[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

分子模型を比べてみた

[スポンサーリンク]

「有機分子は3次元構造である。」

これをもっとも身近に体感できる分子模型。昨年末、HGS分子模型製造で有名な「日ノ本合成樹脂製作所」の廃業(記事:【悲報】HGS 分子構造模型 入手不能に)により、最も多用されていた分子模型が入手困難になりました。当時はアマゾンなどで在庫が購入できたものの、現在では既に在庫も底をつき、特に個人的にも安価に手に入れることができる生化学用や、研究室に1つはあるとよい立体化学模型アドバンスドセットなどはもはや幻になりつつあります。

 

悔しいので「なんとか自作できないか」と考えました。3Dプリンターで同じものができるんじゃないかと3Dプリンターの大手、キーエンスに相談しましたが、興味は大変あるものの、CADデータがないと大変難しいとのこと。というわけで自作は早々に断念し、代替分子模型を探し始めました。ネットで探してみるといろいろなものが売っていますが、なかなかやっぱり触ってみないとわかりません。

と困っていたところシグマアルドリッチ社がいくつか分子模型を扱っていたので、大胆に「全部貸して!あわよくばちょうだい!」とお願いしたところ、快く引き受けてくれました。

数日後大きなダンボールで分子模型達がとどきました。という訳で今回はアルドリッチさんの分子模型を1つずつレビューしたいと思います。

 

2016-09-14_01-41-24

アルドリッチからダンボールで分子模型が届いた。

とにかくでかい!Giantサイズ分子模型

まずはもっとも大きなGiantサイズ分子模型。講義でぜひ使いたいと思いお願いしたものです。本当は小さな分子模型でシクロヘキサンの安定配座を説明して、「見えないよね…じゃあこれならどうだ!」とやりたいだけなんですが、一番大きなものをお願いしました。キットは以下のもの。写真だと大きいのかよくわからないですね。

2016-09-14_01-53-37

Giantサイズ分子模型

 

ではこれならどうでしょう。酸素を1つ手にとってみました。大きいですね…。原子サイズ は直径5 cmほどだそうです。素材は、発泡スチロールの硬いもの、結合はお箸のような木製、そして原子と結合をつなぐ部分は紙とプラスチックでできています。

これは大きい!

これは大きい!

実際組み立ててみました(写真はありません)。やっぱり大きいですが、あまり安定性はありません。結合も思ったように回転してくれずなんとも頼りない感じです。送っていただいたのはベーシックキットZ231312-1KTで定価で4万円もします。ちょっと数も少ないので、お金持ちの研究室はよいかもしれないですが、たくさんの分子をつくろうと考えると10万円超え間違いなしです。

 

まずまずの出来。講義に使えるコクラン分子模型Unit Kit

いきなり使い勝手は微妙でしたが、気を取り直して次を見てみましょう。次は、コクラン分子模型UnitKitZ691747-1KT)です。上述の分子模型よりも原子径が4.4cmと少し小さいですが、充分大きなサイズ。原子はプラスチック製、結合はアルミでできていて軽い。ちゃんと、原子の大きさが異なるのも良い。組み立ててみるとなかなか機敏な動きをしてくれるので使い勝手もよいです。

 

2016-09-14_02-12-52

このぐらいの大きさ。学生に手伝ってもらいました。

試しにメチルシクロヘキサンを作ってみましたが、少し結合の指し方に工夫がいるものの、慣れればすぐつくれます。Giantよりも頑丈でこれなら講義に使って学生にまわしても、原型を留めてかえってきそうです。

 

うねうねするが、観賞用にはよいかも。Molymod®分子模型セット

さて、少しずつ小さくなっていきます。Molymod®分子模型セットZ544523-1SET)は原子の大きさが2.5–1.5cmくらい。以下の画像が1セットです。これで6400円は分子模型としては安いと思います。

2016-09-14_02-17-13

Molymod®分子模型セット

 

致命的な難点は、大きい分子をつくると、不安定で持っていられないこと。小さい分子ならば全く問題無いです。小さな分子の作成や観賞用に適していると感じました。

分子を組み立ててみたところ(出典:シグマアルドリッチジャパン)

分子を組み立ててみたところ(出典:シグマアルドリッチジャパン)

 

もっとも手頃でそこそこ使いやすい。コクランChem-Tutor学生モデルシステム

最も安価で、普通に使いやすかったのが、このコクランChem-Tutor学生モデルシステム(ALD1000)。ウェブに掲載されているものと容器が異なる気がしますが、新しくなったのでしょうか。

2016-09-14_02-31-01

コクランChem-Tutor学生モデルシステム

 

これも上記の3つ同じく結合と原子に分かれていて、それらをつなげていくタイプです。結合はやわらかいプラスチックで出来ていて、分子はとっても作りやすい形状。ただ、ふにゃふにゃではなくしっかり保つタイプ。

2016-09-14_02-33-39

分子をつくってみた

 

これはかなりいいですね。ただし、HGS 分子構造模型を忘れてしまえば。やはり、結合と原子がもともと繋がっていて、あのコンパクトさ。あの分子模型はかなり秀逸でした。

というわけで、ただの使った感想になってしまいましたが、シグマアルドリッチから販売されている分子模型を4つ紹介してみました。ホームページやカタログにはまだまだいろいろあるようなので、いろいろな分子模型を試してみてはいかがでしょうか。やっぱり自分の研究ターゲットとしている分子ぐらい手でつくって・触ってみたいところです。ぜひおひとつどうぞ。

 

関連リンク

 

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 【python版】新規化合物データチェックリストとWord整形プ…
  2. 機能を持たせた紙製チップで化学テロに備える ―簡単な操作でサリン…
  3. Pallambins A-Dの不斉全合成
  4. セブンシスターズについて① ~世を統べる資源会社~
  5. 環歪みを細胞取り込みに活かす
  6. Retraction watch リトラクション・ウオッチ
  7. 青色LEDで駆動する銅触媒クロスカップリング反応
  8. 第10回次世代を担う有機化学シンポジウムに参加してきました

注目情報

ピックアップ記事

  1. 中村栄一 Eiichi Nakamura
  2. アメリカへ博士号をとりにいく―理系大学院留学奮戦記
  3. マイクロリアクターによる合成技術【終了】
  4. ジアゾカップリング diazocoupling
  5. マテリアルズ・インフォマティクスの導入・活用・推進におけるよくある失敗とその対策とは?
  6. バートン・マクコンビー脱酸素化 Barton-McCombie Deoxygenation
  7. 世界が終わる日までビスマス
  8. MOFを用いることでポリアセンの合成に成功!
  9. 芳香環をヘテロ芳香環に変える!芳香族ケトンのヘテロ芳香環スワッピング
  10. 劣性遺伝子押さえ込む メンデルの法則仕組み解明

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2016年9月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
2627282930  

注目情報

最新記事

条件の「前後」も実験条件である【プロセス化学者のつぶやき】

前回まで1. 設定温度と系内の実温度のお話2. 温度値をどう判断するか3. 反応操作をし…

そのpH、“本当にその場所”の値ですか?ニードル式pHセンサーを使ってみた!

突然ですが、「培養の再現性がなんか悪い」「同じ条件のはずなのに結果がズレる」といった経験はあ…

「骨格編集」×「ナノカーボン合成」〜ナノカーボン合成の新戦略を実証〜

第719回のスポットライトリサーチは、名古屋大学大学院工学研究科(忍久保研究室)博士後期課程2年の平…

【書評】立体化学 はじめの一歩

立体化学は,分子の三次元構造を理解するための重要な分野であり,有機化学や…

水のシミュレーション入門 — 水分子を計算機の中でどう”描く”か —

身近なのに、計算機にとって手強い"水"。本記事では、点電荷モデルから機械学習まで、その"描き方"の進…

◆◇◆◇ 第36回フォーラム・イン・ドージン開催のご案内 ◆◇◆◇

同仁化学研究所が熊本から世界へ情報発信するフォーラム・イン・ドージンの開催ご案内です。今年は『な…

『力』による円偏光発光のon/off制御を単一分子レベルで実現

第718回のスポットライトリサーチは、東京科学大学 物質理工学院(相良研究室)博士後期課程2年の野中…

数日かかっていた反応機構解析を、わずか数分に!

機械学習ポテンシャルが変える計算化学の現在近年、DFT計算による反応機構解析は広く行われるよ…

海外ポスドクのオファーをもらう【アメリカで Ph.D. を取る: 進路編】

ポスドクとして海外に留学する場合、希望する研究室の教授に直接連絡を取り、面接などを通して適性を判断さ…

MDで観るトライボロジー 〜原子が擦れるその場をシミュレーション〜

軽くて強いのに摩耗に弱いチタン合金は、航空機や人工関節に広く使われています。原子が擦れ合うその場を分…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP