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化学一般

入門 レアアースの化学 

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Tshozoです。 今回は趣向を変えて書籍紹介など。「入門 レアアースの化学」@化学同人殿 です。

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一時期、新聞紙面を騒がせた「レアアース」という言葉、ご存知でない方は居ないでしょう。基本的に大規模インフラが某国にしかない上に、償却が進んでる設備にまかせた低コスト品大量供給や、ダンピングまがい生産調整による他国他社圧倒で90%の市場を席巻するその底力、やはり侮れません。初っ端から蛇足ですが新オイルメジャーのCNPC+Sinopecが既に売上高・リザーブ(保有賦存資源量)10位の常連であることを考えると、現代化学の全ての源流である原油市場も中国が席巻していくのもそう遠い話ではないと思っています。100年後くらいには実質的経済的朝貢政治を行う東アジア共和国が形成されているんではと予想しているのですが

ともかく調査等で色々この「レアアース」なるものの情報を集めることがあるのですが、まとまった形で書籍化したもの、特に邦文で化学的詳細まで含め扱っているものが少なく色々と難儀しておりました(政治的に云々した書物は色々世に有りますが、化学的に的外れな文章があったりして辟易していました)。そういう時に本書を目にし、文字通り飛びついた形になるわけです。

内容

希土類元素(レアアース)をはじめて学ぶ学生,技術者のための入門書.身につけておき たい知識がコンパクトにまとめてある.レアアースの歴史にはじまり,原子やイオンの電子構造および4f電子に基づく化学的・物理的性質などの基礎,さらに は超強力磁石や発光材料などの応用まで丁寧に解説している.(化学同人殿 HPより

 対象

化学系大学院生以上 ただし歴史・応用・分析・研究開発の内容は材料系社会人にも好適(錯体化学・量子化学の知識があることが好ましい)

解説

2015年7月に発売された、希土類化学に特化した「入門」書籍です。実質的には化学同人から1999年に出版された「希土類の科学」の内容をやや簡約化し、政治的な現在の社会情勢やこの15年で広がった応用先を織り込んだ内容となっています。本書でも書かれていますように、そもそも「レアアース」とは「希土類」のことで、周期表で言うと下記の部分にあたる、3列目のランタノイド系列を含んだグループのことを言います。

REE_02

同書より引用 非常にイメージをつかみやすい

 希土類材料は磁石、電池、センサ等の幅広い機器(又はその中の素子)に含まれています。たとえば現在のHV車蓄電池の主流、ニッケル水素電池内のレアアース類(La,Ce,Nd, …)の質量は累計10kg以上にも及び(例えばこちらの資料を参照・今回の件ではじめてその分量の大きさを知りました)、その価格が高騰した場合に一体どうなるかを考えると空恐ろしくなります。その他、同書には様々な応用先が示されておりその広範性を伺い知ることができます。このように、産業界の必須栄養素は鉄・石油・半導体ですが、レアアース類はそれを更に機能向上させるビタミン類のような位置付けという印象を受けました。

REE_03

2011年に米DoEが発表した「なくなるとヤバイ」材料類を示した資料類
資料はこちら) ”Critical”が全部希土類と、なかなかデンジャーな結果
短期でのリスク結果だが、長期でも大して状況変わらんみたいです

 ビタミン類ということはこれが摂取できないと産業界の態はおかしくなるわけで。もっとも極端に高騰した2011年からはだいぶ代価材の開発も進み使用量が低減され、また新たな鉱山開拓が進むなど使用者に有利な状況にはなりつつありますが、とはいえ、同書で記載されているようにまだまだその材料としての優位性が揺らぐ状況ではなく非常に重要な戦略物質であることには変わりはないということがよく理解できます。それが現状のように中国1国に席巻されているということは産業構造自体が極めて重要なリスクに晒されているわけで、そうした国家政策すらも関わる背景を持つレアアースだけに本書籍のように全体概要を掴める参考書は大事であると考えます。

REE_01

2010年時点での生産量割合 圧倒的ではないか中国は

 さて本書籍の中身ですが、前半が主に磁性に重点を置いた元素の構成と結晶の概要、後半を製造・分析・応用先に充てるというつくりになっています。筆者が面白いと思ったのは特に応用例での希土類の「元素の径」にポイントを絞った説明項で、希土類の特徴である「原子番号が増えるのにイオン径が変わらない」という点が如何に他の材料と異なる特性を発揮する原因になるか、またそれをどう材料中で活かしているかが詳しく書いてあります。

 そのほか、有機合成やポリマー重合の中でのレアアース錯体を用いた応用例も示されています。低燃費タイヤの原料ゴムに使用されているネオジム系錯体触媒は有名ですね。そういった例を多く含み、新しい研究の出口をどこに据えるかということを考えるのにも有効に活用できると思います。なんせ希土類の応用先が極めて広いのでその展開先も広範囲に及び、その各分野の専門の方からすると少し記述が足らないのではと思う部分もあるかもしれません。が、少なくとも入門書としてここまで希土類に関して幅広く出口に関する記述をしている書物を筆者は知りません。以上の点をご考慮いただき活用されるのが吉、と考えます。

著者ご紹介

本書の著者は、足立吟也先生。現在大阪大学大学院にて無機化学系材料の研究開発をされている今中信人先生の師匠筋にあたる方です。筆者はこの方をイオン伝導性材料の調査をしていた時に見かけた(Chem. Review “Ionic Conducting Lanthanide Oxides”, Chem. Rev., 2002, 102 (6), pp 2405–2430, リンクはこちら)のですが、まさか10年経ってその方の著作を紹介することになろうとは・・・何とも不思議なもんです。

では今回はこんなところで。

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Tshozo

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メーカ開発経験者(電気)。56歳。コンピュータを電算機と呼ぶ程度の老人。クラウジウスの論文から化学の世界に入る。ショーペンハウアーが嫌い。

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