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大陽日酸の産業ガスへの挑戦

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大陽日酸株式会社と日本製鉄株式会社は、合弁で設立した株式会社君津サンソセンターに、省エネルギー型最新鋭空気分離装置1基の新設を決定しました。また当社は、日本においては需要の大半を輸入に頼っているレアガス(ネオン・クリプトン・キセノン)の製造装置も設置することを決定し、国内生産を増強いたします。 (引用:8月4日大陽日酸プレスリリース)

大陽日酸株式会社は、Rapidus 株式会社が北海道千歳市に新たに建設する次世代半導体工場 IIM-1 パイロットライン向けのガス関連設備工事の設計施工者および IIM‐1 のパイロットラインで使用されるバルクガスの供給者に選定されました。 (引用:6月29日大陽日酸プレスリリース)

大陽日酸株式会社は、アンモニア(NH3)の水素を重水素(D)で置換した、重水素化アンモニア(高圧ガス)の製造販売を開始しました。半導体利用、化学反応原料、分析などに利用されてきた重水素化アンモニアの需要増に対応するため、国内で初めての量産体制となる製造プロセスを構築し、今後増産も計画してまいります。 (引用:5月31日大陽日酸プレスリリース)

今回は、産業ガス大手の大陽日酸のプレスリリースを取り上げていきます。

一件目のニュースは、空気分離装置の新設についてのニュースです。空気分離装置は、空気を取り込んで蒸留によって純粋な窒素や酸素、アルゴンを作り出す装置で、作られたガスは様々な製造や研究・医療の現場で使われています。

空気分離装置での分留の仕組み (2:13位から)

大陽日酸では、日本製鉄と合弁で千葉県君津市に君津サンソセンターを2022年9月に設立しましたが、このたび日本製鉄 東日本製鉄所への各種ガスの安定供給ならびに大陽日酸としての高品質製品供給のため、省エネルギー型の最新鋭空気分離装置を1基新設することを決定されました。新設する空気分離装置は、2025年6月末稼働開始予定で生産能力が窒素で120,000 Nm3/hとなり、1時間で100Lの液体窒素容器約2000台分の窒素を生産できることになります。

加えて大陽日酸では、レアガスであるネオンの精製装置ならびにクリプトン・キセノンの製造装置も設置することも決定しました。レアガスは、半導体製造や宇宙などに利用されますが、世界的に需要が増加する一方、供給はタイト化しているのが現状です。特に、ロシアがウクライナを侵攻して以来、価格は高騰しているのが現状です。そこで大陽日酸では、現在レアガスを製造している九州サンソセンター大分工場に加えて、君津サンソセンターでも製造することになりました。稼働予定時期は2025年6月(クリプトン・キセノン)と2026年3月(ネオン)で年間の製造能力は、ネオンが2万7千kL、クリプトンが千kL、キセノンが125 kLとなります。クリプトンとキセノンについて、君津では混合ガスを製造し大分に運んでクリプトンとキセノンを分離します。

これらのレアガスは、安定供給確保すべき半導体製造プロセスにおける品目の一つとして日本国政府が認識しており、経済安全保障推進法に基づき大陽日酸の「供給確保計画」が経済産業省の支援の対象として認定されています。

半導体に係る安定供給確保を図るための取組方針:施策の対象となる品目 

⚫ 従来型半導体(パワー半導体、マイコン、アナログ)
⚫ 半導体製造装置
⚫ 半導体部素材
⚫ 半導体原料(黄リン・黄リン誘導品、ヘリウム、希ガス、蛍石・蛍石誘導品)

半導体原料のリサイクルの促進、国内生産の強化、備蓄、輸送体制の強化に向けた設備投資等の支援により、半導体の2030年国内売上高目標実現に向け、半導体原料の安定的な供給体制を構築する。

 

2件目は、Rapidusへのガス供給についてです。Rapidusは、次世代の産業に欠かせない 2nmの最先端半導体の国産量産化を目指して、日本の主要企業 8 社が出資し2022年8月に設立されました。Rapidusでは、北海道千歳市に次世代半導体工場を設立しますが、そのパイロットライン、IIM(Innovative Integration for Manufacturing)-1に大陽日酸が各種産業ガスを供給することが決まりました。

IIM-1の建設計画

大陽日酸では、Rapidus構内に「大陽日酸 千歳ガスセンター(仮称)」を建設し、各種ガス製造装置および液化ガス貯槽を設置し高品質なガスを供給するそうです。パイロットラインは2025年立ち上げ予定であり、大陽日酸は千歳ガスセンター竣工を2024 年 11 月としています。

 

3件目は、重水素化アンモニア販売開始についてです。アンモニアの水素原子が重水素に置換された重水素化アンモニアは、半導体や分析・研究用途で使われています。

重水素化アンモニアを使用した研究例

しかしながら、日本では海外からの輸入に頼ってきました。そこで大陽日酸では独自技術により、高純度、高重水素化率の製品を製造可能なプロセス構築に成功し、高まる国内外の需要に対する供給体制を整え、販売を開始することになりました。純度は99.998%で重水素化率も99 atom%D以上の仕様となります。生産能力は120kg/年としていますが、需要拡大に向けて増産を計画しているそうです。

この重水素化アンモニアの製造技術について、大陽日酸では特許出願を行っており、アンモニアと重水などの重水素化溶媒とを反応容器内で混合して軽水素-重水素同位体交換反応を行うことにより、効率よく重水素化アンモニアを得る方法とその製造装置を開発されたようです。

 

1件目についてレアガスの製造設備を新設し、日本でのレアガス生産を増やした点は、興味深い内容でした。プレスリリースによれば、世界と比べて日本には大型の空気分離装置は少なく、レアガスを採取しにくいようです。経済産業省のサポートがあっても大型の設備投資には、将来性を考慮したいろいろな議論があったと予想されます。2件目の半導体工場へのガス供給については、現状パイロットラインへの供給ということで、計画が順調に進めば量産ラインの稼働も見えてくる話であり、そうなればガスの需要も大幅に増加すると考えられます。ガスだけでなく半導体材料の需要にも影響する話であり今後のRapidus の発展にも期待します。3件目に関連してアンモニアは一般的なガスですが、カーボンニュートラルの観点から二酸化炭素を燃焼時に排出しない燃料として、最近注目されています。本件の重水素化アンモニアの製造・販売開始もアンモニア燃焼の研究用途での需要拡大も一因かもしれません。産業ガスは、化学品の研究・製造だけでなく様々な製品の製造において必要不可欠な材料であり、上記のプレスリリースの内容は、日本の産業維持・発展に一役買っているのではないでしょうか。

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ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

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