しては少しおもしろいことがわかりました.基本的には皆 >3.6を持ってきますが,大学によってGPAのつけ方が異なることはみな理解しているので,異なる大学間でGPAを比べることはしません.なのでここでGPA 2.9とかいうぶっ飛んだ値をたたき出してくるとかなり目立ちます.GPAが低いだけではただのアホですが,これで推薦状が最強(実際にこういう人がいました)だと教授たちの目に止まり,”こいつはおもろいに違いない!”となります.visitationで面談したとき実際に自分がおもろいやつだということを教授にわからせることができれば取ってもらえる可能性がぐっと上るでしょう.

奨学金の有無は大学そのものの合否には少しだけ影響するようです.ラボに実際にとってもらえるかどうかは,奨学金を持っている人からとってもらえるといっても過言ではないほど関係します.教授も奨学金を持っているとわかるやいなや,テノヒラクルーで執拗に勧誘してきたりします.またラボに入った後の教授からの風当たりも奨学金を持っている人へはかなりマイルドです.持ってない人は”払った分,返してもらおかぁ?”という感じで働いてます.

また,出身研究室もラボを選ぶ時点で少し関係するようです.仲の悪い研究室の学生はあまりとりたくない,仲のいい研究室の学生はとりたがる(メンツを保つために),コネを作りたい研究室出身の学生はとりたがるなどなど.完全にチンピラの”アァン?お前どこ中出身だよ?エ?!○○中?!△△先輩の知り合いじゃないっすかぁ〜!”状態です.あまり関係ないですが,有名研究室出身だと”どこ研出身?”という話になった時に話に花が咲いて友達が作りやすかったというのはありました.

エッセイはロクでもないことを書いていない限り差をつけにくいようです.また,GRE,TOEFLはやはり足切り程度でした.

 

二次面接の合格率

さて,肝心のvisitation weekendですが,ここに来た学生は95%の確率でofficial offerをもらえます(visitationに呼ばれる前にofficial offerをもらえることもあります).弾かれるのがあくまで”crazy”な学生だけです.ここで5%は落ちるのか!と思うかもしれませんが,ここで落ちるのは本当に,本当にcrazyなやつだけです.例えば学生相手にも教授相手にも超上から目線で訳わからない質問をし,大学院辞めてえとかいってくるやつ,友達を銃で撃ってみたいと思ったことはないか?とかいってくるやつ(本当にいた)とか,文字通りcrazyなやつらが本当にいるんです.普通にお行儀よくしていれば落ちることはありません.

 

研究室配属

ただし,実際に希望の研究室に入れるかどうかの競争のことになると話は変わってきます.まずどの教授もほぼ間違いなくvisitationに来た学生から優先的にとります.

次にラボの学生とのさりげない交流がかなり効いてきます.というのもvisitation weekendが終わった後,Graduate officeが学生に対して誰が良かったか,悪かったかアンケートをとります.主にはcrazyなやつ弾きのためですが,Graduate officeも学生の意見をかなり尊重していることが伺えました.例えば学生が自分の研究の紹介をする中で”ここはどうなると思う?”とさりげなく質問してきた場合,ここでの答えは重要な判断材料にされます.”今の研究室ではどんなことやっているの?”と聞かれた時も要注意です.1分程度で相手にわかりやすい説明ができるようにしておきましょう.夕食会や二次会での会話の受け答えでさえ判断材料にされます.酔っ払ってるから覚えてないだろwと思いきやかなり鮮明に覚えられているので気が抜けません.実際,visitation weekendが終わった後に”○○大から来たあいつは良かった,悪かった”という話が学生の間でかなり話題になります.

PIにもよると思いますが,うちのPIは今いる学生と新入生のノリが合うかをかなり気にします.なので学生ほぼ全員に誰が良かったかをとても詳しく聞いて回ります(はっきり言って学生がでしゃばりすぎな気がしなくもないですが).自分の行きたいラボが決まっている場合は,なるべく多くのそこにいる学生と交流し,いい印象を与えられるように頑張りましょう.

とはいえ,visitationは全体的にお祭りな雰囲気です.アメリカの大学を色々回るというのもそうそうない機会なので楽しむことも大切です.羽目を外しすぎない程度に楽しんでください.

 

関連書籍

[amazonjs asin=”B015WCW5RG” locale=”JP” title=”留学ジャーナル別冊2016-2017「海外の大学・大学院留学完全ガイド」”][amazonjs asin=”4757418566″ locale=”JP” title=”理系大学院留学―アメリカで実現する研究者への道 (留学応援シリーズ)”]

関連記事

  1. 分子1つがレバースイッチとして働いた!
  2. カーボンナノベルト合成初成功の舞台裏 (3) 完結編
  3. 高分子材料におけるマテリアルズ・インフォマティクスの活用:高分子…
  4. 金属容器いろいろ
  5. 2011年イグノーベル賞決定!「わさび警報装置」
  6. シュプリンガー・ジャパン:生化学会書籍展示ケムステ特典!
  7. 分子形状初期化法「T・レックス」の実現~いつでもどこでも誰でも狙…
  8. 先端事例から深掘りする、マテリアルズ・インフォマティクスと計算科…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 第25回 溶媒の要らない固体中の化学変換 – Len MacGillivray教授
  2. SFTSのはなし ~マダニとその最新情報 前編~
  3. IGZO
  4. リアルタイムで分子の自己組織化を観察・操作することに成功
  5. メソリティック開裂 mesolytic cleavage
  6. 湘南ヘルスイノベーションパークがケムステVプレミアレクチャーに協賛しました
  7. 「次世代医療を目指した細胞間コミュニケーションのエンジニアリング」ETH Zurich、Martin Fussenegger研より
  8. 芳香族化合物のC–Hシリル化反応:第三の手法
  9. 新しい太陽電池ーペロブスカイト太陽電池とは
  10. オペレーションはイノベーションの夢を見るか? その3+まとめ

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2016年3月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  

注目情報

最新記事

第71回「分子制御で楽しく固体化学を開拓する」林正太郎教授

第71回目の研究者インタビューです! 今回は第51回ケムステVシンポ「光化学最前線2025」の講演者…

第70回「ケイ素はなぜ生体組織に必要なのか?」城﨑由紀准教授

第70回目の研究者インタビューです! 今回は第52回ケムステVシンポ「生体関連セラミックス科学が切り…

第69回「見えないものを見えるようにする」野々山貴行准教授

第69回目の研究者インタビューです! 今回は第52回ケムステVシンポ「生体関連セラミックス科学が切り…

第68回「表面・界面の科学からバイオセラミックスの未来に輝きを」多賀谷 基博 准教授

第68回目の研究者インタビューです! 今回は第52回ケムステVシンポ「生体関連セラミックス科学が切り…

配座制御が鍵!(–)-Rauvomine Bの全合成

シクロプロパン環をもつインドールアルカロイド(–)-rauvomine Bの初の全合成が達成された。…

岩田浩明 Hiroaki IWATA

岩田浩明(いわたひろあき)は、日本のデータサイエンティスト・計算科学者である。鳥取大学医学部 教授。…

人羅勇気 Yuki HITORA

人羅 勇気(ひとら ゆうき, 1987年5月3日-)は、日本の化学者である。熊本大学大学院生命科学研…

榊原康文 Yasubumi SAKAKIBARA

榊原康文(Yasubumi Sakakibara, 1960年5月13日-)は、日本の生命情報科学者…

遺伝子の転写調節因子LmrRの疎水性ポケットを利用した有機触媒反応

こんにちは,熊葛です!研究の面白さの一つに,異なる分野の研究結果を利用することが挙げられるかと思いま…

新規チオ酢酸カリウム基を利用した高速エポキシ開環反応のはなし

Tshozoです。最近エポキシ系材料を使うことになり色々勉強しておりましたところ、これまで関連記…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP