[スポンサーリンク]

化学一般

教養としての化学入門: 未来の課題を解決するために

[スポンサーリンク]

[amazonjs asin=”4759818294″ locale=”JP” title=”教養としての化学入門: 未来の課題を解決するために”]

概要

現代社会のさまざまなトピックからふさわしいテーマを選び,導入で化学にまつわる「おはなし」を紹介.ついで化学がそのトピックにどうにかかわるかを,「化学の概念」を織り交ぜながら解説する.化学(科学)のリテラシーや批判的思考力を養うことに重点が置かれ,化学の本質や面白さを実感できる構成となっている.ニュースに登場する科学を理解するための書.非化学系向けの化学のテキストに.(化学同人より)

対象

  • 大学一年生の教養として
  • もう少し化学に踏み込みたい高校生
  • うまい化学の説明を探している大学教員

解説

化学同人から、8月20日に発売されたばかりの新書。大学1年生の有機化学を教えており、講義の雑談の幅をもたせようと思い購入した。開いてみると、圧倒されるほどカラフルな内容である。目次からカラフルで、こんなに飾った化学の書籍をみたことがない。内容のレベルは「教養としての化学入門」という名の通り、正直言ってベースは高校レベルの。有機化学でいえば、大学レベルの話は1つもない。ただし、環境問題や一般とのつながり、また身近に見られる化学の解説など、高校の化学の教科書はもちろん大学の教科書にも掲載されず、講義にもおそらくでてこないであろう内容がふんだんに散りばめてある。

圧倒されるほどにカラフルな内容

圧倒されるほどにカラフルな内容

また、本文はどうかというと、訳者も述べているが、化学をある程度学んだ読者には「うっとおしい」と感じられるくらい実にていねいに説明してある。これまでの教科書の文章とは全く異なる語り口調に近い文章だ。例えば、

ある物質に含まれる原子の数を追跡するとき、「炭素8原子、水素10原子、窒素4原子、酸素2原子を常に含む」といちいち書くのは面倒だろう。いくらか時間を節約するために、化学者はこの種の情報を書き出すための化学式(chemical formula)と呼ばれる速記術を編み出した。この速記術によると、カフェインの構造はC8H10N4O2となる。

と言った感じだ。「カフェインの構造は元素記号を用いた化学式で表すことが可能であり、C8H10N4O2となる。」といえば良いだけのところをここまで説明するのはすごい。引き込まれるように読むことができる。訳者は翻訳が大変であっただろう。自分で興味をもって読み進めていく書籍としては最高の部類に入ると思う。ただし、欠点は重要なところはどこなのかわからないところだ。教養の講義で使うのならば、脱線しすぎないように気をつけなければならない。とはいえど、講義の本質は化学に対する興味をもってもらったら成功、ポイントのみを解説するところだと思っているので、学生が自学により化学と身近な現象とのつながり感を得られる内容にしたい。ここに書いてある文章を一部使って、化学の面白さを「こいつ気持ちが悪い」と思ってもらうくらい語ってみたくなった。

そういうわけでまとめると、レベルは大学初年度にも達していないが、教養としては十二分であり、講義で使える表現やおはなしがふんだんに散りばめてある書籍である。そしてこの書籍は、化学が大好きで一歩先を進みたい高校生や、化学が専門でない教養としての講義、または化学を魅了する言葉や比喩を常に探している私みたいな大学教員にはおすすめしたい。

関連書籍

[amazonjs asin=”4807908286″ locale=”JP” title=”化学入門 (大学生のための基礎シリーズ)”][amazonjs asin=”4807908863″ locale=”JP” title=”化学入門: 日常に役立つ基礎知識”]
Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. Letters to a Young Chemist
  2. 化学の歴史
  3. 基礎材料科学
  4. 【書籍】化学探偵Mr.キュリー3
  5. 有機スペクトル解析ワークブック
  6. Innovative Drug Synthesis
  7. 2009年10月人気化学書籍ランキング
  8. 炭素文明論「元素の王者」が歴史を動かす

注目情報

ピックアップ記事

  1. 電気化学的HFIPエーテル形成を経る脱水素クロスカップリング反応
  2. 論文をグレードアップさせるーMayer Scientific Editing
  3. イー・タン Yi Tang
  4. ハッピー・ハロウィーン・リアクション
  5. 光触媒が可能にする新規C-H/N-Hカップリング
  6. カンプトテシン /camptothecin
  7. 国連番号(UN番号)
  8. 第32回 液晶材料の新たな側面を開拓する― Duncan Bruce教授
  9. バルビエ・ウィーランド分解 Barbier-Wieland Degradation
  10. 落葉の化学~「コロ助の科学質問箱」に捧ぐ

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2016年10月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

アクリルアミド類のanti-Michael型付加反応の開発ーPd触媒による反応中間体の安定性が鍵―

第622回のスポットライトリサーチは、東京理科大学大学院理学研究科(松田研究室)修士2年の茂呂 諒太…

エントロピーを表す記号はなぜSなのか

Tshozoです。エントロピーの後日談が8年経っても一向に進んでないのは私が熱力学に向いてないことの…

AI解析プラットフォーム Multi-Sigmaとは?

Multi-Sigmaは少ないデータからAIによる予測、要因分析、最適化まで解析可能なプラットフォー…

【11/20~22】第41回メディシナルケミストリーシンポジウム@京都

概要メディシナルケミストリーシンポジウムは、日本の創薬力の向上或いは関連研究分野…

有機電解合成のはなし ~アンモニア常温常圧合成のキー技術~

(出典:燃料アンモニアサプライチェーンの構築 | NEDO グリーンイノベーション基金)Ts…

光触媒でエステルを多電子還元する

第621回のスポットライトリサーチは、分子科学研究所 生命・錯体分子科学研究領域(魚住グループ)にて…

ケムステSlackが開設5周年を迎えました!

日本初の化学専用オープンコミュニティとして発足した「ケムステSlack」が、めで…

人事・DX推進のご担当者の方へ〜研究開発でDXを進めるには

開催日:2024/07/24 申込みはこちら■開催概要新たな技術が生まれ続けるVUCAな…

酵素を照らす新たな光!アミノ酸の酸化的クロスカップリング

酵素と可視光レドックス触媒を協働させる、アミノ酸の酸化的クロスカップリング反応が開発された。多様な非…

二元貴金属酸化物触媒によるC–H活性化: 分子状酸素を酸化剤とするアレーンとカルボン酸の酸化的カップリング

第620回のスポットライトリサーチは、横浜国立大学大学院工学研究院(本倉研究室)の長谷川 慎吾 助教…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP