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日本人化学者インタビュー

第22回「ベンゼン環の表と裏を利用した有機合成」植村元一教授

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さて第22回を迎えた研究者のインタビュー。今回は第8回の林民生先生のご紹介で大阪府立大学名誉教授であり現在京都薬科大学で客員教授をされている植村元一先生にインタビューをいたしました。丁度ご体調がすぐれず、無理言ってお願いしてしまいましたが快くお受け下さりありがとうございました。なんと植村先生は齢70を超えても実験されているということで、まさに実験化学の真髄を極めているといっても過言ではありません。恒例に従い、先生が化学者になった理由から、長い間続けてこられた芳香環の面不斉、遷移金属触媒反応をキーワードにした現在のご研究にについてお聞きいたしました。ぜひ御覧ください!

 

Q. あなたが化学者になった理由は?

 

大学で積極的に化学をやりたいと思ったのではなく、何となく化学科に入学した。目(サカン)武雄先生の研究室にお世話になり林 雄二先生の指導を受け天然物化学の研究をはじめた。学部生、修士課程在学中は研究は全くうまく行かず悶々とした日々を送っていた。当時は高度成長期で就職するつもりでしたが、なぜか博士課程に進学した。進学後も研究は相変わらず進展せず、先生に天然物化学は向いていないので有機金属をやりたいと言い、天然物合成の傍ら有機金属をやりはじめた。

現在の大阪市立大学理学部

現在の大阪市立大学理学部

(画像:Coral Timeより転載)

当時の阪市大理学部はほとんどが天然物関係の研究で有機金属は誰もやっていなかったので、独力ではたいした研究成果は得られなかった。DC3年次は大学紛争が活発で、研究室も封鎖され自由に中にも入れない状況が続いた。大学紛争のドサクサにまぎれて理学部の助手にと言われ、化学者としてスタートしたのが現状です。大きな夢を持って化学者になったのではなく、阪市大理学部で多数の人がやっている天然物化学とは違ったフィールドで少しでも良い結果をだして、他の人との区別化をしていこうと研究を続けてきた。学生時代に成果が上がらず苦しんだことを肝にめいじ、意欲のある学生には研究成果で苦しまないように心がけてきた。その後、多くの人の協力を得て、満足な研究生活を送ってきた。

 

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

 

研究者は自分で目標をたて、その実現のための方法、手段なども自分で考えて行動でき恵まれた職業だと思う。しかし、研究者にとっては成果が全てで、多くの人は悩み、苦しい研究生活を送っていると思う。どんな職業でも結果が要求されるが、自分で企画、行動できる職種に憧れる。もし、結果責任が問われなければプロ野球の監督をしてみたいが、こんなことはあり得ない。一方、物作りにも興味があり、今も家で消費するほとんどの野菜(年間30数種)を栽培している。品質改良し安全でかつ良質な物をつくり、友人、知人に分け与えたい。ただ、若い時は化学者の代わりにこんなことは多分しません。また、研究者の道を歩みたい。

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物作りに興味=野菜(年間30数種)を栽培

 

Q. 現在、どんな研究をしていますか?また、どのように展開していきたいですか?

 

大阪府立大学を定年退職後、京都薬大に客員教授としてほそぼそと研究を続けている。

主に、金(I)触媒を用いた有機合成を行っている。特に、キラル金触媒を用いた不斉反応で、アレンに求核付加反応を行ってキラル化合物を高選択的に得ている反応は報告されているので、アレンの代わりに、アルキン化合物へのキラル金触媒を用いた求核付加反応で不斉化合物を得ることを行っている。ただ、アルキンに付加反応してもアレンとは違い不斉中心が構築されないので、面不斉、軸不斉および求核付加する位置以外での中心不斉を構築できる分子設計し、高い光学純度でキラル化合物を得ている。

定年し、さらに70歳をこえた身ではこの程度のことですが、毎日楽しんで実験をしている。

 

京都薬科大学

京都薬科大学

 

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

先頃読んだ本の中の特攻隊員の遺書をよんで驚いた。時代背景の違いが大きいと思うが、あれを本心で書いたのか、そうではなかったのか理解することが難しい。
突撃の前夜に食事してその内容が本心なのか、またどうゆう教育、指導を受けてその心境になったのかを聞き、可能なら決行を説得したい。
やる気のない学生指導の参考になるかも?

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

 

現役のときは40歳後半まで実験をした。定年後の京都薬大では、体調に問題がないときはほぼ毎日実験を続けている。NMRの測定は学生に依頼するが、TLC,カラムクロマトを含め反応から精製まで自分でしている。自分の健康維持、ボケ防止だけではなく、6年制の薬学部では自分でしないと研究はほとんど進行しないのが現状である。前述したように、キラル金触媒をもちいた不斉触媒反応を行っている。

最近の大学教員は自ら実験することはもちろん、研究室に滞在している時間も減ってきており、最近の大学では、研究以外の時間が増えていくのは残念に思う。

 

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

砂漠の島に食料、飲料水もなく取り残されたら、子守唄でも聞いて早く深い眠りにつきたい。

 

Q. 次にインタビューをして欲しい人を紹介してください。

 

奈良坂 紘一 先生を推薦したい。奈良坂先生は日本での定年後シンガポールで6年間すごし、今年から台湾のNational Chiao Tung Universityです。70歳になっても化学に対する情熱が大きく若い人の刺激になると思う。

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植村元一教授の略歴

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京都薬科大学客員教授。専門は遷移金属錯体を用いた有機合成、不斉反応、天然物合成。1941年生まれ。1964年大阪市立大学理学部化学科卒業後、同大学院理学研究科に進学、1966年修士課程修了。その後博士課程に進学するが1969年に単位取得退学にて同大学理学部助手となる。1971年に理学博士を取得、1975年にカーネギーメロン大学 博士研究員として2年間留学を経験する。1983年大阪市立大学理学部講師、1988年同大学助教授、1995年大阪府立大学教授となり、2005年に退職、京都薬科大学に移り、現在に至る。1992年日本化学会学術賞受賞。

*本インタビューは2013年6月17日に行われたものです

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Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

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