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化学の歴史

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内容

 人間の祖先が初めて道具を使いはじめた時、彼らは目にふれた自然の産物を、そのまま利用した。大きな動物の大腿骨は手ごろの棍棒になったし、木から折った枝も同じ役に立った。岩石は便利な飛び道具だった。
何千年という時がたつうちに、人間は岩石を刻んで刃や握りをつけることも覚えたし、握りの形にした木の柄に岩石をとりつけることも学んだ。しかし所詮、岩石は岩石であり、木は木であるにすぎなかった。
ところが物質の性質が変化するようなことも起こった。落雷で森が火事になると、後に残る粉状の黒い灰はもとの木とは似ても似つかぬものになっていた。肉が腐っていやな臭いを出すこともあったし、果汁を放置しておくと、酸っぱくなったり、飲むと妙に浮き浮きするようにもなった。
われわれが今日化学とよんでいる科学の主題は、物質の性質のこのような(最後に人間が発見したように、構造の根本的変化を伴った)変化である。物質の性質や構造の根本的な変化が化学変化である。

(第1章 古代 火と石 冒頭部分を引用)

対象

・化学史に興味を持つ学生、研究者
・化学を教える立場にある方

解説

上記のイントロで始まる本書。著者はSF作家の巨匠として知られ、過去に医学部生化学の助教授も務めたキャリアを持つアイザック・アシモフ博士。本書のタイトルだけを見ると退屈な印象を持ってしまいがちだが、いざ読み始めてみると小説のような感覚で読める。(さすがはアシモフ先生である)
高校で化学を履修している方は特におすすめ。高校化学の教科書ではすでにでき上がった概念を学ぶことが多い。例えば、

物質の基本的な成分である元素のそれぞれには、原子というきわめて小さい固有の粒子がある。(化学Ⅰ改訂版 実況出版から引用)

これは高校化学の教科書の前半に出てくる1文。原子についての説明文である。原子という概念は化学の根底にあって大変重要なものだが、その成り立ちはこの1文からでは全く分からない。この概念にたどりつくには、物質の秘密を解き明かしたいと願って思考錯誤してきた科学者の仕事をひも解く必要がある。それがこの小さな一冊の本によくまとまっている。構成は以下の通り。

1章:古代
2章:錬金術
3章:転換期
4章:気体
5章:原子
6章:有機化学
7章:分子構造
8章:周期表
9章:物理化学
10章:合成有機化学
11章:無機化学
12章:電子
13章:核をもった原子
14章:核反応

化学という学問がどのような経験と思考の上に作り出されてきたかを知ることこそが、化学の本当の醍醐味ではないだろうか。
文庫本としてはやや高価ではあるものの、その価値は十分であると言えるのでぜひ一読されたし。

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国立大学の研究員として勤務。専門は有機合成化学、触媒化学。現象を「分子」の視点でとらえることが何よりも楽しみ。特技は囲碁、棋力はアマチュア2段程度。

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