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クラリベイト・アナリティクスが「引用栄誉賞2022」を発表!

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ノーベル賞発表時期が近づき、例年同様、クラリベイト・アナリティクス社から2022年の引用栄誉賞が発表されました。

本賞はWeb of Scienceの論文引用データをもとに、医学・生理学、物理学、化学、経済学分野において、特に影響力のある(大きな論文引用数を誇る)研究者に対して与えられる賞です。

これまでの受賞者のうち64人がノーベル賞を受賞しているため、ノーベル賞の受賞者予想企画という側面も持っています。

2022年度は、医学・生理学、物理学、化学、経済学分野から計14名が受賞し、3名の日本人研究者の受賞がありました。

ケムステでは毎年、化学分野に特化したうえで、受賞者の業績を紹介しています。今年は日本人研究者が登場しませんが、いずれも素晴らしい研究成果ですので、この機会に是非学んでおきましょう。

柔軟な「電子皮膚」を含む、有機および高分子電子材料の新しいバイオミメティック・アプリケーションの開発に対して

Zhenan Bao学科HPより)、スタンフォード大学(米国)

化学、物理、材料科学を駆使して、フレキシブルなエレクトロニクスデバイス・エネルギーデバイスの開発研究を行なっています。例えば、有機半導体の単結晶をトランジスターの電極に広範囲に渡ってパターニングする手法の開発、自己修復能のあるストレッチャブル半導体高分子材料を用いた有機トランジスタの開発、柔軟な有機半導体回路を利用してデジタル信号へ変換する機械受容器の開発、などが代表的な成果です。一連の成果を「”皮膚”にインスパイアされた材料/デバイス」と総合しており、生体適合・ウェアラブル・インプランタブルな用途において新たな展開が期待されています。

化学伝達システムとしての、クオラムセンシングによる細菌の遺伝子発現制御の研究に対して

Bonnie L. Bassler (左)、E. Peter Greenberg (右) (それぞれ 学科HP学科HP より)、プリンストン大学とワシントン大学(米国)

細菌は単細胞生物ですが、自己誘導因子 (autoinducer) と呼ばれる分子を放出しあい、近くにいる細菌同士でコミュニケーションをとっています。例えば細菌の密度が上がってくるとバイオフィルムを形成したり、病原因子を生産したりと、周囲の菌密度に応じた遺伝子発現の制御機構をもっています。こうした制御はクオラムセンシング (quorum sensing) と呼ばれ、生命現象として面白いだけでなく、病原因子生産の阻害を狙った新薬開発の標的としても期待されています。クオラムセンシングがどのようにして起こるのかを分子レベルで明らかにした研究(遺伝子発現制御機構や自己誘導因子の構造の解明)に対して授与されました。

プロトン結合電子移動(PCET)とそのエネルギー科学および生物学への応用に関する基礎的な実験および理論的貢献に対して

Daniel G. Nocera学科HPより)、ハーバード大学(米国)

プロトン結合電子移動(PCET)とは、プロトン(H+)と電子(e)の移動が競争的に起こることで、化合物の電子授受速度に影響を及ぼす化学現象です。自然界/人工物問わず、酸化還元過程において普遍的に見られます。たとえば光合成における水の酸化・酸素の還元・窒素固定プロセスなどにも見られ、多くの重要なエネルギー変換過程を司っています。Noceraは無機化学、有機化学、材料化学、物理化学、生物化学の各分野へと横断する研究を通じ、PCET過程の機構解析を基盤としつつ、エネルギー問題を解決しうる数々の反応系(人工光合成系など)を創製する研究に取り組んでいます。最近ではPersonalized Energy構想という分散型エネルギーシステムの実現を支える科学・技術の発展に力を入れています。

 

今年のノーベル賞の発表スケジュールは10月3日~となっています。今年は誰が受賞するのでしょうか?楽しみにしていましょう!

 

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cosine

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博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

Naka Research Group

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