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ポンコツ博士の海外奮闘録 外伝① 〜調剤薬局18時〜

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ポンコツシリーズ番外編 モラトリアム中で薬局薬剤師のお仕事から学んだ事とエセ研究者視点からの着想,どのような過程でアメリカのJ-1 VISAを取得したのか書き留めます。

ポンコツシリーズ本編はこちら。国内編: 第1話 ・ 第2話第3話

第2章 外伝:ポンコツ中途薬剤師,リハビリを希望する

筆者は,4月から新人薬剤師として調剤薬局に就職した。学生の頃,5年で院進をほぼ決心していたため,実習時代の記憶など全くない。したがって,人生の分岐点と決めている6月までは激務ではない,のほほんとした薬局でリハビリしたいと縋るように祈っていた。

しかし世の中そう甘くはなく,筆者の住む田舎で1,2を争う大きな病院の近隣店舗に配属された。会社の方針として,早いうちに忙しい部署で慣れさせる事で他店舗の応援が楽になる等の思惑があったのだろう。筆者も後輩指導において「習うより慣れよ」で教えてきた人であるし,恩師らにそう教わってきたので気持ちは分かる。筆者のモットーは「のんびり生きたい」であるが,願望と全く異なる環境に自然と身を置くのは様式美であり,正直こうなる未来を予想していた。

ポンコツオールドルーキー,圧倒される

実際に配属されると信じられないほどの情報量が毎日飛び交っている新人には激務な部署で,化石薬剤師の筆者は研究室に入りたての頃のような既視感を覚えた。また,僅かに覚えていた先発薬がジェネリック(GE)医薬品に切り替わっていたこと,オーソライズドジェネリック(AG)医薬品という先発品と全て同一のGE医薬品も出ていたので,ただただ驚いた。

研究は少し離れると全く分からなくなるというが,それは研究に限ったことでないことが分かった。そして,歳を重ねようが何事にも取り組む姿勢と学ぶことに対する謙虚さが,その後の方向性を決めるような気がした。ちなみに筆者は新しいことを学ぶ気はあったが,モチベーションがあんまりなかった。

補足:薬局薬剤師のお仕事

ざっくり調剤ルーチンを説明すると,① 患者様から医師から発行された処方箋を受け取り,処方箋内容と以前の薬歴を確認する。② 薬歴から特殊な要望があるか等を確認し,薬を準備する。③ 取り揃えたものを別の薬剤師が監査し,チェックする。④ それでもミスは起きるので,後で対応できるように写真などの証拠を残す。⑤ 調剤した薬を間違えずに薬袋へ入れて薬歴を再度確認し,今回の服薬指導を行う,がおそらく基本スタイルだ。*半年程度のペーペー筆者の紹介なので,薬剤師の仕事をしっかり紹介したい方は,気軽にご連絡ください。

ポンコツ新人薬剤師,類比思考する

調剤業務を常に正しく行うことは本当に難しい。処方箋の内容はちょこちょこ間違っており,それがミスであることを僅かな時間で気付いて判断し,医師に疑義照会という作業をしなければならない。この処理中に他の患者の薬を準備しなければ患者を待たせることになる。薬の取り揃えミスをしたり,水剤容器の数等を間違ったりすると他の薬剤師さんや医療事務さんに迷惑をかけて全体的に処理が遅れる。これらが積み重なることで個々のミスのリスクを高め,最終的に患者に被害が及ぶ。その他,多忙な医師と患者様の状態を意識して確認しなければ多方面からお叱りを受けるなど,恐ろしいことがいっぱいであった。筆者の結論として,薬局薬剤師とは医療現場と一般社会を繋ぐ中間管理職であった。

研究で学んだ類比思考を行うと,筆者は一流レストランをイメージした。1品1品を集中して手早く作りながらお客様が食べきる絶妙なタイミングを判断し,次の料理を出してくるシェフとウエイター,両方のプロ魂が薬局薬剤師に必要だった。患者には新人など関係なく,”ちゃんと”薬剤師でなければならない(実際,医療事務さんに言われてハッとした)。そして,それらをクリアして患者からの個人的な信頼と”かかりつけ薬剤師”という称号を勝ち取ることができるのだ。

調剤薬局のイメージは,のほほんとしているのが大半(筆者も含めて)だろうが,現場の裏側に立って初めて分かることを改めて実感した。現場と会議室のギャップはどのような社会においても常に摺り合わせなければならない。円滑に物事を進めるには個々の業務負担を出来る限り情報共有で軽減し,他職種に対するリスペクトを忘れてはいけないことを学んだ。より品質の高いサービスを提供するために自動化は進んでいくべきであるが,最後は使う人達の協力と個々の相互理解が重要だ。

ポンコツ薬剤師,生涯忘れないミスをする

とある失敗談がある。新人の筆者はGW明けの鬼のような忙しさで患者応対が一杯一杯になったタイミングがあった。その時,患者様の薬を1.5本の瓶でお渡しする予定が丸ごと一本渡し忘れるというミスを犯した。仕事が落ち着き始めたタイミングで患者様に謝りの連絡を行うと,後日取りに来て頂けるというご返答を頂いた。次の日,来訪してくださったので薬をお渡して個人的には大変申し訳ない気持ちを持って謝罪し,次回以降の対応で挽回するつもりだった。

しかし明くる日,その方から筆者の態度が悪いという強いクレームが管理薬剤師,および薬局にあり,以後来なくなった。長年来てくれていた方だったそうなので,筆者の全く自覚がない軽率な行動で信頼を一気に崩してしまったことに関して非常にやるせない気持ちになった。

その後,誠意だけでもなんとか伝わるように,マスク着用でも分かる笑顔など,表情の意識を忘れないように対応し,それ以降そういったクレームは無かった。患者の命が掛かっているから筆者も真摯に対応していることを伝える努力を行うと,概ね理解してくれることが分かった(たまに無理だが)。これらの知見を踏まえて筆者は,自分の行為がどう考えて行っているかとは別に,その行為が人からどう見えているかも非常に重要であることを学んだ。

ポンコツ薬剤師(博士),研究テーマっぽい何かを考える

少しずつルーチンに慣れてきた筆者は,PTP包装から薬をばらしてゴミ箱をカスまみれにした。事務さんが定期的にゴミを収集してくれるが,毎度毎度半端ない量が排出される。その時筆者は「このゴミ達は一体どうなるのか?」をふと考えた。PTP包装はプラ(PVC, PP類)+アルミであることは分かっていたが,どのように分別されてリサイクルされているかを知らないことに気が付いた。

画像1:実際のプラゴミ。毎日約5袋排出される

高分子は門外漢なので全く分からない。しかし,この興味からSGDsに繋がる目標を設定し,ケムステやTVで見て衝撃を受けた新技術ような応用ができれば,面白い研究やビジネスが生まれるのではないかと思った(ちと設定が壮大すぎるが)。そのため,プラに関するまとめ記事や文献がないか気になり始めて軽くググった結果,分別やリサイクル技術は既にあったので少し安心した。

何れにせよ,いつの間にか薬局の仕事→自分の疑問→得意分野で課題解決を目指す自分がいた。6年制を卒業して直ぐに薬剤師をやっていたらそもそも考えなかったことで,研究の世界に長らく浸った影響から疑問の解消を前向きに考える習慣が定着した自分に気持ち悪さを感じながら驚いた。結局,博士(薬学)としてアウトローな筆者が普通に薬剤師をやるのは向いてないし(アフター6がある仕事は最高だが),培った専門性を繋げて自分の領域を広げられる仕事を開拓した方が,その瞬間は楽しくなくとも長い目で見ると良いのかもしれない(もちろん,最低限の給与がある前提だが)。

ポンコツ博士,申請要項を見て震える

まぁ,薬剤師のやりがいがまだ見えてない段階でこのようなことを考えるのは少々おこがましい。VISA関連の話は全く動かないし,本格的に薬剤師のスキルをマスターしにいく!と意気込んだ6月上旬,一件のメールが届いた。そして筆者は,再び研究者の道へと舵を取り直すことになったのであった(第3話参照)

事務さんに返信するとVISA申請に最も重要なDS-2019を申請するWebリンクが送られてきた。リンク先に必要書類をSubmitすれば,研究所から書類が発行され,DS-160の申請と大使館面接が可能になるそうだ。そこで筆者は,DS-2019を円滑に獲得するための情報を収集した。この時世,スマホでググれば歴代の先輩方がWebに体験記を残しているので大変参考になった。また,アメリカ大使館公式Youtuberであるのりこちゃんと豆都(トム)くんの動画を見れば,J-1(研究者)とF-1(学生)の違いはあれども申請の流れが分かった。なんて便利な世の中だ。

① DS-2019申請には有効期限が終了まで半年以上余裕のあるパスポートが必要だった。そもそも留学途中で有効期限が切れるので,パスポートの早期更新を行なった。平日しか申請できず,転職して有給がない筆者は両親に代理提出をお願いした。必要な書類はネットダウンロードし,それらを提出することであっさり完了した。

② 次いで,海外保険の確認を行った。研究所が求める条件に日本の保険会社ではカバーできなかったので,研究所の国際オフィス担当にメールを送り,そちらの保険を適応することを伝えるとすぐにクリアできた。

③ その後,次のステップに画面を進めると「あなたの英語力を証明するものはありますか?」と記載されていた。筆者は狼狽し,焦って某歌手の名曲ぐらい震えた。TOFELはJ-1申請にいらないから大丈夫だよと周辺情報で聞いていたので,知り合いのネイティブと生きていくための英会話に取り組んでいた。カタコト英語を喋る度胸をつける訓練は行なっていたが,英語の試験対策は全く行なっていなかった。とりあえず,無知な筆者は「コロナのせいか知らんけど,今のご時世はあるんかぁい!」とPC画面にツッコミを入れておいた。

震えていても仕方ないので,筆者は急遽,TOFELの勉強をすることにした。

〜〜続く〜〜

追記

上述の項だけを読むと筆者と同様に焦りそうな方が生まれそうなので,先にネタバレを。J-1VISA申請には,2015年から確かに英語力の証明が必須になっております。もちろんTOEFLやIELTSの能力証明が正当な手段ですが,具体的な点数は各大学・研究機関によって異なると思います。一方,日本でPh.Dをとれば,多くの場合でより簡単な別の条件が開放されるはずです。それが一番手取り早く,お金もかからないと思いますので,次回ご紹介します。でも勉強はした方が良いので時間があればTOFELをしっかりやりましょう。

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たぶん有機化学が専門の博士。飽きっぽい性格で集中力が続かないので,開き直って「器用貧乏を極めた博士」になることが人生目標。いい歳になってきたのに,今だ大人になれないのが最近の悩み。読み方はナナメルorナナメェ…?

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