[スポンサーリンク]

一般的な話題

クロスカップリング反応ーChemical Times特集より

[スポンサーリンク]

パラジウム触媒存在下、有機金属反応剤と有機ハロゲン化物をくっつける「クロスカップリング反応」。

 

2016-04-10_15-38-54

クロスカップリング反応

 

ノーベル化学賞の技術であり、多くの化学者に汎用さてれいる素晴らしい反応ですが、いまた改良することで発展の余地があります。

現在の研究の指標は大きく分けて、

  1. 有機金属反応剤を用いない
  2. 有機ハロゲン化物の代替品をつかう
  3. パラジウム触媒よりも安価で優れた触媒をつかう

となっています。

今回、関東化学が発行する化学情報誌「ケミカルタイムズ」の特集「クロスカップリング反応」について紹介したいと思います。

ニッケル触媒直接カップリング反応の開発と機構解明研究

筆者らが執筆した記事です。下記に示す、私達が発見した反応は基質の制限はあるものの上述した1〜3を解決しています。つまり、

  1. ヘテロ芳香環(1,3-アゾール)そのものを用いる
  2. フェノール誘導体を用いる
  3. 安価なニッケル触媒を用いる

ということです。これは配位子に1,2-ビスジシクロヘキシルホスフィノエタン(dcype)を用いることが反応の鍵。この配位子以外(類縁体を除く)では全く反応が進行しません。

それ以外にもエステルを脱離基としたカップリング反応や、それらの詳細を反応機構解明研究と共に紹介しています。ぜひお読みください。

2016-04-10_15-28-06

ニッケル触媒を用いたアゾール類とフェノール誘導体のカップリング反応

 

不活性シグマ結合の切断をともなうクロスカップリング反応

大阪大学の鳶巣守准教授による記事です。

特に上述した新しいカップリング反応の条件2に注目し、芳香族化合物にあるメトキシ基やアミノ基(アニリド)、シアノ基やフッ素機など、通常不活性なσ結合を遷移金属触媒で活性化することで、有機ハロゲン化物の代替品に使うことを目標にしています。また、主にニッケル触媒を用いていることから条件3にも合致します。

2016-04-10_15-41-32

脱離基を変える

記事では、著者らが開発した反応の中で、特にアニソール(メトキシ基)、アニリド(アミノ基)をハロゲン化アリールの代替化合物としてもちいた研究にフォーカスして紹介しています。従来、このような官能基のみをデットエンドに終わっていた有機合成化学に新しい合成戦略を与える触媒反応だと思います。

工業化に優れた特性を示すクロスカップリング触媒

最後の記事は工業スケールの触媒・試薬販売会社であるUmicoreから。高い反応性が注目されている含窒素ヘテロ環カルベン(NHC)を配位子としてもつ、パラジウム触媒を紹介しています。同社はこれらの触媒を数グラムからー数十キロ、需要があれば数百キログラムスケールでも供給しています。研究室レベルでも最近売りだされたため、知っている方は多いことでしょう。

2016-04-10_16-12-35

Umicoreが工業スケールで販売しているNHC触媒

本記事ではそれら触媒の化学的性質から、鈴木ー宮浦クロスカップリングやケトンのα-アリール化反応への応用、選定方法などを紹介しています。上記2つに比べると基礎的な内容ですが、読みやすく勉強になると思います。

その他の記事

特集とは別に、メトキシベンジル部位とイミダゾリウム部位をもつイオン性液体の特徴と用途について紹介した、「3-{2-[4-(chloromethyl)-2,6-dimethoxyphenoxy]ethyl}-1-methylimidazolium hexafluorophosphateの物性と固定相としての検討」(東海大学理学部化学科 准教授)や、特集のキーワード解説記事があります。

もちろん全て無料ですので、時間があるときに読んでみてはいかがでしょうか。

過去のケミカルタイムズの記事

外部リンク

本記事は関東化学「Chemical Times」の記事を関東化学の許可を得て一部引用して作成しています。

The following two tabs change content below.
webmaster
Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 「一置換カルベン種の単離」—カリフォルニア大学サンディエゴ校・G…
  2. ケムステの記事が3650記事に到達!
  3. 【追悼企画】カナダのライジングスター逝く
  4. 化学物質恐怖症への処方箋
  5. Reaxys体験レポート:ログイン~物質検索編
  6. 第10回次世代を担う有機化学シンポジウムに参加してきました
  7. 文具に凝るといふことを化学者もしてみむとてするなり⑨:トラックボ…
  8. 感染制御ー薬剤耐性(AMR)ーChemical Times特集よ…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. サントリー白州蒸溜所
  2. 化学の力で迷路を解く!
  3. 化学分野での特許無効審判における 実験データの戦略的な活用方法【終了】
  4. 世界が終わる日までビスマス
  5. 副反応を起こしやすいアミノ酸を迅速かつクリーンに連結する
  6. アゾ化合物シストランス光異性化
  7. 並行人工膜透過性試験 parallel artificial membrane permeability assay
  8. 全合成 total synthesis
  9. UV-Visスペクトルの楽しみ方
  10. 「携帯」の電池で電車走る・福井大などが実験に成功

関連商品

注目情報

注目情報

最新記事

第48回―「周期表の歴史と哲学」Eric Scerri博士

第48回の海外化学者インタビューは、エリック・セリー博士です。英国で教育を受け、カリフォルニア大学ロ…

ペプチド縮合を加速する生体模倣型有機触媒

2019年、ニューヨーク大学のParamjit S. Aroraらは、活性アシル中間体への求核付加遷…

第47回―「ロタキサン・カテナン・クラウンエーテルの超分子化学」Harry Gibson教授

第47回の海外化学者インタビューは、ハリー・ギブソン教授です。バージニア工科大学の化学科に所属し、プ…

女優・吉岡里帆さんが、化学大好きキャラ「DIC岡里帆(ディーアイシーおか・りほ)」に変身!

印刷インキや有機顔料世界トップシェアのDIC株式会社は、2020年1月より、数々のヒット作に出演し、…

tRNAの新たな役割:大豆と微生物のコミュニケーション

畑に生えている大豆の根っこを抜いてみると、丸い粒みたいなものがたくさんできています。根粒(こんりゅう…

第46回―「分子レベルの情報操作を目指す」Howard Colquhoun教授

第46回の海外化学者インタビューは、ハワード・コルクホーン教授です。英国レディング大学の化学科に所属…

Chem-Station Twitter

PAGE TOP