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有機合成化学協会誌2023年9月号:大村天然物・ストロファステロール・免疫調節性分子・ニッケル触媒・カチオン性芳香族化合物

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有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2023年9月号がオンライン公開されています。

学部4年生の院試も終わり、ついに研究加速フェーズですね。頑張っていきましょう。

有機合成化学協会誌は今月号も充実の内容です。

キーワードは、「大村天然物・ストロファステロール・免疫調節性分子・ニッケル触媒・カチオン性芳香族化合物です。

今回も、会員の方ならばそれぞれの画像をクリックすればJ-STAGEを通してすべてを閲覧することが可能です。

巻頭言 次の80年に向けて -現役世代の使命-

今月号の巻頭言は、公益社団法人有機合成化学協会・会長、日産化学株式会社・常勤監査役 生頼一彦 氏による寄稿記事です。

事実ですが、衝撃的な数字が記載されています。次の80年に向けて、誰もが考えを巡らさずにはいられない、そんな巻頭言です。

特異な構造を有する大村天然物の新規分子骨格構築法開発と実践的全合成

砂塚敏明

2020年度有機合成化学協会賞(学術的なもの)受賞

*北里大学大村智記念研究所、北里大学大学院感染制御科学府

 微生物由来の特徴的な構造と活性を持つ「大村天然物」の合成と創薬研究について、網羅的にまとめられております。有機合成化学というツールを駆使した、大村天然物の全合成を基盤とする幅広い研究を体感できます。

新規な転位型ステロイド骨格を有するストロファステロール類の網羅的合成

佐藤俊太郎、桑原重文*

2022年度有機合成化学協会賞(学術的なもの)受賞

*東北大学大学院農学研究科農芸化学専攻

本総合論文は、ストロファステロール類の立体選択的な合成について,筆者らの合成研究を中心に詳しく解説された興味深いものです。ストロファスタンと名づけられた新規な転位型ステロイド骨格を持つ本化合物群の単離と立体化学に関する情報も記述されています。

天然化合物を基盤とした免疫調節性分子の合成と展開

藤本ゆかり*,塩川善右,井貫晋輔,相羽俊彦,荒井洋平

2020年度有機合成化学協会企業冠賞 シオノギ・低分子創薬化学賞受賞

*慶應義塾大学理工学部化学科

 免疫機構を調節可能な分子は、免疫機構の解明のためのツールだけでなく、多種多様な病気を治す創薬の起点となる。本論文では、免疫の活性および抑制作用を有する有機化合物の合成とその機能評価について述べられている。リン酸誘導体のような高極性または難溶性化合物は、天然から高純度で得ることは困難である。本研究成果における有機合成化学の大きな貢献を感じて欲しい。

ニッケル触媒作用による二酸化炭素の挿入機構を利用した選択的炭素炭素結合形成

木村正成*

長崎大学大学院工学研究科物質科学部門

二酸化炭素を炭素源として用い,温和な条件下で有用な物質へと変換する技術の開発はますます重要な課題になっています。本論文は,ニッケル錯体触媒を用いた二酸化炭素と不飽和有機化合物のカップリング反応について,著者らの成果を中心にまとめたものです。加えて,二酸化炭素が一時的に関わることによってはじめて可能となる,反応機構的にもユニークな多成分カップリング反応も紹介されています。

チオもしくはセレノピリリウム骨格を有する新規カチオン性芳香族化合物の合成と性質解明

長洞記嘉*

福岡大学理学部化学科

 ベンゼン環等の縮環によってπ共役系の拡張された新規チオおよびセレノピリリウム塩の合成とその物性に関する総合論文です。ペンタセンの一部をチオおよびセレノピリリウムとした分子を合成ターゲットとした研究における課題解決だけでなく、非対称体や複数のチオフェン環と縮環した新しい類縁体を効率的に合成できる新手法の開発について丁寧に述べられています。

Review de Debut

今月号のReview de Debutは1件です。オープンアクセスですのでぜひ。

C-O結合の均等開裂を伴うアルコールのone-pot官能基化 (大阪大学大学院薬学研究科)森山将吾 

感動の瞬間:酵素触媒と有機合成、感動と反省から学び、ちょっとずつ前進

慶應義塾大学薬学部 須貝 威 教授による寄稿記事です。感動の瞬間はもちろんですが、多くの錚々たる先生方のお名前が登場し、物語のように楽しく読ませていただきました。必読です。

これまでの紹介記事は有機合成化学協会誌 紹介記事シリーズを参照してください。

関連書籍

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博士(理学)。大学教員。娘の育児に奮闘しつつも、分子の世界に思いを馳せる日々。

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