[スポンサーリンク]

一般的な話題

2024 CAS Future Leaders Program 参加者インタビュー ~世界中の同世代の化学者たちとかけがえのない繋がりを作りたいと思いませんか?~

[スポンサーリンク]

CAS Future Leaders プログラムとは、アメリカ化学会 (the American Chemical Society; ACS) の情報部門 (the Chemical Abstracts Service; CAS) が主催する、博士課程在学中の学生やポスドクを対象として、将来の化学会を担うリーダーの育成を目的としたプログラムです。参加者には、リーダーシップを育むトレーニングプログラムに参加したり、ACS 秋季大会への発表の機会が与えられたり、様々な特典があります。もちろん、その渡航費や宿泊費は支給されます。そんな素晴らしい 2025 年度の CAS Future Leaders プログラムの応募が 12/2 から開始しています (外部リンク: 2025 CAS Future Leaders プログラムの参加者を募集します; 締切は 2025年 1 月 26 日)。

今回、CAS プログラムの詳細や応募する際のコツなどをお聞きするべく、2024年度の参加者の一人である森圭太さんにお話を伺いました。

Q1 自己紹介をお願いします

東京農工大学大学院工学研究院応用化学専攻・村岡研究室ポスドク(日本学術振興会特別研究員CPD)の森圭太と申します。2024年10月から、学振CPDの海外渡航でMassachusetts Institute of TechnologyのRonald Raines教授の研究室にてPostdoctoral Fellow として勤務しています。学部から博士課程修了までは東大理化の塩谷光彦教授のご指導の下で金属錯体型人工DNAのテーマに取り組み、金属イオンに応答する核酸塩基対のスイッチングやDNA分子マシンの開発を行いました。ポスドクとしてお世話になった東京農工大・村岡貴博教授の研究室ではストレス環境下でタンパク質フォールディングを促進する人工分子の開発を行い、現在もMITでケミカルバイオロジーに関連する研究をしています。アメリカでの生活を楽しみつつ、ポスドク期間後は日本に戻りたいなと思っています。

代表論文
Chem. Sci. 2023, 14, 1082–1088. DOI: 10.1039/D2SC06534G
Nat. Commun. 2023, 14, 4759. DOI: 10.1038/s41467-023-40353-3
Springer Theses 2024, DOI: 10.1007/978-981-99-9400-7

Q2 CAS Future Leaders プログラムになぜ参加しようと思いましたか?

2023年12月にCASから応募開始の告知メールが来るまで、Future Leaders Programの存在すら知りませんでした。軽い気持ちでプログラムのwebsiteを見てみると非常に魅力的な内容で、応募書類がわりと軽そうだったこともあり、応募を決めました。年明けの学会ではたまたま前年度参加者の横地さんにお会いすることができ、プログラムについて詳しい話をお聞きすることもできました。恥ずかしながら、実際にエッセイの内容などを考え始めたのは年明けからだったと思います。(皆さんまだ間に合います…!)

学生の時は、コロナ禍もあって国際学会に参加する機会に恵まれず、ACS Meetingへの参加はずっと憧れていた夢の一つでした。Future Leaders Programだけでなく、特典としてACS Meetingへの参加資格やACS会員資格が得られることも応募の後押しになりました。

Q3 プログラムで印象に残っているイベントはなんですか?

Story TellingのワークショップとCoachingのセッションが印象に残っています。

Story Tellingのワークショップでは、聴衆に対して自身の経験を「ありのままに、かつ魅力的に」伝えるための方法論を学びました。講義の後でグループに分かれて、時間をかけて各自のストーリーを組み立てた上で発表を行ったのですが、自分のエピソードが次第に活き活きとした物語に変わっていく過程が楽しかったことを覚えています。物語のテーマ選択は自由で、サイエンスに限定されるものではありませんでしたが、研究者としてのアウトリーチ活動にも活きる経験が得られました。

Coachingのセッションでは、良いメンターになるための心構えやコミュニケーションのとり方を考えました。皆さんも、誰もが指導する/される立場になり、充実感を得ることも、逆にストレスを感じることもあったのではないでしょうか。私も色々な経験を思い出しながら講義を受けましたが、新たな発見はもちろん、自分のやり方が正しかったと思えることや、逆に反省すべき点も見つかりました。どの世界に行っても通用する、良いメンターになるための貴重なトレーニングを受けることができました。

Q4 プログラムの後半で参加した ACS Meeting はどうでしたか?

上述の通りACS Meetingへの参加は初めてだったのですが、何よりそのスケールに圧倒されました。講演会場のクオリティや数、ポスター会場の規模、Expo会場の充実度など、日本の国内学会では感じることのできないものでした。初めて国際学会での口頭発表に挑戦し、講演後には有意義なディスカッションもできました。Future Leaders Programで知り合った仲間たちとは学会中に行動を共にすることも多く、お互いの発表にも足を運びました。私の講演でも、後方に並んだ仲間たちの顔を見て心強く思ったことを覚えています。

Q5 プログラムに参加してよかったと思うことは何ですか?

何より、このプログラムで出会った仲間たちとの繋がりです。これまでは、海外の同世代の研究者と交流する機会はほぼありませんでした。このプログラムで出会ったメンバーは世代が近いだけでなく、研究への情熱や化学への愛、アウトリーチ活動への積極性など、様々な面で共鳴できる仲間たちでした。一方で、自分の現在位置を再確認することもできました。他のメンバーたちに比べて英語でのコミュニケーション能力が劣っているだけでなく、グループワークでの発信力やリーダーシップの面でも大きな差を感じました。このプログラムで得られた経験は、自分が今アメリカで研究に励む糧になっています。

ここからは、次回以降の参加を希望する読者の目線でいくつか質問いたします

Q6 応募書類ではどのようなエッセイを書きましたか? 何か気を付けたことはありますか?

例年通り、①現在の研究プロジェクトと今後の展望、②自身の研究におけるSciFinderの価値を述べる形でした。正直②は書くことがあまり思いつかず、全体の3/4程度を①に割くことになりました。①では(嘘にならない範囲で)今後の展望がなるべくキャッチーなものになるように、また現在の研究プロジェクトとうまく繋がるように書くことを心がけました。②は無難なことを書いた後に、何とかオリジナルな考えをひねり出しました。今の研究に関連してというよりは、自分の人生においてSciFinderの存在がどんな意味を持つかを考えた気がします。ざっと書いた後で前年度参加者の横地さんのYouTubeを拝見したのですが、改めて自分のエッセイを読んでみると「オリジナリティ・ユーモアが圧倒的に足りない…!」と思いました。笑 そこでもう一回頭をひねり、①の冒頭にちょっとユニークっぽい文章を足すことにしました。

締め切りギリギリに準備していたので、他の人に添削していただくことはできませんでした。色々な人の意見をもらうことも大事ですが、これまでのキャリアや人生全体を振り返って、何が自分のアピールポイントになるのか自分自身でよく考えるのが重要だと思います。オーガナイザーの方も、応募書類で最も重要なのは独創性とおっしゃっていました。とにかくオリジナリティと見やすさにこだわって、エッセイやCVの内容・フォーマットを考えるのが良さそうです。

Q7 参加前に準備しておけばよかったことはありますか?

難しいですが、「心の準備」でしょうか。英語力があるに越したことはないですが、採択からプログラム本番までの数ヶ月で劇的に変化するかというと、難しい気がしています。まして日々研究に励んでいる大学院生・ポスドクの皆さんなら尚更です。それよりも、プログラム中に他のメンバーと積極的に交流する、前向きに意見を発表する、全てを楽しむ、といった覚悟を決めて行くことが大事だと思いました。言語の壁を感じることもありますが、何より重要なのはFuture Leaders Programを楽しむ情熱です。心身ともに万全の状態で渡米できるように、準備段階で英気を養いましょう。

Q8 読者の皆さんにメッセージをお願いします

世界中の同世代の化学者たちとかけがえのない繋がりを作りたいと思いませんか?少しでも興味があるなら応募してみましょう!Future Leaders Programの仲間たちと作ったWhatsAppのグループチャットは今でも活発に動いていますし、以前の採用者の方々との繋がりも強固です。皆さんも是非このコミュニティに参加してください!応募書類に関して質問などあれば気軽にご連絡ください。

最後に、素晴らしいプログラムを提供していただいたCASの皆様、学振CPDの受入先としてお世話になり、推薦書もご作成いただいた東京農工大学の村岡貴博先生に感謝を申し上げます。化学情報協会のページにさらに詳しいインタビュー記事も掲載されておりますので、よろしければそちらもご覧ください!

関連記事/リンク

関連書籍

Avatar photo

やぶ

投稿者の記事一覧

PhD候補生として固体材料を研究しています。学部レベルの基礎知識の解説から、最先端の論文の解説まで幅広く頑張ります。高専出身。

関連記事

  1. 熱前駆体法を利用した水素結合性有機薄膜の作製とトランジスタへの応…
  2. あなたはどっち? 絶対立体配置
  3. SNS予想で盛り上がれ!2023年ノーベル化学賞は誰の手に?
  4. スチレンにCoのHATをかぶせれば、インドールを不斉アルキル化
  5. Dead Endを回避せよ!「全合成・極限からの一手」⑨ (解答…
  6. 植物生合成の謎を解明!?Heteroyohimbine の立体制…
  7. アルキンから環状ポリマーをつくる
  8. OPRD誌を日本プロセス化学会がジャック?

注目情報

ピックアップ記事

  1. 第16回 結晶から結晶への化学変換 – Miguel Garcia-Garibay
  2. 有機化合物のスペクトルデータベース SpectraBase
  3. ジメシチルフルオロボラン:Dimesitylfluoroborane
  4. ChemDrawの使い方 【基本機能編】
  5. JSR、東大理物と包括的連携に合意 共同研究や人材育成を促進
  6. デヴィッド・ナギブ David A. Nagib
  7. 有機合成化学協会誌2020年10月号:ハロゲンダンス・Cpルテニウム–Brønsted酸協働触媒・重水素化鎖状テルペン・エラスティック結晶・複核ホウ素ヘテロ環
  8. 2009年1月人気化学書籍ランキング
  9. マンガでわかる かずのすけ式美肌化学のルール
  10. 特許にまつわる初歩的なあれこれ その2

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2024年12月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

注目情報

最新記事

アンモニウム構造によりラジカル種の発生位置を完全に制御!

第710回のスポットライトリサーチは、関西学院大学理工学研究科 村上研究室の榊原 陽太(さかきばら …

化学つれづれ草【ある研究者の回想】

概要物理化学者で量子機能材料を専門とする著者によるエッセイ集.化学者としての研究,教育,人生…

第60回有機反応若手の会

開催概要有機反応若手の会は、有機化学分野で研究を行う全国の大学院生を中心とした若手研究者が集い、…

ノーベル賞受賞者と語り合う5日間!「第18回HOPEミーティング」参加者募集!

申し込みはこちら概要主催:独立行政法人 日本学術振興会(JSPS)開催地:神奈川…

光触媒による高効率なCO2還元の実現―まさかの光を弱く当てることが重要だった―

第709回のスポットライトリサーチは、東京科学大学 理学院(前田研究室)博士後期課程2年の仲田竜一 …

「π-πスタッキング」という言葉が生む誤解【芳香環の相互作用を見直す: 前編】

芳香環が平行に並んで近接しているとき、その構造を「π–π スタッキング」と表されることがよくあります…

一重項酸素によるC(sp2)−P結合切断を用いた長波長光によるリン化合物のアンケージング

第 708 回のスポットライトリサーチは、同志社女子大学 薬学部 医療薬学科 5…

マテリアルズ・インフォマティクスにおける画像解析の活用ガイド

開催概要材料開発において、電子顕微鏡やX線トモグラフィーを用いて材料の微細構造を観察するために画…

世界初のPROTAC医薬、ついに承認 ―「タンパク質を阻害する」から「分解する」時代へ

2026年5月、創薬化学の歴史に残る大きな出来事が起きました。米国 FDA は、…

有機蛍光とは異なる新しい有機りん光の分子設計指針の発見

第707回のスポットライトリサーチは、電気通信大学 情報理工学研究科(牧昌次郎研究室)の林希久也 助…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP